(この記事は、第111号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、フィギュアスケートの音楽と衣装のお話です。
11月に入り、今年もあと2ケ月で終わりますね。朝晩もだいぶ寒くなってきましたし、各地で紅葉が見頃になってきました。
この季節になりますと、テレビではフィギュアスケートの大会が放映されます。
先日からグランプリファイナルが始まり、カナダ大会、中国大会が行われましたが、日本人選手が次々と好成績を収め大活躍でしたね。大舞台で緊張やプレッシャーなども感じていると思いますが、それでもきちんと練習の成果を発揮するとはさすがです。
フィギュアスケートは、色々なジャンプやステップの技術などを競う歴としたスポーツなのですが、それだけではなく、様々な芸術的要素も盛り込まれている所が魅力の一つです。
華やかな衣装を身に付けたり、音楽に合わせて演技をしますので、見ているだけでも楽しいのですが、ピアノを弾く時やレッスンでも参考になったり、学べることが多い様に思います。
音楽については、演技時間が決められているので、途中でカットしたり編集をしていますが、各選手が色々な音楽を使用していますので、曲を知る機会にもなります。
先日のカナダ大会や中国大会では、白鳥の湖、魔法使いの弟子、ラ・ボエーム、黒い瞳、カルメン、ドン・キホーテ、エレジー、ある愛の詩、シンドラーのリスト、剣の舞、シルクドュソレイユ、亜麻色の髪の乙女、誰も寝てはならぬ、等の曲が使用されました。
大きなスケートリンクで演技をして競いますから、華やかで印象に残るようにオーケストラの演奏が多くなる気がします。今回の曲を見ましても、オペラなどオーケストラが大きなスケールで演奏するものが選ばれているように思えます。
大人の生徒さん方が使用する教材を見ますと、割とオーケストラの作品をピアノソロ様に、しかも少し易しく弾きやすいようにアレンジしたものが多く使われています。今回使用された音楽も、テクニック系のピアノ教材やピアノ名曲集などに載っているものがありました。
楽しくテレビ観戦をしながら、新しい曲を知るきっかけになったり、音楽は聞いたことがあっても曲名を知らなかった音楽などを知る機会にもなったらいいですね。発表会の曲選びにもよいかもしれません。
また、衣装についても、発表会の服選びの参考になると思います。
例えば、「白鳥の湖」の音楽に合わせて演技をした浅田真央選手は、白い衣装を身に付けていましたが、ややグレーがかった生地で、スカート部分の裾などにはグレーの生地を使っていました。胸元や背中の部分には、豪華な光る装飾が付いていました。
真っ白なスケートリンクの上でも、同化せずに引き立つような工夫と、裾のデザインは白鳥の羽を思わせるようなカッティングで、風を受けるとふわふわと羽ばたいているように見えました。
「黒い瞳」の音楽に合わせて演技をしたトゥクタミシェワ選手は、黒い衣装を身に付けていましたが、単に黒い服という訳ではなくスパンコールのようなものが縫い付けられていて、照明が当たるとキラキラと光る工夫がされていました。
「シルクドュソレイユ」の音楽に合わせて演技をした鈴木明子選手は、鳥がテーマという事で、孔雀を思わせる鮮やかな色合いの衣装に、孔雀の羽のモチーフを胸元に飾り、髪にも羽のモチーフを付けていました。
「カルメン」の音楽に合わせて演技をしたオズモンド選手は、赤と黒の衣装で登場し、姿を見ただけで誰もが「カルメン」をイメージする衣装でした。
ピアノの発表会やコンサートなども、演奏だけではなく、弾いている姿など全てが一体となって芸術になるという点では、フィギュアスケートと共通しますね。
グランプリファイナルの大会は、これからロシアやフランス、日本などでも行われるようです。今後も日本人選手の活躍が楽しみですし、どのような音楽を使用して、どのような衣装を身に付けて演技をするのかという点も注目していきたいですね。
(この記事は、第109号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、ドビュッシーの美術展のお話です。
7月14日から東京の日本橋にあるブリヂストン美術館で開催されている「ドビュッシー音楽と美術 印象派と象徴派のあいだで」という美術展に行ってきました。
美術展の公式ホームページ (外部サイト)
ブリヂストン美術館60周年記念のイベントで、世界的に有名なオルセー美術館とオランジジェリー美術館との共同企画だそうです。今年はドビュッシーのメモリアルイヤーなので、以前から見に行こうと楽しみにしていました。
8月の平日午前中に行きましたが、既に多くの方が見に来ていて、その後も続々と観覧者が訪れていました。中高年の方々が一番多かった気がしますが、夏休み中ということもあり、学生さんやお子様連れの方々も見かけました。
ドビュッシーは、19世紀から20世紀にかけて活躍をしたフランスを代表する作曲家で、印象派を代表する音楽家でもあります。音楽だけでなく、美術など芸術全般が好きだったようで、ロマン派のショパンなどと同様に、音楽家以外の芸術家との交流も多かったようです。そこから多くの刺激を受けて、作曲活動にも反映させていきました。
