(この記事は、第155号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、公開レッスンの舞台裏のお話です。

毎年、オーディションに合格した生徒さんの公開レッスンが行われます。前回は、その公開レッスンについてお話をしましたが、今回はその裏舞台です。

公開レッスンは、生徒さんにピアノの指導をするという点では、普段のレッスンと変わりませんが、公開の場でレッスンを行うという環境以外に異なる点が多々あります。

まずは、レッスンを行う前の準備です。

公開レッスンの前には、普段レッスンを行っている先生と連絡を取り合い、普段のレッスンの様子などを伺います。

基本的に、公開レッスンの内容や進行は、そのレッスンを行う先生にお任せですし、レッスンを行う先生も、あまり先入観を持たずにレッスンを行なうべきですが、事前に打ち合わせをしておきますと、色々と心構えも出来るので、当日スムーズにレッスンを行うことができます。

例えば、普段のレッスンでも心がけている事ですが、人それぞれ性格が異なりますので、指導するにしても、理解しやすい形というものがあるのです。

自由にのびのびと弾きたいタイプの生徒さんに、あれこれ細かく注意すると、テンションがどんどん下がってしまいます。逆に、細かい指示があった方がわかりやすいタイプの生徒さんに、「全体的に、のびのびと弾きましょう」と伝えても、何を直したらよいのか困ってしまいます。

その場限りの公開レッスンでは、限られた時間内に、少しでも今の演奏をより良いものにしなければなりません。

そのため、なるべく早い段階で生徒さんと打ち解けて、伝えたい事が生徒さんにしっかりと伝わるように、言い回しなどの工夫も必要になるのです。

また、オーディション時の演奏を聴いて、レッスンでフォーカスするポイントなどについても、ある程度決めていきます。

生徒さんがまだ低年齢で、合格者のお披露目コンサートまで、あまり時間が無い場合には、これまでと大幅に弾き方を変えるような事を指示してしまうと、迷って弾けなくなってしまう可能性があります。

ダメ出しばかりでは、自信を無くしてしまうわけですが、逆に褒めるだけでは、せっかくの公開レッスンの意味が感じられなくなってしまいます。どこまで踏み込んでレッスンを行うべきか、そのバランスについては、いつも以上に気を使うところです。

実際の公開レッスンの場では、生徒さんの顔つきを見て、また雰囲気などを感じて、臨機応変に対応していきます。

そして、公開レッスンが終わりますと、普段レッスンを行っている先生と、「反省会」と称して話し合いの場を設けています。

自分が普段レッスンしている生徒さんが、他の先生のレッスンを受けてどのように変化したのか、また、他の先生のレッスンを直に見る機会はあまり無いので、レッスンの進め方や内容、指導法などについても話していきます。

ベテランの先生方とは、近年のピアノレッスンを取り巻く変化についても意見交換を行いました。電子ピアノの普及とその弊害や、習い事の多様化の影響についても話題に上がりました。

時代にあったピアノレッスンを行わなければならない一方で、その難しさに直面して悩んでいる先生も多く、自分だけではないとお互いに再認識する場でもありました。

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(この記事は、第154号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、公開レッスンのお話です。

オーディションで選ばれた生徒さんの公開レッスンが行われました。

普段私がレッスンを担当している生徒さんが、他の先生のレッスンを受け、逆に、私は、他のクラスの生徒さん数名を公開の場でレッスンします。

まずは、私の生徒さんが、公開レッスンを受けました。

前日まで塾のテスト勉強に忙しく、なかなかピアノの練習が出来なかったそうですが、頑張ってレッスンに参加していました。

レッスンの冒頭で、一曲通しで演奏してもらい、その後、個々の部分をレッスンするという展開で進んでいました。

生徒さん自身が、あまり練習出来なかったと言う通り、細かい音がくっついて音の粒が揃っていなかったり、ミスが目立つ演奏になっていました。

発表会では、わりと仕上がっていたのですが、やはり練習が減りますと、曲の完成度はどんどん落ちてくるという怖さを改めて感じました。

それでも、公開レッスンを担当された先生は、「よく弾けましたね」と褒めつつも、細かい所の部分練習のお話をされていました。

当然指摘が出るだろうと思った部分の話が出る一方で、あまり注目していなかった部分の指摘もありました。

意外な部分でのアドバイスを受けて、生徒さんが弾きますと、さらに音楽に表情が付いて、きれいに変化していきました。

私が公開レッスンをした生徒さんは、小学生と高校生でした。

さすがにオーディションで合格した生徒さん方なので、曲を弾きこなしている感じがしました。

初対面なので、生徒さんは多少緊張していたようです。

小学生の生徒さんは、普段の感じではなかったので、生徒さんのペースに合わせるというよりも、こちらのテンポに生徒さんを乗せるイメージで、レッスンを進めました。

高校生の生徒さんは、それほど緊張していないようで、質問をしても、自分の感想や意見を普段のようにお話されているようでした。

部分練習では、自分の演奏に苦笑もしていて、「私が何も言わなくても、わかっているみたいね」と言うやりとりも出ました。

生徒さんの演奏を、他の先生がどのように聴いているのか、演奏のどの部分に注目しているのか等、普段のレッスンではわかりにくい部分が見えてきて、とても勉強になりました。

