(この記事は、第65号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、フランツ・リストのお話です。
昨年のクラシック音楽業界は、ショパン生誕200年という記念の年で、とても話題になり、ショパンの音楽をまとめたCDが発売されたり、ショパンコンクールも開催され、とても盛りあがりました。
そして、今年2011年は、フランツ・リストの生誕200年です。
フジコ・ヘミングさんの演奏でさらに有名になった「ラ・カンパネラ」や「愛の夢第3番」「ハンガリー狂詩曲」などが有名ですね。
しかし、ピアノを弾いている方ならご存知かと思いますが、リストの作品は難しい曲がとても多いのです。これは、プロのピアニストも感じているようで、世界的に有名で巨匠とまで言われたピアニストでさえ、リストの作品を「演奏不可能」と話したそうです。
例えば「ラ・カンパネラ」を見てみますと、始めの方はそれほど難しい印象はないかもしれませんが、1拍の中で2オクターブ違う音を16分音符で弾かなければなりません。とても音が飛んで、しかもアレグレットの速さ(やや速く)なので思った以上に速く、しかし難しいからと言って音を間違えてしまいますと、メロディーの音なので、とても目立ってしまうのです。
またペダルをあまり使用しない所なので、ペダルで何とかするということも出来ず、ひたすら間違えないように練習するしかありません。
このように単音の跳躍だけでも、ひと苦労するのですが、後半になりますと、和音やオクターブで弾く箇所ばかりになり、その状態で音が飛ぶ所も多く、しかもフォルテやフォルティッシモなど強い音で弾かなければならないので、これは本当に難曲そのものと言えます。
以前、お子様の発表会の講師演奏で弾きましたが、「なぜ、こんな(難しい)曲を選んでしまったのだろう」と後悔の気持ちを持ったこともありました。
上級者の生徒さん方がよく弾かれる「愛の夢第3番」も、レッスンを見てみますと、結構苦戦されている事が多いように思います。音楽を聴く限りでは、ゆったりとしたロマンティックな雰囲気で、とても素敵なのですが、そのように弾くことが難しいのです。
曲の最初に出てくるメロディーですが、実は右手で弾いたり、左手で弾いたりして、音によって弾く手が変わっています。それをあたかも1本の手で弾いているかのように弾くことに苦労するわけです。
また、途中で即興的な雰囲気で、とても速くパラパラと音を弾く所があり、ここも難しい所です。聴いていますと、優雅そのものですが、弾いている生徒さん方は、他の音符よりもはるかに小さくごちゃごちゃと書かれている音を把握するだけでもひと苦労しています。このような箇所は、他の曲にもよく見られるので、リストの作品ならではと言えるでしょう。
リストが、何故これほど難しく、譜読みも大変な曲をたくさん作ったのかは謎ですが、その手がかりとなるのは、リストが「ピアノの魔術師」と言われ「クラシック音楽の歴史上、最高のピアニストであった」と言われている事です。
7歳でピアノを始めて、2年後にはコンサートを開き、11歳ではベートーヴェンの弟子であり、当時音楽教師としてとても有名だったチェルニー(練習曲を数多く作曲したことで有名です)に習い、その翌年には、当時巨匠だったベートーヴェンに会い、絶賛されたのですから、その素晴らしさは想像できますね。
当時は、コンサートやサロンで自作自演することが普通でしたので、この難解な作品もリスト自らが演奏していたと思われます。
現代でも、巨匠と呼ばれる素晴らしいピアニストがたくさんいる中で、未だに「歴史上最高のピアニスト」と言われているリストが弾くとどんな演奏になるのか、聴いてみたくなりますね。
(この記事は、第63号のメールマガジンに掲載されたものです)
今週は、いよいよクリスマスです。あちらこちらでイルミネーションが見られ、なんともロマンティックな雰囲気に包まれています。駅前の広場や観光スポットだけでなく、商店街や、最近では個人の家でもクリスマスのイルミネーションを行うところが増えてきました。
パーティーや、レストランでのお食事を計画している方も多いかもしれません。そのような楽しいイベントに、音楽は欠かせないアイテムです。クリスマスの音楽と言うと、「きよしこの夜」「真っ赤なお鼻のトナカイさん」「ウィー・ウィッシュ・ユー・ア・メリークリスマス(We Wish You A Merry Christmas)」「ホワイト・クリスマス」など、他にも色々な賛美歌があります。
その中で「聖者の行進」という曲を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。「聖者が街にやってくる」という題名でも知られています。英語では、「When The Saints Go Marchin’ In」です。
ピアノの教材でも割と多く掲載され、お子様も、大人の方でも楽しめる曲です。コン・ヴィヴァーチェでも、以下のような教材や記事があります。
自宅でできる はじめてのピアノレッスン(ステップ4,5)
無料楽譜でピアノレッスン:「聖者の行進」
この曲は、1拍目から弾き始めるのではなく、2拍目から弾くアウフタクトの曲なので、その練習にもよく使われています。
曲の題名に「聖者」と入っているので、クリスマスにピッタリ!と思われている方も多いと思います。私も、その一人でした。しかし、それは大きな誤解だったのです。
「聖者の行進」は、黒人霊歌で、アメリカで誕生しました。元は歌の曲ですが、色々な楽器で演奏されることが多く、ディキシーランド・ジャズ(クラシック・ジャズ)のスタンダードナンバーとしても知られていますので、歌詞が付いていることを知らない方もいるかもしれません。
