(この記事は、第131号のメールマガジンに掲載されたものです)
前回の「ピアノ教室の出来事」は、オーディションに合格した生徒さんの公開レッスンについてお話しましたが、今回はその続きになります。
一般的に公開レッスンは、音楽祭などのイベントや、教える先生の来日に合わせて開催されますので、公開レッスンを受講した後、コンサートなどで弾くことは少ないと思いますが、今回は、今月下旬に開催される合格者コンサートが控えているため、生徒さんは、公開レッスンが終わった後も、同じ曲の練習を続けています。
オーディションに合格するため何ヶ月も猛練習を行い、合格後も公開レッスンに向けて更に練習をして、それが終わると、コンサートに向けてラストスパートをかけて練習をする事になります。
高校生・大学生くらいになりますと、相当難しい曲を弾きますので、昨年から練習を始めている方もいると思います。そのため場合によっては、1年近く同じ曲を練習することになる生徒さんもいると思います。
オーディションは、小学校入学前の生徒さんも参加しますが、年齢の低い生徒さんは飽きてしまう事もあり、合格後のモチベーションの維持が大変になってきます。
せっかく好きな曲を選んで弾いて合格しても、一番重要な本番のコンサートの時に飽き飽きしながら弾いているのは、もったいないことですし、ご本人も楽しくないと思います。ご家族も、聴いている方も、そのような演奏ではがっかりという事にもなりかねません。
公開レッスンという、いつもと違うレッスンがオーディションと本番の間にあることで、よい刺激になりモチベーション維持にも一役買っていると言えます。
先日は、公開レッスン後初めてのレッスンがありました。
今回初めてオーディションにチャレンジして合格した小学校1年生の生徒さんに、「この前の公開レッスン、頑張ったよね。どうだった?」と聞きますと、ニコッと笑顔で、「楽しかった!」と答えてくれました。
偶然にも、以前何回も見かけた事のある先生だったので、あまり緊張せずに参加できたようです。
レッスンで「楽しかった」と答えられる無邪気さや純粋さは、小さい生徒さんならではという感じがして、とてもかわいらしく感じました。
小学校高学年の生徒さんは、「先生と全然違うけれど、細かく練習方法とか教えてくれて、なるほどって思った」と、感想も具体的になっていました。
「そうよね。色々な先生が、色々なお話をして、色々な事を教えてくれるから、ビックリしたりする事もあるかもしれないけど、上手になってほしいという気持ちは一緒だからね。
まずは色々と試してみて、そして最期にどのように弾くか、どう弾くと一番自分の思ったような音楽になるか、一番素敵になるかは、自分で決められるといいね。そうすると、○○ちゃんの音楽になるからね」とお話しをしました。
また、「お客さんは、プログラムを見て、この曲ってどんな曲?というよりも、この曲を○○ちゃんが弾いたら、どんな曲になるのかなというのを、楽しみに来てくれているんだからね」ともお話をしました。
音楽は、色々な解釈があったり、色々な演奏の仕方があるので、習う先生によって感想やアドバイスが異なり、場合によっては真逆とも思える事を言われる事もあります。
そのため、時には混乱したり、迷う事もある訳ですが、多角的に曲を見ることで、新たな解釈が生まれたり、これまでとは違った弾き方のほうがより良い音楽になったりする事もあるのです。
色々と試したり、考えて、最終的に一つに決めていくという事は、とても大変な作業になりますが、しかし、それが自分の音楽を作っていく楽しさとも言えます。
本番で楽しく曲が弾けるように、モチベーション維持にも気を配りつつ、小学生でも、自分の音楽が演奏できるように導けたらと思います。
(この記事は、第130号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「ピアノ教室の出来事」は、お子様の公開レッスンのお話です。
お子様のピアノの個人レッスンは、通常一人の先生が担当になり、毎週レッスンを行う形式がほとんどだと思います。そして、引越しでの退会や、進学や塾などでレッスンの時間や曜日が合わなくなった場合、ピアノの先生が何らかの都合で辞める場合を除けば、基本的にずっと同じ先生からレッスンは受けることになります。
そのため、保育園・幼稚園生からピアノを習い始めた生徒さんが、気が付いたら中学生になっていたり、小学生だった生徒さんが大学を卒業されて社会人になったり、その後結婚されてお子様が生まれたという事もあります。
学校の先生よりも生徒さんとのお付き合いが長くなる事が多く、生徒さんの成長ぶりを、ずっと近くで見られる事は、ピアノ講師の醍醐味と言っても過言ではありません。
生徒さんの立場に立ってみますと、ずっと同じ先生にピアノを習う事は、信頼関係も深まり、安心してレッスンが受けられるメリットがあると思います。自分のペースを理解してもらえて、レッスンの進み具合も調整してもらえたり、毎週同じようにレッスンを受けますので、緊張する事も少ないかもしれません。
しかし、先日、オーディションに合格した生徒さんの公開レッスンがありました。
この公開レッスンでは、普段私がレッスンを担当している生徒さんが他の先生のレッスンを受け、他の先生が担当している生徒さんのレッスンを私が行います。
自分の生徒さんがレッスンを受けている場面を客観的に見るのは、ちょっと不思議な感じもしますが、どんな表情で、どんな様子でレッスンを受けているのかがわかり、とても良い機会でした。
