(この記事は、第209号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、人と音楽の結びつきについてのお話です。
ピアノのレッスンの時にも、曲を書いた作曲家や当時の時代背景の話をすることがありますし、クラシック音楽の楽譜やコンサートなどの解説にも歴史に関わる事がよく書かれています。
音楽史と言われるもので、音楽大学などでも授業の一つに組み込まれています。
クラッシック音楽のスタートは、グレゴリオ聖歌と呼ばれるもので、キリスト教の宗教音楽です。
グレゴリオ聖歌は、グレゴリウス1世という当時の教皇が、いろいろな地域で歌われていた教会の典礼のための聖歌を、楽譜に残し曲集としてまとめたものです。
現在の楽譜と異なり、4本の線を用いて、四角い音符を使用した楽譜となっており、一つのメロディーだけで作られた音楽なので、全員が一斉に同じメロディーを歌う音楽になっています。
その後、パリの観光名所としても有名なノートルダム大聖堂を中心に活躍した人々(ノートルダム楽派)が、複数のメロディーから出来た音楽を生み出していったのだそうです。
これが、ポリフォニー音楽と呼ばれるもので、バッハに代表されるようなバロック期の作品と同じ作りになっています。
いつも、みんなで同じメロディーを歌っているので、なにか変化が欲しくなり、「はもる」という事が生まれたのかもしれませんね。
ここまでは、クラシック音楽の成り立ちですが、音楽そのものは、グレゴリオ聖歌が誕生するもっと前から存在していたわけで、起源がどこになるのかも定かではありません。
西洋音楽の起源は、さかのぼると古代ギリシャ辺りだそうですが、西洋以外の東洋やアフリカ大陸、アメリカ大陸などにも、音楽はそれぞれ古代から存在していました。
実はもっとさかのぼり、人類の起源に登場してくるネアンデルタール人も、歌を歌っていたと言われています。まだ言語を持っていない状態で、歌を歌っていたとは驚きですね。
歌を歌う事で、コミュニケーションを取っていたらしいのですが、やがて後に登場する人類(現在の私達の祖先)が言語を持ち始めたので、何かを伝える意志疎通には言語を使用し、感情表現は歌を使用するように使い分けていったという説もあります。
人の赤ちゃんは、母体の中で人類の進化と同じような過程を経て誕生すると言われますが、言語は理解できなくても音楽には反応するという特性は、その表れなのかもしれません。
私達が今日、楽器を演奏したり音楽を聴いて楽しむのは、人類誕生の時から、生活の一部として結び付きがあったのですね。
(この記事は、第207号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、若手ピアニストのお話しです。
先日、友人とメールでやり取りをしている中で、日曜日にテレビで放映される「情熱大陸」に同じ職場で働いている人の息子さんが出ると言うので見てみました。
なんと、ピアニストの反田恭平さんです。
なんだか凄いピアニストである事は知っていましたが、それ以上の事は知らなかったので、とても興味深く見ました。
22歳の若手ピアニストである反田さんは、ロシアのモスクワ音楽院(チャイコフスキー記念音楽院)に首席(最高得点)で入学し、奨学金も与えられ、ピアノの勉強をされてきました。
モスクワ音楽院は、クラシック音楽の世界最高峰のアカデミーで、ここの学生や出身者、教えている教授には有名な演奏家や音楽家が数多くいます。
4年ごとに開催されるチャイコフスキーコンクールも、このアカデミーのホールが使用されています。
ほとんどのピアニストは、いや、多くの音大生でも、3.4歳くらいからピアノを習い始め、小さい時から毎日何時間も練習をして、ピアノ漬けの毎日を送ります。
しかし、反田さんは、始めた時期は4歳と早い方ですが、本格的にピアノを習ったのは12歳からなので、かなり遅く、とても珍しいパターンです。
それでも、桐朋学園の奨学金を授与され、高校在学中に日本音楽コンクールで優勝するのですから凄いですね。
