(この記事は、第66号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、ショパンコンクール入賞者によるガラ・コンサートのお話です。

昨年は、5年に1度のショパンコンクールが開催され、とても話題になりましたが、その入賞者が一堂に揃うガラ・コンサート(特別公演)が日本各地で開催されました。

私も、その東京公演を聴きに行ってきました。5位までの入賞者5人と、コンクールの本選で協奏曲を演奏した指揮者やオーケストラも一緒に来日しての、お披露目のコンサートでした。それぞれのプログラムに加えて、全員がアンコールの曲を演奏し、とても盛りだくさんのコンサートでした。

まずはじめに、第3位のダニール・トリフォノフさんが、ピアノコンチェルト1番を演奏しました。

イタリアのピアノメーカー「ファツィオリ」のピアノを使用していました。コンクール時まだ19歳と言う若さですが、フレッシュな生き生きとした演奏と、とっても繊細な表現力で驚きました。

コンチェルト第1番は、ショパンが20歳の時に作曲した代表作なのですが、その時のショパンと殆ど同じ年のダニール・トリフォノフが弾くと、当時ショパンが演奏していた時を再現しているようで、感慨深い印象も受けました。明るく軽いタッチが持ち味で、特にピアノやピアニッシモの美しさが素晴らしかったです。ちょうど大学生に当たる年齢ですが、その年齢で世界最高峰のピアノコンクールで第3位とは、本当にスゴイものです。

続いて第5位のフランソワ・デュモンさんが、即興曲第1番&スケルツォ第3番を演奏しました。

エリザベート王妃国際コンクールや日本の浜松国際ピアノコンクールなどでも、次々と優勝や入賞をしている方です。5人の演奏者の中で、一番落ち着いた音色と演奏でした。先程のダニール・トリフォノフの若さ溢れる演奏と対照的で、大人の演奏だった気がします。でもアンコールで、練習曲5番「黒鍵」を弾いて、それだけではない多面的な部分も感じました。

次は、第2位のインゴルフ・ウンダーさんです。彼の演奏は、ショパンコンクールの公式ホームページで聴いて、個人的にかなり気になっていたので、是非生演奏を聴きたいと思っていた演奏者の一人です。

今回は、ポロネーズ第7番「幻想ポロネーズ」を演奏しました。今回のショパンコンクールから、第3次予選で課題曲が決められ、それがこのポロネーズ第7番「幻想ポロネーズ」でした。軍隊ポロネーズや英雄ポロネーズなど、色々なポロネーズがある中で難曲と言われています。インゴルフ・ウンダーは、コンクールで第2位と同時に、新設された「幻想ポロネーズ賞」も授与されています。

明るい音色と表現の幅広さは際立っていて、ポロネーズのリズム感とその表現の仕方、この難解な大曲をまとめあげた演奏は素晴らしかったです。ピアニッシッシモ!?のような、音が鳴らなくなる1歩手前の、ギリギリの弱さの音がとてもきれいで印象的でした。これを普通の人が真似したら、まず音が鳴らないのではないかと思います。さすが「幻想ポロネーズ賞」を授与された演奏だったと思います。

これだけではなく、ある意味、彼の演奏の素晴らしさを存分に発揮できていたのは、アンコールで弾いたモーツァルト作曲 A・ヴォロドス編曲「トルコ行進曲」です。始めは、至って普通の曲だったので「ファンサービスのために、あえてオーソドックスな曲を選んだのだろう」と思っていたのですが、全く違いました。編曲されたもので、物凄い超絶技巧の曲だったのです。このような「トルコ行進曲」は聴いたことが無く、釘づけになってしまいました。それを彼は、必死ではない、どこか楽しんでいる様な雰囲気で演奏していたので、演奏後は「ブラボー」の声が相次ぎ、立って拍手をする人もあちこちにいて、この日一番の拍手を受けていました。