今回参加された生徒さん方は、後日、オーディション合格者のお披露目コンサートが控えています。

今回の公開レッスンを参考に、さらに進化した、素晴らしい演奏が本番で聴けることを願っています。

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(この記事は、第153号のメールマガジンに掲載されたものです)

今年も、お子様のピアノ発表会が開催されました。

出演された生徒さんは、大きな本番を終えてホッとされている頃だと思います。

今回の発表会は、他の先生方の生徒さんと一緒に行いました。

発表会の会場や日時は、「くじ引き」などで事前に決めるわけですが、人気のホールとなりますと、「くじ引き」をする順番を決める「くじ引き」があるくらいで、また、土日をおさえることは難しく、平日になってしまう事も多々あるものです。

そして、お子様は夏休み期間とはいえ、旅行や塾など様々な用事と重なってしまい、この決まった発表会の日に参加することができない生徒さんが少なからず出てきます。

そのような生徒さんは、他の先生の発表会に混ぜて頂く事になるのですが、今回は、そのような形で集まった4,5人ほどの生徒さんと一緒に、発表会を行いました。

他の先生の発表会に混ぜて頂くと言っても、レッスンを行っている先生も同席されますので、出演される生徒さんにとっては、「いつもの発表会より見慣れない生徒さんが多いかな」くらいの違いしかないかもしれません。

一人で発表会を行いますと、舞台袖で演奏する生徒さんを順番に座らせたり、「大丈夫だからね」と励ましたり、演奏が終わった生徒さんを出迎えて、「良かったわよ」と感想を伝えたりしながら、アナウンスをしたり講師演奏をしたり、挨拶のスピーチをしたりと、終始バタバタしています。

しかし、今回のように他の先生もいますと、アナウンスや生徒さんの誘導なども分担作業になりますので、だいぶ楽な気持ちでいられますし、丁寧に生徒さんに対応することも出来ます。

そんな生徒さんの対応で、出番が近くなって舞台袖に来た生徒さんが、私の顔を見るなり「先生、ここの2小節忘れちゃったの・・・」と言うのです。

「ん!? どこかしら?」と楽譜を見ますと、特にチェックの入っていない箇所です。

「今日ね、朝弾いたら、ここがね、忘れちゃったの、どうしよう。忘れちゃう、忘れちゃう。」

「そうなの。この部分ね。いつもちゃんと弾いていた所だから、大丈夫、大丈夫。ちゃんと覚えているから。」

それでも、生徒さんにとっては、本番当日の朝に、急に暗譜を忘れてしまった事が相当ショックだった様です。

「おうちで弾いたとき、その後どうしたの?」

「(暗譜を忘れた)その先を弾いたよ。」

「それはよかった。レッスンでも、いつもちゃんと弾けていたから大丈夫。万が一、そうなったら、今日と同じく、飛ばしてそのまま弾いちゃってね。」

「それから、もう、忘れちゃうって言わないでね。」

そして、その生徒さんは、本番では、心配していた箇所も難なく弾き、全体的にきれいに弾いていました。

それまで、きちんと出来ていた暗譜が、ある時に忘れてしまうという事は、時々起こるものです。

また、楽譜を見て弾いていても、急に次に弾く音がわからなくなり、固まってしまうのも似たような状況ですね。

度忘れである事もありますが、厳しい見方をすると、手の運動だけで弾いてしまっていたとも言えます。頭を使って暗譜をしていなかったという事です。

特に小さい生徒さんの場合、楽譜を見て弾いているうちに、気が付いたら暗譜が出来ていたという事がありますが、これは、手の運動だけで覚えているということなのです。

意識して暗譜していないので、日常のリラックスした状況では暗譜できちんと弾けますが、緊張する場面など、いつもと違う状況では、ふと我に返って、わからなくなる事が起こります。

生徒さんが、手だけで暗譜をしていないか、今後はもう少しチェックを強化していきたいと感じた今回の発表会でした。

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