(この記事は、第176号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、お子様のピアノ発表会の練習風景です。

7月に入り、毎年夏の恒例になっている発表会が間近に迫ってきました。

先月あたりから、レッスンのたびに壁にかかっているカレンダーを欠かさずチェックし、本番まで(レッスンが)あと何回と頭の中でカウントダウンしています。

今年は、かなり難しい曲にチャレンジしている生徒さんが何人もいるため、自宅での練習がはかどっているのか、とても気になっています。

お子様の場合、練習しているうちに、意識しなくても、ある程度曲を覚えてしまう事が多々ありますので、大人ほど暗譜で苦労する人は少ないように感じます。

ただ、気が付いたら暗譜が出来ていたというのは、肝心の本番でわからなくなる恐れもあるので、頭でも曲を理解して、意識して覚えていくことも必要なのです。

かなり難しい曲を練習する場合、なんとなく弾けてはいても、細かく楽譜を見てみると例えばスタッカートが1つ足りないとか、スラーの部分が短くなっている等、きちんとは弾けていないことがあるものです。

また、いつもどこかで間違えてしまい、成功したことが殆どないということも起こります。

つい、「よく楽譜を見て弾いてね」と言ってしまいがちですが、これでは注意をしているつもりでも、それほど伝わっていないことが多い気がしています。

そのため、今年は特に意識して、とにかく完璧に出来るまで、何回もしつこく部分練習をすることを徹底しています。

頭では分かっていても、いざ実行することは、思っている以上に難しいことですし、それ以前に頭でしっかりと把握できていない状態では、美しい音楽を生み出せないと思っています。

レッスン中に、急に楽譜を閉じて、「このフレーズに出てくる○の音は、何番の指で弾くのかな?」「○の音の強さは、何だったかしら?」というような質問もしてみます。

しっかりと覚えていないと答えられないような質問ですし、鍵盤の蓋も閉めてしまうので、鍵盤で指を動かして答えを導き出すこともできません。頼りにできるのは、自分の頭の中だけです。

この状態で即答できていますと、しっかりと暗譜はできていますので、あとは自信を付けるだけでよいですし、答えに時間がかかったり、答えが間違っている場合には、しっかり理解できるように、一緒に楽譜を見て答えをチェックしていきます。

また、「いつも、このフレーズがきれいに弾けていない」という場合には、とにかくレッスン中に1回成功するまでは、ずっと部分練習をしていきます。

1つの音もミスすることなく弾くという、テクニックの練習は、かなり根気がいる練習です。

生徒さんの様子を見ていても、しばらくは熱心に練習し、そしてだんだんと飽き始め、1か所だけのミスが 2か所になり、3か所になりと、ぐずぐずの状態になることもあります。

顔にも、飽き飽きした表情が浮かびますし、ため息をつきながら、まさに嫌々ながら練習しているようなことにもなります。

場合によっては、少し休憩しながら、それでも完璧に1回弾けるまでは、一切の妥協もせず、こちらも、忍の一文字で見守っています。

そうしますと、だんだんと練習している生徒さんの集中力が高まり、どんどん良い状態になってきて、「あ~、惜しかったっ!」というところまで進んできます。

そこからまた少し時間がかかり、そして、ようやく1回完璧に弾けて、「出来た~!やったね!」となるわけです。

生徒さんもとても嬉しそうですし、喜んでいる生徒さんを見るのも、また嬉しいものです。

練習の始めには、「ここの指に気を付けて」等と伝えますが、あとは、生徒さん本人に任せて、こちらはひたすら見守るのみというのが、実は大きなポイントだと思っています。

こうして黙々と練習をして、とても苦労して、100%自分の力だけで弾けるようになりますと、その後の定着率もとても良い気がしますし、なにより「私はやれば出来る」という大きな自信にも繋がるのではないか思います。

「今日は少ししかピアノが弾けない」というお忙しい時こそ、この練習をしてみるのもよいかと思います。

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(この記事は、第175号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、今回は、大人の生徒さんのピアノレッスン復帰のお話です。

ゴールデンウィークのある日、ピアノ教室の事務所から電話がありました。

「先生、○○さんって覚えていらっしゃいますか?」

「えっ?」

だいぶ前に休会された生徒さんのお名前でしたので、とてもビックリしました。

「ええ。あ~、懐かしいですね。年賀状のやり取りはしているのですが… あの方は今頃、どうなさっているのかしら。」

「連絡がありましてね、来月から復帰されたいそうです。」

「ええ~っ!!」

思いもかけない内容の電話に、本当にビックリしました。

その後、メール連絡でレッスンの日時を決め、当日を迎えました。

この生徒さんは、一番最後の時間帯のレッスンなので、夜にいらっしゃるのですが、朝からなんとなくそわそわと落ち着かない気分になっていました。

そしてレッスンの時間が来ました。4年ぶりに生徒さんと再会です。

「いや~、あ~、先生もお変わりなく…」と、ほとんど変わらない風貌と満面の笑顔で再会を喜び合いました。

この生徒さんは、私がピアノ教室でレッスンを始めた時からの生徒さんで、これまでも、勤めておられる会社で部署が変わった時など多忙のため休会されたことがありましたが、その時も、数年後に復帰されていました。