次は、インゴルフ・ウンダーさんと同じく第2位になったルーカル・ゲニューシャスさんが、ポロネーズと練習曲を3曲披露しました。

コンクールではポロネーズ賞を授与されています。練習曲は、音大の入試の課題曲にも選ばれているもので、ピアノを専門に勉強している方にとっては必須曲ですが、その時に苦労してなんとか仕上げた曲とは、まるで別物の様な繊細で華麗な演奏で、余裕を感じるところもあり、素晴らしいテクニックでした。それだけではなく、ショパンの練習曲の素晴らしさがよく伝わる演奏でした。

アンコールでは、ショパン作曲 ワルツ4番を弾かれました。通称「子猫のワルツ」とも呼ばれていますが、生まれたばかりの子猫がくるくると動きまわったり、じゃれたりする光景と、それでいてショパンの音楽らしい優雅さも感じる演奏でした。

そして、最後は優勝したユリアンナ・アヴデーエワさんが、コンクール本選で演奏された、ピアノコンチェルト第1番を披露しました。

コンクールのライブ録音では、他の予選の時と比べて、緊張のためなのか、少々荒さを感じる演奏でしたが、この日のコンサートでは、見事にコントロールされた素晴らしい演奏でした。

シューベルトとモーツァルトの演奏で抜群に高評価で人気のある内田光子さんのような、黒いパンツスーツの装いで登場しました。ショパンの話で欠かせない作家のジョルジュ・サンドが思い浮かぶところもあります。

女性ピアニストでは世界ナンバー1と言っても過言ではない、アルゲリッチを一瞬思い出すような、線が太くてなおかつ華麗な音色と、繊細さを持ち合わせていて、華のあるピアニストだと思いました。会場のお客さんがぐっと彼女の音楽に入り込んでいる印象さえ受けました。

この日は特に第2楽章の演奏が素晴らしく、少々速めのテンポながらロマンティックと優雅さが際立っていました。全楽章を通して、良い意味でとても彼女の個性が光る研究された演奏でした。演奏中、よくオーケストラの方を見て演奏していて、オーケストラとピアノとのバランスや全体の音楽を、常に考えて演奏されていました。将来は、内田光子さんやアシュケナージのように、自分でオーケストラの指揮をしながら、ピアノを演奏するということもあるかもしれませんね。

なお、このガラ・コンサートの模様は、5月にBSプレミアムの「特選オーケストラ・ライブ」で放映予定だそうです。まだ詳しい日程は未定のようですが、ご興味のある方は、チェックしてみて下さい。

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(この記事は、第65号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、フランツ・リストのお話です。

昨年のクラシック音楽業界は、ショパン生誕200年という記念の年で、とても話題になり、ショパンの音楽をまとめたCDが発売されたり、ショパンコンクールも開催され、とても盛りあがりました。

そして、今年2011年は、フランツ・リストの生誕200年です。

フジコ・ヘミングさんの演奏でさらに有名になった「ラ・カンパネラ」や「愛の夢第3番」「ハンガリー狂詩曲」などが有名ですね。

しかし、ピアノを弾いている方ならご存知かと思いますが、リストの作品は難しい曲がとても多いのです。これは、プロのピアニストも感じているようで、世界的に有名で巨匠とまで言われたピアニストでさえ、リストの作品を「演奏不可能」と話したそうです。

例えば「ラ・カンパネラ」を見てみますと、始めの方はそれほど難しい印象はないかもしれませんが、1拍の中で2オクターブ違う音を16分音符で弾かなければなりません。とても音が飛んで、しかもアレグレットの速さ(やや速く)なので思った以上に速く、しかし難しいからと言って音を間違えてしまいますと、メロディーの音なので、とても目立ってしまうのです。

またペダルをあまり使用しない所なので、ペダルで何とかするということも出来ず、ひたすら間違えないように練習するしかありません。

このように単音の跳躍だけでも、ひと苦労するのですが、後半になりますと、和音やオクターブで弾く箇所ばかりになり、その状態で音が飛ぶ所も多く、しかもフォルテやフォルティッシモなど強い音で弾かなければならないので、これは本当に難曲そのものと言えます。

