(この記事は、第164号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、現在公開されている音楽を題材にした映画についてです。

先日、「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」という映画を鑑賞してきました。この映画のホームページはこちらです。

アルゲリッチは、アルゼンチン出身で、わずか4歳でモーツァルトのソナタやショパンの子犬のワルツを人前で弾きこなし、16歳で世界屈指の2つの音楽コンクールで相次ぎ優勝して話題になりました。

その後、ショパンコンクールでも優勝したという伝説のピアニストです。

現在でも、世界の巨匠として大活躍中で、日本でも「別府アルゲリッチ音楽祭」の総監督を務めています。

「人気と実力を兼ね備え圧倒的な存在感」とは、アルゲリッチの事を示す言葉のようにも思えます。

そんなアルゲリッチは、美しい美貌からは想像できないような、圧倒的なスケールとパワフルな演奏が魅力で、とてもファンが多いのですが、舞台上だけではない日常の姿が見られる映画でした。

ずっと世界のトップで活躍しながら、結婚や離婚、3人のお嬢さんを出産、そして癌の手術など、波乱万丈の生活を送ってきたことが、末娘のお嬢さんの視点でリアルに撮影されています。

舞台の上では、迫力あるオーラを振りまいて本当に素晴らしい演奏をされますが、出番前の舞台袖では、ナーバスになっている姿があったり、老いとの戦い、それによって演奏が変わってしまうことへの恐怖なども、アルゲリッチ自身が語っていました。

どんなに上手なピアニストでも、人前で演奏する事はとても大変な事で、それは私たちと同じなのだということを教えてくれました。

また、日常生活では、日本での移動中に新幹線の中で駅弁を食べて満足そうな表情を浮かべていたり、オーケストラとの練習中に荷物から持参したバナナを取り出して、嬉しそうにほおばるお茶目な一面や、寝起きの姿まで映されていました。

お孫さんのために、ピアノでメロディーを弾きながら歌を歌っている姿は、良い意味でごくごく普通の「おばあちゃま」という感じがして、とても親近感を持ちました。

お母さんとの確執や、昔はピアノが嫌いだった事、精神的にぼろぼろになって辛かった時期があった事、お子さんを奪われてしまった事など、あまり人には言いたくないような内容まで、包み隠さず話していた姿も驚きでした。

このような事実を知ると、天才とか巨匠と呼ばれる人でも色々な問題を抱えて、苦悩しながら、それでも音楽と向きあい、人を感動させるような演奏をしているのだと感慨深くなりました。

今回鑑賞した映画以外にも、伝説のヴァイオリニスト「パガニーニ」を取り上げた映画も以前公開されましたし、今月下旬には、指揮者をテーマにした「マエストロ」も公開されます。

音楽は演奏だけではなく、その背景を知ることで、より親近感を持ったり興味を持つことができると思います。

色々な側面から音楽を楽しめたら素敵ですね。

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(この記事は、第157号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、芸術の秋にピッタリな音楽イベントのお話です。

先日、「アークヒルズ音楽週間」に行ってきました。

「アークヒルズ音楽週間」は、「サントリーホールフェスティバル」(9月20日~11月18日)期間中のうち8日間、サントリーホールと森ビルが主催して開催されるイベントです。

アークヒルズ25周年の記念に始まった音楽イベントで、今年で4年目を迎えます。

「サントリーホールフェスティバル」では、毎年、世界の一流演奏者のコンサートや、マスタークラスの公開レッスン、オーケストラの公開リハーサルなど様々な催し物が行われます。今年は、五嶋みどりさんの公開レッスンやリサイタル、ウィーンフィルのコンサートや無料の公開リハーサルなどが行なわれました。

