(この記事は、第182号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、音楽家の面白い趣味についてです。
私たちは、会社勤めや家事などの仕事を持つだけでなく、趣味をお持ちの方も多いと思います。ピアノ教室に通われている生徒さん方も、水泳や絵画、テニス、麻雀、旅行、家庭菜園など、いろいろな趣味を楽しまれています。
では、クラシックの音楽家たちは、どうだったのでしょうか?
クラシックの音楽家たちは、誰もが素晴らしく、独自の音楽を作り出した天才たちばかりです。
そして、それらの音楽を演奏してみますと、その美しさや奥深さを感じつつ、それと同時に、解釈の難しさや表現することの難しさに悩み、「その音楽を作った本人に直接聞いてみたい」などと思ってしまうこともあります。
当然、それは叶わぬ事ですが、音楽家の人柄に触れることで、その人となりを知ることができ、音楽を演奏する際の問題を解決するヒントにもなります。そして、歴史上の人物でありながら、より身近に感じて親近感が持てるようにもなるでしょう。
そこで、いくつかの音楽家たちの趣味についてご紹介します。
まずは、チャイコフスキーと肩を並べる、ロシアを代表する音楽家ラフマニノフです。
彼のピアノ協奏曲第2番は、大変人気のある作品で、コンサートでもよく演奏されますし、ピアノの国際コンクールでもよく選ばれる作品です。
ラフマニノフは、作曲家だけでなくピアニストとしても大変有名でした。
そのラフマニノフの趣味は、自動車です。
当時、ラフマニノフと並んで素晴らしいピアニストとして活躍していたホフマンとは大の親友で、その実力も認めていたと言われますが、車好きという点でもライバルで、「ピアニストとしては、ホフマンの方が絶対に優れているが、車の知識に関しては私の方が上だな」といった発言も残っています。
次は、チェコの音楽家、ドヴォルザークです。
交響曲「新世界より」は、誰もが知っている名曲中の名曲です。
ドヴォルザークは、13歳でお肉屋さんの職人試験に合格したという、ちょっと珍しい肩書を持っています。
そして、彼が大好きだったものは鉄道です。今で言う、鉄キチですね。
そののめり込み方は半端ではなく、時刻表や鉄道の型番、運転手の名前まで、詳細にメモを取っていたと言うのですからスゴイですね。
チェコで生まれ、アメリカへ渡るのですが、当時アメリカで走っていた新しい蒸気機関車が見られるという理由もあったようです。鉄道見たさ故のアメリカ行きとは、言い過ぎかもしれませんが、しかし、その甲斐あってあの名曲「新世界より」が生まれたとしたら、それもまたアリなのかもしれません。
最後は、クラシック音楽の父とも呼ばれた(日本だけのようですが) J.S.バッハです。
彼の作品を学んで、自らの音楽作りの土台にしたり参考にした音楽家も多い大家です。
そんなバッハが大好きだったものが、コーヒーです。
コーヒーを題材にしたカンタータを作曲しているほどです。通称「コーヒーカンタータ」と呼ばれる音楽で、コーヒー好きな娘に「コーヒーをやめなければ、結婚させない」と脅し、娘は「コーヒーを飲ませてくれる人じゃないと結婚しない」と言い、結局「コーヒーはやめられない」というストーリーです。
ぜひ、美味しいコーヒーを飲みながら聴きたい音楽ですね。
クラシック音楽家たちの趣味は、素晴らしい音楽を生み出すきっかけになっているのかもしれません。
(この記事は、第181号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、クラシック音楽の世界で有名な、女性の作曲家のお話です。
世の中には色々な職業がありますが、男性の職場というイメージの強かった分野でも、女性が活躍している姿を見かけるようになりました。バスやタクシーの運転手、車掌、パイロット、建築現場などでも女性が活躍しています。現在では、女性をほとんど見かけない職業を探すほうが難しいのかもしれません。
モーツァルトやベートーヴェンなどクラシック音楽の作曲家も、男性のイメージが強いと思いますが、実は女性の作曲家も少ないですが活躍していました。
有名なところでは、クララ・シューマンが挙げられます。
ロマン派を代表するロベルト・シューマンの妻で、有名な音楽教師だった父親の英才教育を受け、幼いころから天才少女ピアニストとして活躍をしていました。
9歳で、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団と、モーツァルトのピアノ協奏曲を演奏したほどの腕前だったようです。
クララは演奏だけでなく作曲もしていて、リストにその才能を高く評価され、ブラームスも自身の作品へのアドバイスをもらっていたそうです。
たくさんの子供を育てながら、世界的に活躍をしていたのですから、すごいですね。
クララ・シューマンについては、以前ヨーロッパ音楽紀行でも紹介しています。