先生が変わっても、生徒さんの素晴らしい面を引き出し、魅力ある演奏になってほしいという思いは同じなわけですが、どこから手を付けるのかという優先順位の考え方や、アプローチの仕方、どこまで出来て OK とするのかなど、やり方や基準は千差万別です。
また、同じ様な進め方でも、言葉の選び方や説明の仕方は様々で、教える立場からしますと、「なるほど、そういう説明の仕方もあるな」「こういう練習の方法を教えてあげるのは、とてもいいな」など勉強になることも多々あります。
そして、レッスンの中で上達していく生徒さんの姿が見えるので、嬉しい気分にもなります。
生徒さんも、最初はいつもと違う先生のレッスンに緊張していましたが、だんだん慣れて笑顔になり、自分の意見が言えるようにもなっていました。
普段とは雰囲気が違うレッスンですが、普段のレッスンと同じ箇所を別の先生から指摘されると「やはり、気を付けた方がいいな」と思えたり、これまで意識しなかった箇所を指摘されると、「そのような捉え方もあるんだな」と新たな発見があり、とてもよい刺激になったのではないかと思います。
他の先生の生徒さんをレッスンする際は、初めは多少落ち着かない気分にもなりますが、レッスンに入りますと、普段のレッスンと同じような雰囲気で進めることが出来ました。
初対面なので、どのような性格の生徒さんなのか、どのような説明の仕方だと納得してもらえるのかなど、考えながら、また生徒さんの表情を見てチェックしながら進めていきます。
限られた時間ではありますが、少しでも上達のヒントを掴んでもらえればと思いました。
今度は、公開レッスンで指摘された内容を普段のレッスンの中で消化して行けるようにフォローしながら、合格者コンサートに臨めるようにしたいと思っています。
(この記事は、第129号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「ピアノ教室の出来事」は、お子様の夏の発表会の結果についてお話します。
お子様の夏の発表会は、毎回 自分の生徒さんだけで単独で行ってきましたが、今回は他の先生と合同で行いました。
発表会の本番を迎えるまでには、生徒さんが演奏する曲を決めて、そのレッスンを行うわけですが、それ以外にも様々な作業が必要になります。
例えば、生徒さんの演奏する順番を決めたり、プログラムの原稿を用意して、出来上がった原稿の校正もします。発表会当日は、各生徒さんが演奏する前に、生徒さん自身が書いたコメントを読み上げるのですが、その原稿を生徒さんから頂いて目を通してアナウンスのイメージを掴むようにもします。そして、私自身も講師演奏をしますので、自分が弾く曲目を決めて練習をします。
共同開催ですと、作業を分担できるので負担が軽減されるように思えますが、実際には作業が増えることの方が多いのです。
例えば、演奏する順番にしても、基本的には年齢順にしていますが、同年齢(同学年)の生徒さんが複数人いることが多いので、私一人で開催する場合には、お教室に入会した順などで決めています。しかし、他の先生と共同開催の場合には、そのようにはいかずご相談となります。
また、年齢だけでなく、演奏曲目や曲の雰囲気がぶつからないように配慮しながら演奏順を決めていきますので、この作業だけでも時間がかかります。
プログラムの構成や記述についても、生徒さんの名前と曲目だけという定番の形式もありますが、曲のジャンルなどからテーマを決めて、それらを書き込むなど様々が形式が考えられますので、その調整を行います。
講師演奏も、それぞれがソロで弾くのか連弾にするのか、またソロの場合には、作曲者や曲の雰囲気が被らないようにする必要があります。
当日の衣装も、ゴージャスなドレスを着る先生もいれば、カジュアルな装いの先生もいます。あまりにバラバラにならないようにしつつ、似た色合いにならないようにすることも必要です。
そして、発表会当日の進め方も、先生によって大きく異なります。
これらの擦り合わせをしていくことになりますが、普段のレッスン会場が異なる先生ですと直接お会いする機会はなく、すべてのやり取りをメールと一部電話で行うことになります。
そのため、なかなか大変でしたが、発表会の進め方などで面白いアイディアが出てきたり、当日は他の生徒さんの演奏も聴けたりと、いつもとはまた違った有意義な発表会となりました。
私の生徒さん方ですが、今年は難しい曲を選んだ生徒さん方もいましたが、全員とても良い状態で本番を迎えられました。
しかし、何が起こるかわからないのが発表会です。
難しい曲をコツコツと地道に練習してきた生徒さんは、これまでピアノ教室全体の代表として、大きなホールで演奏をした経験もある方ですが、今回は、レッスンで一回も間違えたことの無い箇所でミスをしていまい、それをきっかけに、少しペースを乱してしまいました。それでも後半は、いつものような演奏が出来たので、立て直せたのは良かったと思います。
その一方で、普段のレッスンでは音階部分のテンポが不安定だったり、暗譜が一部曖昧になっていた生徒さんは、小さいながらも堂々とした姿で、普段以上の力を発揮していました。
これまで何回も発表会を行ってきましたが、本番で全員が満足できる演奏というのは、なかなか難しいものだと改めて感じました。
それでもまた来年は、生徒さん全員が満足する演奏ができることを目指していきたいと思います。
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