(この記事は、第128号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「ピアノ教室の出来事」は、お子様の夏の発表会のお話です。

7月も半ばを過ぎ、毎年恒例となっている お子様の発表会が直前に迫ってきました。どの曜日の生徒さんも、あと1回レッスンを行うと、次は発表会本番を迎えることになります。

7月に入ってからは、レッスンの度に挨拶もそこそこに、「ちょっとカレンダーを見てくれるかな? 今日は何月何日かしら?」と聞いています。

「7月○日」と生徒さんが答えますと、

「そうよね、今日はここよね。あと○回レッスンをしたら、もう発表会だからね」とお話して、本番までのレッスン回数と、残りの日数を意識しやすくしています。

レッスンで色々な年代の生徒さんと接していますと、お子様と大人とでは、時間の経過の感じ方が違うような気がしています。

お子様は、大人に比べて、1日の時間を長く感じているようなのです。

例えば、「この前ね・・・」と話し始めた時、お子様の場合は、昨日の事だったり、数日前の事を指しているのですが、大人の生徒さんが同じ言葉で話し始めますと、それは1か月前の事だったりするのです。

発表会までの日にちについても、大人の生徒さんは、「あと1ヶ月しかない」と残り時間が短いことを意識しますが、お子様の生徒さんは、発表会が開催される7月に入っても、あまりピンときていない事があり、「本番っていつだっけ?」と言われて、私の方がビックリしてしまうこともありました。

プレッシャーをかけるとか、焦らせる訳ではないのですが、本番までの時間を意識して、残りの時間で、どれだけ曲の完成度を上げられるのかという事も、人前でピアノを弾く時に必要な力ですし、大切な経験になると思っています。

今年は、先日のレッスンで「暗譜で弾いてみましょうね」とお話をしたら、「本番って暗譜なの?」という答えが返ってきて、ドキッとしたことがありました。

しかし、その小学校1年生の生徒さんも、次の週には完璧に暗譜をしてきました。

中学生の生徒さんは、「暗譜の練習はどうかしら?」と聞くと「もう全部出来た~」と元気よく答えてくれました。

小学校高学年から中学生くらいになりますと、私がお話をしなくても、自主的に暗譜の練習もしてきてくれる生徒さんが殆どです。

何回も本番を経験していますと、練習の進め方も理解していますし、次は何をすればよいのか、わかっているので、自主的に練習の計画も立てられるようです。

先週からは、発表会のプログラムも配り始めました。プログラムを見ますと、いよいよ本番が近づいてきたという実感が湧きますし、今年は何番目に弾くのかとか、他の人はどんな曲を弾くのか見ることも楽しみのようです。

いよいよ本番まで、残り1回のレッスンですが、生徒さんの力を最大限に引き出し、本番でその力を発揮できるようなレッスンができればと思っています。

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(この記事は、第125号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「ピアノ教室の出来事」は、大人の生徒さんのお話です。

この生徒さんは、早朝からアルバイトをしているお子様のために、朝5時に起きて朝食を作っている、お子様思いの生徒さんです。

いずれ生活の拠点を田舎に移したいそうで、その時に「ピアノが弾けて楽しめたらいいなぁ」という事で、レッスンにいらしています。

大人の生徒さんは、毎週通うコースと月に2回のコースがあるのですが、この生徒さんは毎週通われています。

ピアノのレッスンを始められてからずっと、とても熱心に通われているので着実に力をつけてきています。

先月頃から新しい曲にチャレンジしていて、これまでとは違ったタイプの、リズム感に特徴のある曲を練習しています。

しかも、「どこかで聴いたことがあるかしら!?」というくらいの、とても有名な曲とまでは言えないタイプの曲です。

ドレミのように音符を読んで並べていくと、なんとなく弾けてしまうような曲ではなく、リズムに特徴のある曲を練習する場合、音そのものは読めても、リズムがわからないとあまり音楽にならないものです。

生徒さん自身が楽譜を見て正しいリズムで弾く事は、なかなか難しい事が多いので、レッスンでは、説明しながら私が実際にお手本を示して、それを真似して弾いていただいています。

そして、レッスンでリズムを覚えて、ご自宅で何回も弾いて慣れていくという進め方をしています。

両手でなんとか弾けるようになってきた時、なんだか浮かない顔をしてレッスンにいらっしゃいました。

「どうしたのかなぁ」と思っていると、先週のレッスンが終わってから、とても落ち込んでしまったと話し始めました。

お話を聞いてみますと、頭では分かっていても、指が付いていかなくて、自分が思ったように弾けないと言うのです。もうピアノをやめようかという所まで、本当に落ち込んでしまったのだそうです。