しかし、「アークヒルズ音楽週間」は、私もつい最近知ったので、ご存知ない方も多いかもしれません。

10月4日~11日の8日間、サントリーホールの広場やロビー、近隣のビルやホテル、カフェ、チャペル、大使館などで、コンサートなどの音楽イベントが開催されます。

私は、サントリーホールのロビーで行われたオーボエとハープのコンサートを聴いてみました。

開場時間の少し前に着きましたが、すでに長い行列が出来ていてビックリしました。

小ホールの入り口前に舞台が設けられ、40席ほど椅子も用意されていましたが、私がロビーに入った時点で満席になっていて、どんどん立ち見のお客さんが増えていきました。そして、開演時間には、80~90人くらい集まっていました。

東京交響楽団のオーボエ奏者の最上峰行さんと、ハープ奏者の津野田圭さんのコンサートです。お二人の共演は初めてのようですが、とても息の合った演奏でした。

演奏の合間には、それぞれの楽器の説明やソロの演奏もあり、ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」のハープ演奏は、とても興味深く聴かせていただきました。

「亜麻色の髪の乙女」は、ドビュッシーのピアノ曲の中でも特に有名な曲なので、聴いた事がある方も多いと思いますし、弾いた事がある方もおられると思います。

しかし、ハープの柔らかい音色で聴くと、ピアノとは違ったイメージになり、音楽の幅広い楽しみ方を体験する事が出来ました。

他の曜日には、弦楽四重奏やオペラなども演奏され、他の会場では、ジャズやサックス、尺八などクラシック以外のジャンルの音楽も演奏されました。

今年の「アークヒルズ音楽週間」は終わってしまいましたが、「サントリーホールフェスティバル」は、11月18日まで開催されています。

芸術の秋を、日本屈指のホールで楽しんでみてはいかがでしょうか。

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(この記事は、第150号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、外国で活躍されている日本人ピアニストのお話です。

普段私たちが接しているピアノ音楽は、ヨーロッパ発祥のものです。グレゴリオ聖歌を起源として、音楽も楽器もヨーロッパで発展しました。

日本にピアノが伝わったのは、江戸時代末期から明治時代です。

しかし今では、世界中でピアノ音楽は演奏され、ピアニストも世界中で活躍をしています。そして、「まさか!」という場所で活躍されている日本人ピアニストもいます。

その場所は、アフリカ・サハラ砂漠西南端の秘境、セネガル共和国です。

日本では、あまり知られていない国ですが、セネガル共和国の首都ダカールの名前は聞いたことがあるかもしれません。パリ・ダカール・ラリーの終着点です。

2000年から2012年まで、セネガル共和国の第3代大統領を務めたアブドゥライ・ワッド氏の専属ピアニストが、広谷泉さんという日本人ピアニストです。

青年海外協力隊の音楽隊員として、アフリカを訪れたことがきっかけで、大統領主催のオーディションに合格して、専属ピアニストになりました。

大統領には、執事やシェフなど専属の方が付きますが、ピアニストまでいるとは驚きですね。

しかし、モーツァルトなど昔の音楽家が、貴族お抱えの音楽家だったことを考えると、不思議ではないのかもしれません。

ワッド元大統領は、作曲が趣味なので、音楽に強い関心と理解があったのでしょう。

大統領専属ピアニストの仕事は、大統領主催の晩餐会などでの演奏なのだそうです。

世界中から様々なお客様が来られるわけですが、そのときに生演奏でおもてなしをされていたそうです。

アフリカと言うと、どうしても発展途上のイメージがありますが、広谷泉さんがアフリカに渡った時、ピアノはとても高価で、学校などでも揃っていなかったようです。

しかし、今では少しずつ普及してきて、大統領専属ピアニストを12年勤めた後、広谷泉さんは現在、セガネルの国立芸術大学でピアノの先生をされています。

バッハやモーツァルト、ショパンなど、ヨーロッパの作曲家からみたら、アジアの日本でこれだけクラシック音楽が普及し、親しまれている事に驚くと思いますが、砂漠が広がるアフリカ大陸でも、クラシック音楽やピアノは着実に広まっているようです。

ダン・タイソン や ユンディ・リ などのアジア人が、ショパンコンクールで優勝したように、近い将来、アフリカから優勝者が誕生するかもしれませんね。

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