(この記事は、第180号のメールマガジンに掲載されたものです)

ピアノのレッスンでは、レッスン以外に幅広くピアノや音楽の事を知ってもらい興味を持ってもらえるように、色々なお話もするようにしています。

また、楽譜やCDをお貸しすることもあります。

自分が学生のときのレッスンを思い返してみても、このようなレッスン以外の出来事が思い出深く残っているものです。

リストの曲を練習している時に、「あなた、これ聴いてみなさい」と、先生から1枚のレコードを渡されたことがありました。アンドレ・ワッツの弾くリストの超絶技巧練習曲全集で、ちょうど練習していた曲でした。

先生からお借りするなんてと、とても恐縮してしまい、何かあってはいけないと楽譜の入ったカバンには入れず、まさに肌身離さず大事に抱えて帰宅したものです。

家に帰って、早速レコードをセットし針を下ろす時の緊張感、そして出てきた音の美しさ。(アンドレ・ワッツは、弱い音がとても綺麗なのです。)

もう、かなり前の事ですが、今でも鮮明に記憶に残っています。

ピアノを弾く時に、今練習している曲を早く弾けるようになりたいとか、早く難しい曲が弾けるようになりたいというのは、一つの身近な目標としては良いのかもしれません。

しかし、それだけでは、どうも味気ないというのか、もったいないと思うのです。

他の人の演奏を聴いて、表現や解釈の違いを感じたり、その音楽の背景を知ることで、より深く音楽を理解し、楽しむことができるようになると思います。

そのため、来月開催されるショパンコンクールについても、レッスンで意識して話題に挙げています。

小さい生徒さんから大人の生徒さんまで、年齢問わずお話をしていますが、ご存じない方がとても多いようです。そういうコンクールがあるのを知っている方が、少しいらっしゃる程度でした。

「5年に1度の開催なので、オリンピックより間隔が空いているでしょ?」とか、一次予選に参加するまでの道のりの大変さ、もし優勝したら・・その影響など、ほんの少しお話をするだけで、どの生徒さんも、とても良いリアクションをされます。

「えぇ~っ!! 5年に1度しかやっていなかったら、参加するタイミングを合わせるのも、すごく大変ですよね。」

「一次予選前に、わざわざポーランドのワルシャワまで行って、一人30分くらいのプログラムの曲を弾くの? うわ~、すっご~い。」

などなど、そこまで反応があると、興味を持ってもらえたようで、こちらとしても、お話してよかったと思います。

場合によっては、実際に YouTube の動画をお見せして、「ね~、すごいでしょ? 15,6歳で、こんなに上手に弾けるのよ~。」とお話をすると、驚きの表情で、聴き入っている生徒さんもいらっしゃいました。

中でも、一番生徒さん方が驚かれたのが、アジア人として初めてショパンコンクールで優勝した、ダン・タイ・ソンさんのエピソードです。

ベトナム戦争のさなか、防空壕の中で紙鍵盤で練習をしていたというエピソードには、みなさんビックリ仰天というお顔をされていました。

そのような状況でも、世界最高峰のショパンコンクールで優勝するのですから、本当にすごいとしか言葉が出てきません。

そのような話をちょっとでも聞くと、「じゃあ、私も練習を頑張ろうかな」と前向きになれたり、「あのピアニストの演奏を聴いてみようかな」「今年のショパンコンクールが開催されたら、インターネットで聴いてみようかな」と少し興味が持てるのではないかと思います。

そんな、ちょっとしたきっかけを、これからもレッスンで提供していきたいと思っています。

(参考)
世界最高峰のショパンコンクール・日本人の成績は?
ショパンコンクールは、ちょっと特殊なピアノコンクール
ショパンコンクール・第3次予選から本選へ
ショパンコンクールに参加したピアニストとそのエピソード
2010年ショパンコンクールをネットで楽しむ
ショパンコンクール入賞者によるガラ・コンサート
ショパンコンクール・チャイコフスキーコンクール歴代優勝者の音楽CD
今年2015年はショパンコンクールの年
芸術の秋に国際コンクールを満喫

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(この記事は、第178号のメールマガジンに掲載されたものです)

前回は、お子様のピアノ発表会で久しぶりにお会いした先生とのお話でしたが、今回は、ピアノ発表会の舞台裏での出来事です。

今回の発表会は、午後一の開催でしたので、タイムスケジュール的には無理がありませんでした。

例えば午前中の10時スタートなどの場合、お昼くらいには終わるので、午後はゆっくりと過ごせますが、9時台に集合で、その前に自宅で練習もしますし、会場まで行く時間を考えますと、普段以上に早く起床して準備をすることにもなります。

また、夕方開催の場合、食事も練習もゆっくりすることができますが、夕方に向けてリラックスしてくる時間帯で、特に未就学児さんにとっては、疲れも出てきますので、発表会としてはなかなか難しい時間帯になります。

この夏休みの時期は、たくさんの教室やクラスが発表会を行いますので、なかなか希望通りの日時では行えないものですが、今回は運良く、良い時間帯に開催することが出来ました。