クララ・シューマンの同時期には、バダジェフスカという女性作曲家もいます。
名前を聞いたことがない方も多いかもしれませんが、「乙女の祈り」というピアノ曲の作曲者です。
お子様から大人の方まで、弾いてみたいピアノ曲として挙げられますし、実際に発表会などでもよく弾かれる人気のある作品です。
当時、パリの音楽雑誌の付録に「乙女の祈り」の楽譜が掲載され、あっという間に世界中に知られるようになったそうです。
バダジェフスカは、ポーランドの作曲家で、第二次世界大戦の影響で作品の殆どが消失してしまい、詳しいことはよくわかっていません。
他には、ロマン派を代表するメンデルスゾーンの姉ファニーも、才能に溢れていて、弟の名前(フェリックス・メンデルスゾーン)で楽譜を出版していたという話が残っています。
もう少し歴史をさかのぼりますと、モーツァルトの姉ナンネルも、とても素晴らしい才能の持ち主だったようです。弟のアマデウス・モーツァルトと一緒に演奏している絵画なども残っています。
今も昔も、色々な場面で女性が活躍していることに、励まされる女性も多いかもしれませんね。
(この記事は、第179号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、国際コンクールのお話です。
以前にも書きましたが、今年は、5年に1度のショパンコンクールが秋に開催されます。
国際コンクールは、申し込めば誰でも出場できるわけではなく、書類審査や演奏を録画したDVD審査などを経て、めでたく合格しますと、はじめて一次予選に参加できる仕組みになっています。
もちろん、参加される方は、この一次予選に参加することが目的ではなく、予選を突破してファイナルまでは進みたいと思ってコンクールにチャレンジするわけですから、演奏する曲目の準備もとても大変になります。
お子様のコンクールや、国内の小さな規模のコンクールですと、自由曲を1・2曲くらいで参加できたりしますが、国際コンクールになりますと、1次予選、2次予選、3次予選、ファイナルと全て異なる作品ですし、課題曲としてある程度の枠が決められていて、その中から演奏する曲を選ぶことも多くなります。
しかも、ピアノソロの作品だけでなく、オーケストラと演奏するコンチェルト(協奏曲)や、コンクールによっては室内楽なども準備することになります。
このように、国際コンクールの一番最初の一次予選に参加するだけでも、物凄い事なのです。まるで、「参加するだけでも意義がある」と言われるオリンピックと同じような感覚ですね。
さて、10月のショパンコンクールはとても楽しみですが、実は今年、もっと多くの国際コンクールが開催されています。
7月に開催されたのが、ショパンコンクールと並ぶ世界最高峰のコンクールと言っても過言ではない、チャイコフスキーコンクールです。
結果は、優勝したドミトリ・マスリエフさん他、自国のロシア勢が独占状態になりました。入賞者の中で、19歳や16歳など若いピアニストの活躍も目を引きました。
2位に輝いた19歳のリーさんは、ショパンコンクールも受ける予定だったそうですが、辞退されたようです。もし、予定通りに受けて、同じような、またそれ以上の結果が出たとしたら・・・などと考えてしまいますが。
また、8月26日からは、イギリスでリーズ国際ピアノコンクールが開催されます。3年に1度開催されるコンクールで、日本人では、内田光子さんや小川典子さんが過去に入賞されています。
そして、ショパンコンクールの後には、フランスのパリでロン=ティボー国際コンクール、日本では、浜松国際ピアノコンクールが開催されます。
ロン=ティボー国際コンクールは、日本で大ブームを巻き起こしたブーニンや野原みどりさん、田村響さん、ヴァイオリン部門では当時16歳だった山田晃子さんが最年少で優勝したこともあるコンクールです。
浜松国際ピアノコンクールは、小林仁さん、安川加寿子さん、中村紘子さんという日本のピアニストを代表する巨匠が審査委員長を務めているコンクールです。このコンクールで、2012年に第2位で入賞した中桐望さんは、今回のショパンコンクールに予備審査免除で参加されています。
このように続々と、有名な国際コンクールが開催されます。
以前は、会場でしかコンクールの演奏を聴くことができませんでしたが、現在ではインターネットで出場者全員の演奏を予選から聴くことができます。自宅に居ながら、聴衆として、また審査員のような気分で聴くこともできるのは嬉しいですね。
予選の演奏を聴いて、お気に入りのピアニストを見つけて応援する楽しみもありますし、同じ課題曲を演奏することも多いので、聴き比べる楽しさもあります。
もちろん、ピアノを弾いている方は、ご自身の演奏のお勉強にも参考にもなりますね。
今年は、稀に見る、贅沢な芸術の秋を満喫しましょう。
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