(この記事は、第125号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「ピアノ教室の出来事」は、大人の生徒さんのお話です。

この生徒さんは、早朝からアルバイトをしているお子様のために、朝5時に起きて朝食を作っている、お子様思いの生徒さんです。

いずれ生活の拠点を田舎に移したいそうで、その時に「ピアノが弾けて楽しめたらいいなぁ」という事で、レッスンにいらしています。

大人の生徒さんは、毎週通うコースと月に2回のコースがあるのですが、この生徒さんは毎週通われています。

ピアノのレッスンを始められてからずっと、とても熱心に通われているので着実に力をつけてきています。

先月頃から新しい曲にチャレンジしていて、これまでとは違ったタイプの、リズム感に特徴のある曲を練習しています。

しかも、「どこかで聴いたことがあるかしら!?」というくらいの、とても有名な曲とまでは言えないタイプの曲です。

ドレミのように音符を読んで並べていくと、なんとなく弾けてしまうような曲ではなく、リズムに特徴のある曲を練習する場合、音そのものは読めても、リズムがわからないとあまり音楽にならないものです。

生徒さん自身が楽譜を見て正しいリズムで弾く事は、なかなか難しい事が多いので、レッスンでは、説明しながら私が実際にお手本を示して、それを真似して弾いていただいています。

そして、レッスンでリズムを覚えて、ご自宅で何回も弾いて慣れていくという進め方をしています。

両手でなんとか弾けるようになってきた時、なんだか浮かない顔をしてレッスンにいらっしゃいました。

「どうしたのかなぁ」と思っていると、先週のレッスンが終わってから、とても落ち込んでしまったと話し始めました。

お話を聞いてみますと、頭では分かっていても、指が付いていかなくて、自分が思ったように弾けないと言うのです。もうピアノをやめようかという所まで、本当に落ち込んでしまったのだそうです。

それを見たお子様が、「前よりも上手になっているよ!」と励ましてくれたそうで、一昨日くらいから、気分を少し持ち直してきているとお話されました。

また、今練習している曲は、曲の解説部分に明るい曲と書かれているので、「もっと楽しく弾けばいいんじゃないか」と思ったら、少し気分も楽になったともおっしゃっていました。

この生徒さんには、同じようなお話をされる生徒さんが大勢いて、よくある事だということと、音楽には、わりとすんなり弾ける曲もあれば、弾けるようになるまでに時間がかかる曲もあるという事をお話しました。

また、初心者や上級者などの演奏レベルに関わらず、ある程度弾けるようになっても「なんだかしっくりこない」という時もあります。

それでも弾いていくと、ある日突然「あっ! こういう曲なんだ」とひらめくような、ピタッと感覚が合うような瞬間がありますので、その時を楽しみに、また励みに出来たらいいですねともお話しました。

この生徒さんのように、とてもコツコツと練習をされている大人の生徒さんの中には、とても生真面目なために、自分の思うように弾けないことが、とてもストレスになってしまう方もいらっしゃいます

しかし、「練習がストレスになっている状況でいたら、少し練習をお休みして、気分を変えてみましょう」と提案しますと、練習していない事が負担になってしまい、逆にストレスを強くしてしまう事もあるのです。

せっかく、楽しみとしてピアノを始めているのに、気持ちの負担になってしまうのは、もったいない事だと思います。

ご自分の気持ちと上手に向き合って、より良い状態で楽しくピアノが弾けるような工夫と、周囲のサポートが大切なのだと改めて感じました。

ちなみに、この生徒さんは、お子様の声掛けも効果的でしたが、自分自身でも、気持ちを切り替えて、立て直せたので、曲も満足のいく仕上がりとなり、めでたく曲が終了して、大きな壁を乗り越えることができました。

これからも、生徒さんの気持ちの変化や状況を見極めて、よりピアノを楽しく弾けるお手伝いをしていきたいと思っています。

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(この記事は、第121号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「ピアノ教室の出来事」は、大人の生徒さんのお話です。

この生徒さんは、子供の頃にピアノを少し習っていたそうですが、長い長いブランクの後に再開された生徒さんです。

「60の手習い」という言葉がありますが、定年を機にピアノ教室に通われる生徒さんを何人も見てきました。そして、自分も同じ歳になった時、同じように新しい事にチャレンジする勇気が湧くのだろうかと、感心することもあります。