クラシックのピアニストというと、見た目から真面目なイメージを想像しますが、実は結構今どきの? 風貌で、これもまた驚きました。
コンサートでは、演奏する間近になって靴下を忘れた事に気付き、どうするのかと思いきや、観客から見える方の両足を油性ペンで真っ黒に塗って、まるで黒い靴下を履いているかのように装った、面白いシーンも放映されました。
演奏が始まると、大量の汗をかきながら、とても情熱的な音楽を奏でていました。
物凄く指が動き、難曲も軽々と弾きこなしていて、演奏のシーンは少ししか放映されませんでしたが、やはり凄いピアニストである事は十分に伝わってきました。
日本でのデビューコンサートを、サントリーホールで開催し、しかも、2000席が完売という人気ぶりにも納得ですね。
この番組を見て、次は生で演奏を聴いてみたいと思われた方も多かったのではないでしょうか。
若手なので、これから、さらなる飛躍が期待できるかと思います。
番組の中で、「音楽家になりたい」と発言されていましたので、ピアノ演奏以外での音楽活動もされるのかもしれませんね。
(この記事は、第205号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、ショパンに触れた旅行のお話です。
8月上旬にヨーロッパを旅行しました。ヨーロッパのどこかというと、ポーランドです。
ヨーロッパ旅行と言うと、フランスやイタリアなどが真っ先にイメージされ、行ってみたい国としても人気がありますが、ポーランドにピンと来た方は、なかなかのクラシック通と言えるかもしれません。
ポーランドは、アウシュヴィッツ強制収容施設やヴィエリチカ岩塩鉱などが有名で、近年では、ボレスワヴィエツ陶器も人気です。
(アウシュヴィッツ強制収容施設)
(ヴィエリチカ岩塩鉱)
ですが、忘れてはならないのが、ピアノと切っても切れない超有名人ショパンが生まれた国という事ですね。
羽田空港からドイツのミュンヘン経由で、合計13時間半をかけて、ワルシャワ・フレデリックショパン空港に到着しました。
(ワルシャワ・フレデリックショパン空港)
ショパンの名前が付いた空港ですが、至る所にショパンというわけではありませんでした。もっとも、夜着いて、すぐホテルへ向かったので、気が付かなかったのかもしれませんが。
ワルシャワでは、ショパンの心臓が埋め込まれている聖十字架教会や、ショパン博物館、ショパンがピアノを弾いたという三位一体プロテスタント教会などを巡りました。
(聖十字架教会)
(ショパン博物館)
(三位一体プロテスタント教会)
ショパンは、20歳でワルシャワを離れ、ウィーンへ行き、その後はパリに移動して音楽活動を行っていました。生前、ポーランドに帰ることをずっと望んでいましたが、叶うことなく生涯を終えました。そして、死後、ショパンが残した遺言どおり、心臓だけがポーランドへ戻り、聖十字架教会の柱に埋め込まれています。
(聖十字架教会 ショパンの心臓が埋め込まれている柱)
5年に1度行われるショパンコンクールは、ここワルシャワで、ショパンの命日である10月17日の前後3週間にわたって開催されますが、命日だけは、コンクールを中断して、出場者も審査員もこの聖十字架教会のミサに参加されるようです。
(聖十字架教会の内部)
ショパンの博物館は、ショパンの足跡を辿る展示物や楽譜、ショパンの音楽を楽しめるコーナー、ショパンのサロンを再現したブース等があり、とても充実していました。お弟子さん方のリストや、直筆譜、手紙、ショパンの手の石膏(パリのジョルジュ・サンドのサロンにもありました)や、デスマスクなどもありました。
(ショパン博物・ショパンの足跡を辿る展示)
(ショパン博物・ショパンの足跡を辿る展示)
(ショパン博物・ショパンの音楽を楽しめるコーナー)
(ショパン博物・ショパンのサロンの再現)
(ショパン博物・ショパンの手紙)
(ショパン博物・ショパンの手の石膏)
(ショパン博物・ショパンのデスマスク)
ショパンの音楽は、激しい部分もありますが、優雅で繊細、きめ細やか、そして儚さを感じる音楽ですね。