以前、お子様の発表会の講師演奏で弾きましたが、「なぜ、こんな(難しい)曲を選んでしまったのだろう」と後悔の気持ちを持ったこともありました。

上級者の生徒さん方がよく弾かれる「愛の夢第3番」も、レッスンを見てみますと、結構苦戦されている事が多いように思います。音楽を聴く限りでは、ゆったりとしたロマンティックな雰囲気で、とても素敵なのですが、そのように弾くことが難しいのです。

曲の最初に出てくるメロディーですが、実は右手で弾いたり、左手で弾いたりして、音によって弾く手が変わっています。それをあたかも1本の手で弾いているかのように弾くことに苦労するわけです。

また、途中で即興的な雰囲気で、とても速くパラパラと音を弾く所があり、ここも難しい所です。聴いていますと、優雅そのものですが、弾いている生徒さん方は、他の音符よりもはるかに小さくごちゃごちゃと書かれている音を把握するだけでもひと苦労しています。このような箇所は、他の曲にもよく見られるので、リストの作品ならではと言えるでしょう。

リストが、何故これほど難しく、譜読みも大変な曲をたくさん作ったのかは謎ですが、その手がかりとなるのは、リストが「ピアノの魔術師」と言われ「クラシック音楽の歴史上、最高のピアニストであった」と言われている事です。

7歳でピアノを始めて、2年後にはコンサートを開き、11歳ではベートーヴェンの弟子であり、当時音楽教師としてとても有名だったチェルニー(練習曲を数多く作曲したことで有名です)に習い、その翌年には、当時巨匠だったベートーヴェンに会い、絶賛されたのですから、その素晴らしさは想像できますね。

当時は、コンサートやサロンで自作自演することが普通でしたので、この難解な作品もリスト自らが演奏していたと思われます。

現代でも、巨匠と呼ばれる素晴らしいピアニストがたくさんいる中で、未だに「歴史上最高のピアニスト」と言われているリストが弾くとどんな演奏になるのか、聴いてみたくなりますね。

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(この記事は、第63号のメールマガジンに掲載されたものです)

今週は、いよいよクリスマスです。あちらこちらでイルミネーションが見られ、なんともロマンティックな雰囲気に包まれています。駅前の広場や観光スポットだけでなく、商店街や、最近では個人の家でもクリスマスのイルミネーションを行うところが増えてきました。

パーティーや、レストランでのお食事を計画している方も多いかもしれません。そのような楽しいイベントに、音楽は欠かせないアイテムです。クリスマスの音楽と言うと、「きよしこの夜」「真っ赤なお鼻のトナカイさん」「ウィー・ウィッシュ・ユー・ア・メリークリスマス(We Wish You A Merry Christmas)」「ホワイト・クリスマス」など、他にも色々な賛美歌があります。

その中で「聖者の行進」という曲を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。「聖者が街にやってくる」という題名でも知られています。英語では、「When The Saints Go Marchin’ In」です。

ピアノの教材でも割と多く掲載され、お子様も、大人の方でも楽しめる曲です。コン・ヴィヴァーチェでも、以下のような教材や記事があります。

自宅でできる はじめてのピアノレッスン(ステップ4,5)
無料楽譜でピアノレッスン:「聖者の行進」

この曲は、1拍目から弾き始めるのではなく、2拍目から弾くアウフタクトの曲なので、その練習にもよく使われています。

曲の題名に「聖者」と入っているので、クリスマスにピッタリ!と思われている方も多いと思います。私も、その一人でした。しかし、それは大きな誤解だったのです。

「聖者の行進」は、黒人霊歌で、アメリカで誕生しました。元は歌の曲ですが、色々な楽器で演奏されることが多く、ディキシーランド・ジャズ(クラシック・ジャズ)のスタンダードナンバーとしても知られていますので、歌詞が付いていることを知らない方もいるかもしれません。

そして驚くことに、この曲は、お葬式の時に演奏される曲だったのです。聖者というのは、キリストやその弟子ではなく死者を意味していて、ジャズの本場であるアメリカのニューオリンズで、葬儀の際に演奏されていました。

しかし、しんみりと死者を弔うだけでなく、最後は天国に賑やかに送り出したいという内容の歌詞になっています。

今年のクリスマスにこの曲を聴く事がありましたら、これまでの印象とは少し変わってくるかもしれませんね。

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