(この記事は、第100号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「ピアノ教室の出来事」は、お子様の生徒さんのお話です。
この生徒さんは、小学校入学と同時にピアノのレッスンに通い始め、もう数年が経っています。
3歳違いの弟さんがいて、いつも「○君がね、○君がね・・・」と弟さんのお話をしている仲の良い姉弟です。
教室に通い始めの頃は、誰でも多少なりとも緊張するものですが、しばらくするとレッスンを担当する講師との関係にも慣れて、段々と緊張がほぐれてきます。
そうしますと、レッスンの合間に、ピアノ以外の色々なお話をしてくれるようになります。この生徒さんも、初めは大人しい感じでしたが、慣れてきますとむしろお話好きな一面も覗かせていました。
学校生活もとても楽しく充実しているようで、毎回レッスンのたびに「今日ね、学校でね・・・」と話が始まります。
色々なことをお話してくれるのは、生徒さんとの関係も深まりますし、時にはちょっとしたアドヴァイスなども出来るので、とても良い事だと思います。
しかし、レッスンする曲目が多かったり、今の時期のように発表会やコンクールなどの本番前ともなりますと、1分でも長くレッスンをして、上手になってほしいと思うこともあり、内心葛藤している状況なのです。
そのため、少しかわいそうとは思いつつ、「じゃあ、先にこれを弾いて終わらせましょうよ。そのあとに、今のお話の続きを聞かせてね」と言ってレッスンを進めています。
昨年までは、お母様がレッスンに付き添って、お子様のレッスンの様子を熱心に見学されていました。お母様も少しピアノがお弾きになれるようで、自宅での練習も積極的にお手伝いされている様でした。
そのためか、ピアノのレッスンを始めた当初から、コンスタントに教材が進んでいて、着々と力を付けてきています。
ピアノが上手な生徒さんといいますと、元々とても器用だったり、要領がよく、すぐに新しいことを把握できるタイプの方ばかりと思われがちですが、実はそのような方はかなり少ないのではないかと思います。
この生徒さんも、どちらかと言うとコツコツと練習を続けることで、着実に力を付けてきているタイプです。同じようなタイプの生徒さんは、他にも結構います。
レッスンをするたびに、コツコツ努力をすることの大切さを改めて感じさせられます。
先日も、発表会の曲をレッスンしていましたが、同じフレーズが連続して何回も出てきて、しかも途中で音の高さが急に変わるという、ややこしい部分の練習をしました。
「このフレーズが5回出てきたら、音の高さが変わるから気を付けてね」とお話をして、一緒に練習をしたのですが、なかなか掴めない様子でした。
譜読みの段階では、同じフレーズが連続して出てくるのは、とても簡単で楽なのですが、曲に慣れてきますと、それがかえって紛らわしく暗譜しにくい状況になります。
正しく弾けたのかどうかという判断も、始めの頃はなかなかできなかったのですが、同じ個所を何回も何回も練習することで、正しく弾けるかは別としても、今弾いたものが正しいのかどうかという判断は出来るようになってきました。
ピアノだけでなく、練習は出来ない所を出来るようにするものなので、どうしても同じ箇所をしつこく反復する作業が必要不可欠になってきます。
大人でも辛い事ですから、お子様にとっても大変な事です。ムッとした不機嫌な顔をしたり、「はあ~」「もう~」と自分にイライラしながら練習することもあると思います。
しかし、この生徒さんはそのような表情や態度を一切せず、黙々と練習を行い、レッスン時間内にある程度掴めてきました。
なかなか大変な練習をした後なのに、レッスン後に満面の笑顔で「どんどん上手になるから、練習って楽しい」と無邪気に話していたのが、とても印象に残りました。
努力は辛いもの、それを克服することで上達すると思っていましたが、この生徒さんのように、努力自体が楽しい事と思うことができたら・・・と、身に染みて考えさせられた瞬間でもありました。
(この記事は、第98号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「ピアノ教室の出来事」は、お子様のピアノ発表会の曲選びについてお話いたします。
夏に開催されるお子様のピアノ発表会まで、あと3か月になりました。
まだ年齢が小さい生徒さんや、ピアノ教室に通われて日が浅い生徒さんは、新しいことをどんどん吸収している最中ですので、発表会の準備には入っていませんが、その他の生徒さんとは、発表会で弾く曲についてお話をしています。
中高生は、いつも発表会で弾きたい曲がある方が殆どですので、候補の曲の中から1曲に絞るアドバイスをするくらいなのですが、小学生や保育園・幼稚園生となりますと、なかなかご自身で弾きたい曲を具体的に挙げることは難しく、私の方でいくつか曲をご紹介しながら一緒に決めていく事が多くなります。
発表会は、ピアノ教室にとって一番大きく大切なイベントですが、当日よりもそれまでの過程の方が大変なのです。それは、出演される生徒さんも、同じだと思いますが。
曲を仕上げるための日々のレッスンだけではなく、その前段階である曲目選びには、実はかなりのパワーを使います。
所有している楽譜を眺めたり、実際に弾いてみて新しい曲を探すだけではなく、毎年同じような曲にならないように、1年中常に新しい曲を探す必要があります。例えば、他のクラスの発表会のプログラムを見たり、コンクールやオーディションのプログラムを見てチェックしたり、時間があるときには楽譜売り場に足を運びます。