そして驚くことに、この曲は、お葬式の時に演奏される曲だったのです。聖者というのは、キリストやその弟子ではなく死者を意味していて、ジャズの本場であるアメリカのニューオリンズで、葬儀の際に演奏されていました。
しかし、しんみりと死者を弔うだけでなく、最後は天国に賑やかに送り出したいという内容の歌詞になっています。
今年のクリスマスにこの曲を聴く事がありましたら、これまでの印象とは少し変わってくるかもしれませんね。
(この記事は、第62号のメールマガジンに掲載されたものです)
12月に入り、今年も残すところ1カ月となりました。
今回の「たのしい音楽小話」は、12月1日から行われている「ウィーン・クリスマス・イン・東京」というイベントについてお話いたします。
オーストリアのウィーンと言いますと、モーツァルトやシューベルト、ヨハンシュトラウス1世・2世や、世界最高峰のオーケストラである、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団など、まさに「音楽の都」としてあまりにも有名な街です。
「ウィーン・クリスマス・イン・東京」というイベントは、オーストリア ウィーンのクリスマスを「見て・聴いて・食べて・感じて・楽しめる」というイベントで、今回が初めての開催だそうです。
東京の会場は、旧三信ビルディング跡地で、日比谷シャンテの向かいにある 日比谷パティオです。
クリスマスと言いますと、ヨーロッパが本場というイメージなので、どのようなものがあるのか、楽しみに出かけました。
イベント会場の真ん中には、高さ6メートルのクリスマスツリーが飾られ、雪の結晶のオーナメントと共に、大小の丸い照明が飾られていました。
これは、大ブームとなった映画「タイタニック」の照明を担当したエアースター社の照明だそうです。昼間に行ったので、ライトアップが見られなかったのは残念です。
クリスマスツリーを中心に、色々なお店のコンテナが点在していました。大きめのコンテナ内には、「ウィーンで最もエレガントなカフェ」として誕生した「カフェ ラントマン」の喫茶スペースがあります。
「カフェ ラントマン」は、1873年創業の老舗のカフェで、マーラーや画家のクリムトなども訪れていたそうです。海外第1号店として、東京の青山にもお店があります。
本場のカフェやスイーツ、ウィーンの伝統的なお料理も楽しめるお店で「ウィンナーコーヒー」の原型となったと言われている「アインシュペンナー」や、温めたミルクを泡立ててコーヒーを合わせた定番の「メランジェ」、ブレンドコーヒーに生クリーム、モーツァルト・リキュール等をあわせた「モーツァルト」という飲み物もあります。
スイーツ系も、ウィーンの伝統的なチョコレートケーキ「ザッハトルテ」や、お店の名前の付いた「ラントマントルテ」、ココア生地にチョコレートムースやピスタチオのクリームを使用した「モ─ツァルト・トルテ」などがあります。
同じコンテナには、ウィーンの家具や食器など色々な製品を展示・販売している「ウィーン・プロダクツ」のコーナーがありました。世界的に有名なオーストリアの陶磁器「アウガルテン」の食器や、クリスタルグラスで有名な「ロブマイヤー」のグラスなどが飾られ、テーブルや椅子などの家具、床材、カーテンなども、全てウィーンのもので統一され、シェーンブルン宮殿のクリスマスをイメージして展示されているそうです。
アウガルテンの食器は、オーストリアの女帝マリアテレジアの父が設立したそうで、ウインナーローズの柄が有名ですが、皇后陛下も以前、「忘れな草」柄の食器をお求めになったそうです。とても繊細で可憐な花々が描かれた上品な食器です。
この他、シェーンブルン宮殿の美術館のグッズや、オーガニックのスキンケア製品、キャンドル、クリスマスオーナメント、ウィーンのシュテファン寺院の裏にあるお茶専門店「ハース&ハース」のハーブティーも販売されていました。
日本ではなかなか手に入らないそうですが、通常のパッケージの他、ピアノの形をしたパッケージの「ピアノギフト」というものもありました。
「キウイストロベリー」と「バナナチェリー」という珍しいフルーツティーが2種類セットになっていました。ちょっとしたクリスマスギフトにも良さそうですね。
また、ヨーロッパのクリスマスには欠かせない「シュトーレン」というお菓子も売られていました。
本場のレシピさながらに作られた、硬めのパンのようなお菓子で、少しづつ薄くスライスして食べながら、クリスマスまで楽しむそうです。本来は、このように食べるので、かなり大きめなサイズなのですが、こちらでは手のひらに乗せられるミニサイズも販売されていました。
レーズンやいちぢく等の他、スパイスやブランデーも入っていますので、とても風味豊かな味わいです。
割とこじんまりした感じではありましたが、本場の色々な製品や飲み物、スイーツなどを気軽に楽しめました。また、曜日や時間帯によっては生演奏があったり、トークイベントなども開催されているようです。
会場の道を挟んだ向かいは、日比谷公園があり、横の日比谷マリンビルの地下1階には、高級ピアノメーカー・スタインウェイの日本での特約店となっている松尾楽器商会のショールーム(スタインウェイサロン東京)があります。
日比谷や銀座界隈にお出かけされる時に、ちょっと立ち寄ってみてはいかがでしょうか。26日まで開催されています。
以下のホームページも合わせてご覧ください。
ヨーロッパ音楽紀行・ウィーン
世界3大ピアノ弾き比べ(スタインウェイ、ベーゼンドルファー、ベヒシュタイン)
ウィーン・クリスマス・イン・東京 公式ホームページ (外部サイト)
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