直筆譜や手紙を見ても、細くて丁寧で、きれいに書かれていて、まるで女性が書いたものかと思ってしまうほどの美しさでした。走り書きや、殴り書きの様な物は、全くありませんでした。
(ショパン博物・ショパンの直筆譜)
太く、がっちりと、たくましく書かれていたバッハの直筆譜などとは、全く異なるもので、「字は人を表す」という感じがしました。
その後は、ワルシャワの郊外にあるショパンの生家にも足を運んでみました。ワルシャワからバスで1時間くらいのところにあります。
(ショパンの生家・入り口)
ショパンの生家は、白くてかわいらしい、こじんまりとした平屋建ての建物で、ショパンの両親の肖像画などが飾られていました。
(ショパンの生家)
(ショパンの生家・内部)
(ショパンの生家・内部・コンサート用のピアノ)
(ショパンの生家・肖像画)
また、この生家の周辺は、公園として整備されています。色々な木々や植物が植えられていて、川も流れていました。まさに、ヨーロッパの絵画に出てくるような風景で、のんびりと散策している方も多く見かけました。
(ショパンの生家・公園)
(ショパンの生家・公園)
(ショパンの生家・公園)
(ショパンの生家・公園)
偶然にも訪れた日が、日曜日だったのですが、コンサートが行われる日でした。
生家のすぐ外に席が設けられていましたが、コンサートが行われるだいぶ前から満席となり、周りのベンチや花壇の淵などにも、次々と人々が座り、立ち見客も続出していました。
(ショパンの生家・コンサート)
(ショパンの生家・コンサート)
コンサートの開始を待っている方々を見ますと、日本のクラシックのコンサートとはだいぶ違う事に気が付きます。
日本でのクラシックのコンサートは、ある程度年齢を重ねた方が多く、後はもう少し若い女性客というイメージですが、ショパンの生家のコンサートは、そのような方々もいらっしゃいましたが、カップルやお子様連れの家族も思いの外多くおられました。
休日の野外コンサートで、しかも無料という事もあるのかもしれません。
驚く事に、10代の男性グループも来ていました。たまたま通りかかったというわけではなく、あらかじめコンサートを知っていて、それを聴く目的で来ている様子でした。日本では、まず見かけない客層なので、大変驚くと同時に、なんだか嬉しく感じました。しかも、彼らは演奏が始まると、とても熱心にじっと耳を傾けていました。
コンサートは、ショパンの生家の中に置かれている年代物のピアノを使用したもので、マイクで音を集めて、外のスピーカーに流すスタイルでした。直接目の前で演奏される訳ではないので、実は、それほど期待してはいなかったのですが、いざコンサートが始まってみますと、むしろこのスタイルの方が良いと思うくらいに、とても素晴らしいものでした。
目の前に広がる木々や草花、青空に、所々流れてくる雲を見ながら、木々が風になびく時の音や、時たま聴こえてくる鳥の鳴き声などの自然の音と、ショパンの音楽が見事に調和され、音楽も自然の一部であるという感覚を、初めて味わったような感じがしました。
(ショパンの生家・自然の中での音楽)
(ショパンの生家・自然の中での音楽)
(ショパンの生家・自然の中での音楽)
しかも、演奏も大変素晴らしく感動したのですが、演奏しているのは、なんと昨年行われたショパンコンクールに出場して、ファイナリストになったピアニストでした。聴き惚れると同時に、これほど上手でも、ショパンコンクールで賞が頂けないという厳しさを改めて感じました。
日本でも、このような広々とした自然に囲まれたところで、無料でクラシックコンサートが行われたらいいなあと思いました。
クラシック音楽のコンサートが、もっと身近に感じ、足を運ぶきっかけにもなるでしょうし、素晴らしい演奏をされるピアニストの方々にも、演奏する場が提供でき、双方に良い事のように思いました。
このポーランドの旅行記については、また「ヨーロッパ音楽紀行」のコーナーで詳しく書きたいと思います。
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