今回は勤務地も変わり、とにかく激務ということで休会されましたので、復帰は難しいのかなと思っていました。

そのため、「まさか!」というくらい驚きの再会になりました。

「自分は田舎育ちだから、今の勤務場所が都会でおしゃれな街でしょ。もう、クラクラしちゃって。慣れないもんだね。」とおっしゃっていました。

「まだ忙しいことには変わらないんだけどね。だから、ずっとピアノの蓋も開けていなかったんだけど…。

でも、ようやく、ピアノをまたやってみようという気持ちの余裕が、ほんの少しだけど持てるようになって。そう思えるようになったのが、自分でも嬉しくてね。

いや~、でも、こうしてピアノの前にまた座れるとは。やっぱりいいねえ。ずっとやりたかったんだよね。」

お話をされている顔も、ピアノがまた弾けるという嬉しさでいっぱいの和やかな表情でした。

「本当にピアノがお好きなのだなあ」と思い、再会の喜びとともに、どんなに離れていてもピアノが好きというお気持ちに、とても感動しました。

そして、休会されていた4年間のお話に花が咲き、気が付けば、この日は、あっという間に時間が経ってしまいました。

後日レッスンが始まり、まずは、以前弾かれていた好きな曲を、もう一度弾けるようになりたいとの事で、楽譜をお持ちになりましたが、その楽譜を見て、またビックリしました。

それは、以前練習していたとき、苦労して弾いていた曲だったのです。

和音がとても多い作品で、例えば、3から5番の指にメロディーの音は動き、しかしその時、1番の指は伸ばしたままというような、一緒に弾く音の長さが異なるので、譜読みも大変ですし、正確に弾くことが、なかなか難しい曲なのです。

もちろん、その時は、最終的に弾けるようになったのですが、まさかそのような曲を、また選ぶとは思わなかったので驚きました。

今は、少しづつ思い出しながら、練習をしているところです。

長年ピアノのレッスンをしていて、嬉しく思う瞬間でした。

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(この記事は、第171号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、お子様のピアノコンクールのお話しの最終回です。(これまでのお話は、以下の記事をご覧ください)

独特の雰囲気のピアノコンクール当日(予選会)
なかなか厳しいピアノコンクール本選会

予選会、本選会と無事に通過して、いよいよ全国大会が行われました。

各地で本選会が行われたわけですが、東京はその中でも日程が最後だった事もあり、全国大会まで僅か2週間しかありませんでした。

そのため、レッスン時間を長くしたり、他の曜日でも追加のレッスンを行いました。

レッスンでは、演奏を録音して、一緒に聴きながら分析したり、曲をどのように弾いていくとよいのか資料を見たりもしました。

また、曲想を深める為に、外に出かける事もしました。

大人に比べて人生経験が少ないので、言葉ではなんとなく分かっていても、少し突っ込んだ質問をしますと、言葉が詰まってしまう事があります。

例えば、優雅な雰囲気で弾く曲の場合、本などでは「優雅な雰囲気」というものを知っていても、実際に体験した事がないので、本当には理解ができていないのです。

生徒さんのご両親の了解を頂き、外に出かけて体験をして、少しでも曲の理解が深まるようにしました。

全国大会直前には、ホールを借りて、本番さながらの雰囲気での練習もしました。

そして、いよいよ全国大会です。

早めに会場に行き、他の参加者の演奏を聴いてみましたが、とても素晴らしい演奏をしている方が何人もいて、本当に驚きました。

安定感抜群のテクニックと、少しの隙もなく、心地よく流れる音楽で軽々と弾きこなしていました。

審査員の先生方も食い入るように聴いていて、演奏後に拍手をしている先生がいた程です。

そして、自分の生徒さんの演奏ですが、少し硬さが出てしまっていました。そのためなのか、最後の方で、以前からやや不安だったところでミスが出てしまいました。

賞は頂けましたが、生徒さん本人が一番悔しそうでした。

全国大会という、本当に大きな本番に立てたというだけでも凄い事ですが、力を全て出し尽くせなかった事は、残念に感じました。

なかなか難しいものですが、生徒さんは、もう次の目標に向かってスタートしています。

私もこの経験を次に繋げて行きたいと思っています。

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