しかし、この生徒さんは、もっともっと上を行っており、なんと75歳でピアノ教室に通い始めました。感心というよりも、脱帽と言った方がピッタリかもしれません。

毎回レッスンの度におしゃれをされていて、お洋服に合わせたアクセサリーも欠かさないなど美意識が高い方です。先日は、胸元に素敵なブローチを付けていらっしゃいました。

「今日は、素敵なブローチを付けていらっしゃいますね。」と声をかけますと、

「そうなの、孫がね、くれたのよ。ちょっとかわいいでしょ。」

「ヨークシャーテリアの形ですよね。キラキラのラインストーンもついて、サイズもちょうど良いですね。お孫さんの旅行のお土産とかなのですか。」

「ニューヨークから帰ってきた時に、はい、おばあちゃん、お土産ってくれて。こんなつまらないものだけど、でもちょっとステキでしょ。」

口では、つまらないものとおっしゃっていましたが、表情は笑顔で、とても嬉しそうでした。

ピアノのレッスンは、大人用の教材を使用していますが、昨年からは曲集なども併用していて、現在はベートーヴェンの「エリーゼのために」を練習しています。

毎日練習をしているそうですが、先月あたりからだいぶ弾けるようになってきました。

とても好きで、弾いてみたい曲の一つだったようで、毎日楽しく練習をされている様です。

最近では、レッスンの度に、「ピアノを始めて3年で、エリーゼのためにが弾けるようになって。私ね、本当に嬉しいの。先生のおかげよ、ありがとうね。」と、手を差し出して握手をなさいます。

ピアノのレッスンを担当する立場からしますと、「もっと○○をしたい」とか、今日はここを直して次はこちらを直してなど、常に先の事や、よりレベルの高い事を目指してしまいがちです。

ピアノのレッスンは、より素晴らしい演奏を目指すという目的もあるので、そのようになってしまうのですが、しかし、ここまで出来るようになったという過程を楽しむ面も忘れてはいけないのでしょう。

「自分にとって、この曲はまだ難しいかなぁ」という不安な気持ちを抱えながら新しい曲の譜読みを始め、悪戦苦闘しながら練習を積み、一通り弾けるようになった時の喜びは、とても大きいものです。

今、この生徒さんがその嬉しさを感じているのかと思うと、同じ感覚を数知れず経験してきた私も、同じ思いを共有できて、とても嬉しく思いました。

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(この記事は、第120号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「ピアノ教室の出来事」は、生徒さんの親御さんのお話です。

ピアノのレッスンに通われる生徒さんの中で、小学校低学年くらいまでは、お母様やお婆様がレッスンに付き添う事が多くなります。

レッスンを受ける生徒さんの後ろで熱心に見学されていて、レッスンが終わりますと、宿題の成果やレッスン内容の確認、次の宿題の範囲や注意事項などをお伝えしています。

ただ、レッスンの時間枠が詰まっているため、かなり手短にお伝えして終わってしまうことになり、慌ただしくて申し訳ないと思っています。

そして、生徒さんが小学校の高学年くらいになりますと、1人でレッスンに来ますので、親御さんとの連絡は、ノートやお手紙、電話などになり、ますます必要最低限のお話だけになってしまいます。

そうした中、先日、小学生の生徒さんの親御さんと面談する機会を設けました。

レッスンの時間とは別枠で行ったのですが、快くお時間を作って頂けました。

今回面談したお母様は、昨年まで、お子様のレッスンの送り迎えをされていたので、お話をする機会が比較的多い親御さんです。それでも、改めて時間を設けて面談を行いますと、これまで感じていたことを細かくお伝えできましたし、どの程度伝わっているのかも確認する事が出来ました。

また、レッスンの前後に少しお話をする際には、私の方から一方的に伝達する事が多くなってしまい、なかなか親御さんのお話を伺うことが出来なかったように思います。今回の面談では、親御さんのお話をじっくり聴くことができたのも、大きな収穫でした。

この生徒さんは、毎回宿題もしっかりやってきますし、教材の進度やペースも問題ないと私は理解していました。

しかし、面談でお母様にお話を伺いますと、学校行事でピアノ伴奏の話が出た時に、本当は立候補したかったそうですが、自分よりももっと先の教材を使用しているお友達が次々と手を上げて、思わず躊躇してしまい手を上げられなかったというのです。

お母様は、「そういうことは、人と比べる事じゃないのよ。」とお話されたそうで、本人も納得したとの事でした。

昨年は、発表会以外にも、オーディションに合格して大きな舞台で演奏する機会を何回も体験し、大きく成長した生徒さんですが、教材をもう少し早めのペースで進めたり、もっと多くの場で演奏する機会を作って、自信を付けさせてあげることが必要なのだと感じました。

ピアノのお教室は、レッスンが一番大切ですが、生徒さんの親御さんとのコミュニケーションもとても大切になります。

レッスンの時間との兼ね合いや、生徒さんの親御さんもお忙しいので、なかなか時間を合わせることが難しいのですが、今後もコミュニケーションを大切にしていきたいと改めて感じました。

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