今回の美術展では、ドビュッシーと親交のあった画家などの作品が150点ほど展示されていて、絵画だけでなく彫刻やその他の美術品もあります。
モネやルノワールなど、誰もが聞いたことのある画家の作品もあり、ルノワールが描いた「ピアノに向かうイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロール」も展示されていました。
ドビュッシーは、パリ万博にも足を運び、当時流行していた日本の美術であるジャポニズムに大変興味を持っていたようです。
以前、ドビュッシーの生家を訪れた時に彼の書斎を見ましたが、浮世絵などが飾られていました。その時に見た美術品も今回展示されていましたので、少し懐かしい気分で見学をしました。
また、ドビュッシーの代表作である「交響詩 海」が発表になった時、その表紙に葛飾北斎の浮世絵 冨嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」の絵が使用されましたが、今回の美術展ではその初版も展示されていました。
ドビュッシーのジャポニズム好きは、友人への贈り物にも反映されています。扇子に彼の音楽の一部を書いたプレゼントの実物も展示されていました。
ドビュッシー自身に焦点を当てるだけではなく、彼と交流のあった画家などの作品も同時に展示するのは、なかなか珍しい視点ですし、面白い美術展だと思います。
10月14日まで開催されていますので、ご興味のある方は行かれるとよいと思います。
(この記事は、第108号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、ヤマハピアノフェスティバルというコンサートについてです。
先日、銀座にあるヤマハホールでヤマハピアノフェスティバルというコンサートが行われました。東京にあるヤマハ系の音楽教室で、それぞれのお教室から選ばれた生徒さん100人が、ピアノ演奏をするコンサートです。
地下鉄の銀座駅とJR新橋駅の間くらいにある銀座ヤマハは、音楽を趣味で楽しんでいる方から専門に勉強しているプロの演奏家まで、幅広い方々が利用されています。ピアノだけでなく、様々な楽器や声楽などの楽譜も扱っていますので、音楽に関する事ならあらゆるニーズに応えてくれそうな場所でもあります。
近年、ビルを建て替えてヤマハホールも新しくなりましたが、今回のコンサートも、この新しいホールで行われました。2階席もあり、とても天井の高いホールです。しかも今回は、ショパンコンクールの優勝者や、チャイコフスキーコンクールで入賞したコンテスタントにも選ばれた、最新型のフルコンサートピアノを使用してのコンサートです。
ホールもピアノも素晴らしいものを使用しており、なかなかこのような環境で演奏する機会はないので、演奏する生徒さん方がうらやましく感じてしまいました。
コンサートは、小学生の生徒さん方が出演されていて、生徒さん自身やご家族、レッスンを担当されている先生からのコメントも読まれながら進められました。
色々なお教室の、同年齢の方の演奏を一度にたくさん聴ける機会はなかなか無いので、とても興味深く聴かせていただきました。
間違えてしまった生徒さんも、ちらほらいましたが、緊張のあまりたまたま間違えてしまったようで、この日のためにしっかりと練習を積んできたことが感じられました。
さすがに各お教室から選ばれただけあり、堂々としたステージマナーも好印象でした。
コンクールではないので、特別難しい曲を演奏しているわけではなく、普段レッスンで演奏しているような曲目がプログラムに並んでいました。ブルグミュラーの25の練習曲やギロックの作品、ソナチネアルバムなどです。
よく知られている曲ばかりで、まったく同じ曲が複数回演奏されることもありましたが、同じ曲でも弾き手によって解釈やニュアンスが異なりますし、テンポだけ見ても微妙に異なりますので、決して同じ演奏にはならないのです。それが音楽の面白い所とも言えますね。
普段のレッスンで使われている曲が演奏されていましたので、聴衆としても楽しめましたが、指導している立場から見ましても、今後のレッスンのよい参考になりました。
コンサートホールのロビーでは、演奏を終えた生徒さんが、ご家族や先生、聴きに来られたお友達と話をしたり、記念撮影をしていました。緊張から解放されてホッとしたような笑顔の方が殆どで、写真にも笑顔で臨まれていたのが印象的でした。
小学生の年齢では、通常の発表会だけでも、とても大きな舞台で緊張すると思いますが、今回のように、日本有数の有名ホールで、しかもフルコンサートピアノという最大級のピアノで弾く事は、物凄く緊張したと思います。
しかし、この体験は、きっと今後のピアノ演奏や、音楽以外の場でも役に立つのではないかと思います。心から、「お疲れ様でした」と声をかけたくなりました。
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