講師やスタッフは、生徒さん方より早く会場に入って準備を行います。

欠席の有無や、アナウンスで読み上げる生徒さんのお名前の確認の他に、足台や補助ペダルのセッティングの確認などを行います。

また、講師演奏の練習や、会場に到着した生徒さんに舞台袖の場所の案内や、初めて参加する小さい生徒さんには、舞台上でのおじぎの場所なども確認してもらいます。

そして、あっという間に開演の時間になりました。

今回初めて参加した小さい生徒さんは、状況がよくわからないようで、お辞儀をしても、なんだかぼーっとしてしまいましたが、その姿は、なんともかわいらしく、ほほえましく感じました。

生徒さんの中には、緊張して暗譜がわからなくなり、ピタッと演奏が止まってしまった方もいました。

なんとか弾こうとしているのですが、どうにも続きの音が出てこなくなってしまい、弾いてみても違った音になり、先に進めません。

舞台袖では、レッスンを担当している先生が、「○の音、○の音よ!」と囁いていますが、もちろん生徒さんには聞こえません。

いよいよ舞台に上がって、フォローをしようかという仕草になっており、私など他の先生も、「頑張れ、頑張れ」と小声でエールを送っていました。

しかし、その後、す~っと続きの音が出てきて、何事もなかったかのように、音楽が流れ始めました。

「あ~、よかった、よかった!」

「いや~、あの状況で、よく○の音がでてきたわよね、すごい、すごい」と、小さく拍手をしながら喜びに湧きあがりました。

私の生徒さんでは、いつも何事もなく弾いていた箇所で、急につまずき、その後も、ちょこちょこ間違えてしまう生徒さんがいました。

後日、どうしたのかと聞きますと、最初に間違えた時に、「もう、ちょっとダメかな~」と思ってしまったようなのです。

難しい曲を弾いたので頑張ったことは確かなのですが、本人としては「いますぐ、もう一度やり直したい」と話していました。

本番で、練習通りに、またそれ以上に完璧に弾けることは、殆どないと言ってもよいでしょう。

広い会場や、スポットライトの照明、お客さんの視線、それに、出番前には、直前の人の演奏がやたら上手に聞こえるなど、普段とは違う状況ばかりです。

毎年、発表会に参加していても、会場や他の参加者、そして演奏順も異なりますから、完全に同じ状況にはなりません。

そのような状況下で、本番の演奏中、思わぬ所で間違えてしまったときにどうするのか?

一度の間違えを、後に引かないようにして、すぐに気持ちを切り替えて演奏するには、どうしたらよいのか?

その対処法も考えながら、練習しておく必要があると改めて感じました。

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(この記事は、第177号のメールマガジンに掲載されたものです)

お子様のピアノ発表会が、終わりました。

今回の発表会は、多くのクラスでの合同開催となりました。

開演前に、最終的な打ち合わせを行うのですが、今年初めてピアノ発表会に参加する新人の先生からベテランの先生まで、たくさんの方が集まりました。

同じ音楽教室のピアノ科と言っても、レッスン会場が異なっていたり、同じレッスン会場でも稼働する曜日が異なるなどで、なかなかお会いできないものです。

そのため、今回の発表会で、1年ぶりの再会になる先生もいらっしゃいました。

以前、スケジュールの都合で生徒さん数名の引継ぎをお願いした先生でしたので、「○○さん(生徒さんのお名前)、まだ頑張ってピアノのレッスンに通われていますよ~」という、お話も聞くことができました。

中でも、「◇◇くん、○○音大に合格してね・・・」というお話には、大変驚きました。

小学校低学年から高校に入学するまでレッスンを担当させて頂いていた生徒さんです。

とても繊細なのですが、どちらかというと不器用なタイプの生徒さんで、ピアノが大好きという気持ちの反面、音楽教室内のオーディションでは何回も不合格になっていました。

学校の伴奏オーディションにも落ちてしまうなど、なかなか結果を出すことができず、なんとかしてあげたいと思っていました。

もちろん発表会のように、頑張った練習の成果を披露する場も素晴らしい体験となりますが、時には、その頑張りが目に見える評価に繋がると、更に良い経験となるものです。

しかし、ずっと落選続きでしたので、何とか勝ち取った達成感や充実感を味わってもらいたいと思っていたのです。

中学生の頃、音大へ行きたいということは漠然とお話していて、その理由を尋ねますと、「将来は、ゲームの音楽を作る人になりたい」と答えていました。

音大のピアノ科を受けるのは、少し難しい気もしましたし、それよりも将来のことを考えますと、音大へ行くという選択肢だけでなく、音楽の専門学校など、もう少し実践的な場を考えてもよいのではとアドバイスしたこともありました。

また、ピアノのコンクールを受けてみたいという事も、お話していました。

その生徒さんが、数年のうちに、ピアノコンクールを受けて全国大会で賞を取り、そして見事に音大に合格していたので、本当に驚くと同時に、とても嬉しく感じました。

レッスンをしている生徒さんが、メキメキと成長していく様を近くで見られるのは、ピアノ講師という職業の醍醐味の一つですが、以前レッスンをしていた生徒さんが、その後別の場所で、同じように楽しくピアノを継続されていたり、色々と活躍されている様子を知ることも、とても嬉しいものです。

ピアノの発表会前に、とても嬉しいお話が聞けて幸せな瞬間でした。

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