こうして集めた曲を、それぞれの生徒さんが、これまでに発表会で弾いた曲目と照らし合わせて、同じ作曲家や似たような雰囲気の曲にならないようにご紹介していきます。
これは中高生にも共通することなのですが、好きな作曲家や好きな雰囲気の曲だけを重視して曲を選んでしまいますと、曲目がかなり偏ってしまう事があります。
「ショパンが好きなので、ショパンを弾きたい」というのも、もちろん1つの選び方ではありますが、お子様の場合は特に、色々な作曲家の色々なスタイルの曲を弾く事で、幅広く音楽を知り、色々なテクニックを学ぶことにも繋がります。
これまで弾いたことがなかった作曲家の作品を弾くことで、良い意味で好みが変化していく事もありますし、想像以上に生徒さんの持ち味が表現できる事もあるのです。
そのようなことを考えながら、一人一人の生徒さんに発表会の曲をご紹介しています。
発表会の曲選びの時期には、毎日何冊も教材を抱えて教室へ行き、弾きながら曲をご紹介しています。
最近は即決せずに、お家へ持ち帰り、ご家族と相談するケースも増えてきています。
そのため CD などをお貸しすることもありますが、YouTube などインターネットを利用してご家族で聴くという方も増えてきました。インターネットでは、音質が多少劣る場合もありますが、同じ曲を様々な方が弾いていますので、参考になることも多いようです。
また、これまでお母様に相談して曲を決めるという事はありましたが、最近はお母様だけではなく、お父様も積極的にお子様の曲選びに関わっているようです。
先日も、レッスンに同席していたお母様が、「ここで決めても、後で主人がなんと言うかわからないので、1回持ち帰って相談してから決めたい」とお話されていました。
お子様にとっても、発表会は大きなイベントですので、ご家族全員が曲目選びから関われるのは、レッスンを担当する身としても嬉しい事です。
(この記事は、第97号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「ピアノ教室の出来事」は、小学生のピアノコンクールのお話です。
先日、生徒さんがピアノコンクールにチャレンジしました。ピアノ教室に入られた時から、教材が驚異的な進み方をしていて、ピアノが好きという気持ちもとても強い生徒さんです。
発表会で中高生の演奏を聴いてはいますが、レベルの高い演奏が出来る同世代のお子様たちから良い刺激を受けることができれば、もっと成長できて、良い経験になるのではないかと思いコンクールをご紹介したのです。
今回参加したコンクールは、地方予選、地方本選、全国大会と3段階になっており、一定以上の点数を獲得できると、次のステップへ進むことができます。
本番ではいつも落ち着いた雰囲気で、割と普段通りに演奏ができる生徒さんなので、予選ではかなり良い感じに演奏が出来ていました。初めてのコンクール参加とは思えない落ち着きぶりに驚いたくらいです。
しかし、次のステップとなる地方本選では、出だしでミスが出てしまい、その後も「あれっ!?」という部分がある演奏になってしまいました。
後になって生徒さんに聴いたところ、これまでに体験したことのない緊張感だったそうで、足が震えたと話していました。いつも、それほど緊張しないタイプだと思いますが、さすがにそうはいかなかったようです。
それでも後の講評を見ますと、これまでかなり練習を積んで弾き込んできた事が評価されていました。
そして、目標であった全国大会へ進むことができたのです。
全国大会は、これまでの点数が加算される訳ではないので、その日のたった1回の演奏で全てが決まります。どれだけ実力を出し切れるかという、自分との戦いになるのです。
全国大会の前に、生徒さんにこんなお話をしました。
「本選の時に、自分で演奏の出来が10点満点の6点って言ってたよね。今度は10点満点で10点になるように、全部出し尽くして、楽しく弾いてね!」
そして、全国大会の本番では、普段の力をかなり出せた演奏ができました。
生徒さんも笑顔で舞台裏に戻ってきたので、「上出来!! とっても素晴らしい演奏だったわよ。よく弾けたわね!」と声をかけました。そして、良い結果をいただけたのです。
生徒さんの出番前までは客席で聴いていたのですが、さすがに全国大会ともなりますと地方本選を勝ち抜いてきただけあって、上手な方が多かったですね。
「小学生でこれだけ弾けたらスゴイ!」という方ばかりでした。
コンクールやオーディションは、演奏に対して合否を付けるので、常に賛否両論があります。私も個人的には、一生懸命頑張って演奏したものに、合否や点数を付けることには、かなりの違和感を持っていました。
しかし以前、先輩の先生から「結果はともかく、参加して成長できる生徒さんもいる」という話を聞いて、少し柔軟な考えを持つようになりました。今回コンクールを紹介した生徒さんは、正にそのタイプに当てはまるのではないかと思ったのです。
今回は、努力が報われる結果となりましたが、そうでない結果となることもあります。そのような時には、ピアノ講師のフォローと共に、ご家族のフォローもとても大切になります。
今回も、そのようなお話を事前にして、ご両親と生徒さんで考えた上で参加することになりましたが、落ち込んだ後に潰れてしまいそうなデリケートな生徒さんには、お勧めできないかもしれません。
コンクールへの参加は、生徒さんやご家族の覚悟も必要となるのです。
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