それを見たお子様が、「前よりも上手になっているよ!」と励ましてくれたそうで、一昨日くらいから、気分を少し持ち直してきているとお話されました。

また、今練習している曲は、曲の解説部分に明るい曲と書かれているので、「もっと楽しく弾けばいいんじゃないか」と思ったら、少し気分も楽になったともおっしゃっていました。

この生徒さんには、同じようなお話をされる生徒さんが大勢いて、よくある事だということと、音楽には、わりとすんなり弾ける曲もあれば、弾けるようになるまでに時間がかかる曲もあるという事をお話しました。

また、初心者や上級者などの演奏レベルに関わらず、ある程度弾けるようになっても「なんだかしっくりこない」という時もあります。

それでも弾いていくと、ある日突然「あっ! こういう曲なんだ」とひらめくような、ピタッと感覚が合うような瞬間がありますので、その時を楽しみに、また励みに出来たらいいですねともお話しました。

この生徒さんのように、とてもコツコツと練習をされている大人の生徒さんの中には、とても生真面目なために、自分の思うように弾けないことが、とてもストレスになってしまう方もいらっしゃいます

しかし、「練習がストレスになっている状況でいたら、少し練習をお休みして、気分を変えてみましょう」と提案しますと、練習していない事が負担になってしまい、逆にストレスを強くしてしまう事もあるのです。

せっかく、楽しみとしてピアノを始めているのに、気持ちの負担になってしまうのは、もったいない事だと思います。

ご自分の気持ちと上手に向き合って、より良い状態で楽しくピアノが弾けるような工夫と、周囲のサポートが大切なのだと改めて感じました。

ちなみに、この生徒さんは、お子様の声掛けも効果的でしたが、自分自身でも、気持ちを切り替えて、立て直せたので、曲も満足のいく仕上がりとなり、めでたく曲が終了して、大きな壁を乗り越えることができました。

これからも、生徒さんの気持ちの変化や状況を見極めて、よりピアノを楽しく弾けるお手伝いをしていきたいと思っています。

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(この記事は、第121号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「ピアノ教室の出来事」は、大人の生徒さんのお話です。

この生徒さんは、子供の頃にピアノを少し習っていたそうですが、長い長いブランクの後に再開された生徒さんです。

「60の手習い」という言葉がありますが、定年を機にピアノ教室に通われる生徒さんを何人も見てきました。そして、自分も同じ歳になった時、同じように新しい事にチャレンジする勇気が湧くのだろうかと、感心することもあります。

しかし、この生徒さんは、もっともっと上を行っており、なんと75歳でピアノ教室に通い始めました。感心というよりも、脱帽と言った方がピッタリかもしれません。

毎回レッスンの度におしゃれをされていて、お洋服に合わせたアクセサリーも欠かさないなど美意識が高い方です。先日は、胸元に素敵なブローチを付けていらっしゃいました。

「今日は、素敵なブローチを付けていらっしゃいますね。」と声をかけますと、

「そうなの、孫がね、くれたのよ。ちょっとかわいいでしょ。」

「ヨークシャーテリアの形ですよね。キラキラのラインストーンもついて、サイズもちょうど良いですね。お孫さんの旅行のお土産とかなのですか。」

「ニューヨークから帰ってきた時に、はい、おばあちゃん、お土産ってくれて。こんなつまらないものだけど、でもちょっとステキでしょ。」

口では、つまらないものとおっしゃっていましたが、表情は笑顔で、とても嬉しそうでした。

ピアノのレッスンは、大人用の教材を使用していますが、昨年からは曲集なども併用していて、現在はベートーヴェンの「エリーゼのために」を練習しています。

毎日練習をしているそうですが、先月あたりからだいぶ弾けるようになってきました。

とても好きで、弾いてみたい曲の一つだったようで、毎日楽しく練習をされている様です。

最近では、レッスンの度に、「ピアノを始めて3年で、エリーゼのためにが弾けるようになって。私ね、本当に嬉しいの。先生のおかげよ、ありがとうね。」と、手を差し出して握手をなさいます。

ピアノのレッスンを担当する立場からしますと、「もっと○○をしたい」とか、今日はここを直して次はこちらを直してなど、常に先の事や、よりレベルの高い事を目指してしまいがちです。

ピアノのレッスンは、より素晴らしい演奏を目指すという目的もあるので、そのようになってしまうのですが、しかし、ここまで出来るようになったという過程を楽しむ面も忘れてはいけないのでしょう。

「自分にとって、この曲はまだ難しいかなぁ」という不安な気持ちを抱えながら新しい曲の譜読みを始め、悪戦苦闘しながら練習を積み、一通り弾けるようになった時の喜びは、とても大きいものです。

今、この生徒さんがその嬉しさを感じているのかと思うと、同じ感覚を数知れず経験してきた私も、同じ思いを共有できて、とても嬉しく思いました。

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