(この記事は、第98号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「ピアノ教室の出来事」は、お子様のピアノ発表会の曲選びについてお話いたします。

夏に開催されるお子様のピアノ発表会まで、あと3か月になりました。

まだ年齢が小さい生徒さんや、ピアノ教室に通われて日が浅い生徒さんは、新しいことをどんどん吸収している最中ですので、発表会の準備には入っていませんが、その他の生徒さんとは、発表会で弾く曲についてお話をしています。

中高生は、いつも発表会で弾きたい曲がある方が殆どですので、候補の曲の中から1曲に絞るアドバイスをするくらいなのですが、小学生や保育園・幼稚園生となりますと、なかなかご自身で弾きたい曲を具体的に挙げることは難しく、私の方でいくつか曲をご紹介しながら一緒に決めていく事が多くなります。

発表会は、ピアノ教室にとって一番大きく大切なイベントですが、当日よりもそれまでの過程の方が大変なのです。それは、出演される生徒さんも、同じだと思いますが。

曲を仕上げるための日々のレッスンだけではなく、その前段階である曲目選びには、実はかなりのパワーを使います。

所有している楽譜を眺めたり、実際に弾いてみて新しい曲を探すだけではなく、毎年同じような曲にならないように、1年中常に新しい曲を探す必要があります。例えば、他のクラスの発表会のプログラムを見たり、コンクールやオーディションのプログラムを見てチェックしたり、時間があるときには楽譜売り場に足を運びます。

こうして集めた曲を、それぞれの生徒さんが、これまでに発表会で弾いた曲目と照らし合わせて、同じ作曲家や似たような雰囲気の曲にならないようにご紹介していきます。

これは中高生にも共通することなのですが、好きな作曲家や好きな雰囲気の曲だけを重視して曲を選んでしまいますと、曲目がかなり偏ってしまう事があります。

「ショパンが好きなので、ショパンを弾きたい」というのも、もちろん1つの選び方ではありますが、お子様の場合は特に、色々な作曲家の色々なスタイルの曲を弾く事で、幅広く音楽を知り、色々なテクニックを学ぶことにも繋がります。

これまで弾いたことがなかった作曲家の作品を弾くことで、良い意味で好みが変化していく事もありますし、想像以上に生徒さんの持ち味が表現できる事もあるのです。

そのようなことを考えながら、一人一人の生徒さんに発表会の曲をご紹介しています。

発表会の曲選びの時期には、毎日何冊も教材を抱えて教室へ行き、弾きながら曲をご紹介しています。

最近は即決せずに、お家へ持ち帰り、ご家族と相談するケースも増えてきています。
そのため CD などをお貸しすることもありますが、YouTube などインターネットを利用してご家族で聴くという方も増えてきました。インターネットでは、音質が多少劣る場合もありますが、同じ曲を様々な方が弾いていますので、参考になることも多いようです。

また、これまでお母様に相談して曲を決めるという事はありましたが、最近はお母様だけではなく、お父様も積極的にお子様の曲選びに関わっているようです。

先日も、レッスンに同席していたお母様が、「ここで決めても、後で主人がなんと言うかわからないので、1回持ち帰って相談してから決めたい」とお話されていました。

お子様にとっても、発表会は大きなイベントですので、ご家族全員が曲目選びから関われるのは、レッスンを担当する身としても嬉しい事です。

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(この記事は、第97号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「ピアノ教室の出来事」は、小学生のピアノコンクールのお話です。

先日、生徒さんがピアノコンクールにチャレンジしました。ピアノ教室に入られた時から、教材が驚異的な進み方をしていて、ピアノが好きという気持ちもとても強い生徒さんです。

発表会で中高生の演奏を聴いてはいますが、レベルの高い演奏が出来る同世代のお子様たちから良い刺激を受けることができれば、もっと成長できて、良い経験になるのではないかと思いコンクールをご紹介したのです。

今回参加したコンクールは、地方予選、地方本選、全国大会と3段階になっており、一定以上の点数を獲得できると、次のステップへ進むことができます。

本番ではいつも落ち着いた雰囲気で、割と普段通りに演奏ができる生徒さんなので、予選ではかなり良い感じに演奏が出来ていました。初めてのコンクール参加とは思えない落ち着きぶりに驚いたくらいです。

しかし、次のステップとなる地方本選では、出だしでミスが出てしまい、その後も「あれっ!?」という部分がある演奏になってしまいました。

後になって生徒さんに聴いたところ、これまでに体験したことのない緊張感だったそうで、足が震えたと話していました。いつも、それほど緊張しないタイプだと思いますが、さすがにそうはいかなかったようです。

それでも後の講評を見ますと、これまでかなり練習を積んで弾き込んできた事が評価されていました。

そして、目標であった全国大会へ進むことができたのです。

全国大会は、これまでの点数が加算される訳ではないので、その日のたった1回の演奏で全てが決まります。どれだけ実力を出し切れるかという、自分との戦いになるのです。

全国大会の前に、生徒さんにこんなお話をしました。

「本選の時に、自分で演奏の出来が10点満点の6点って言ってたよね。今度は10点満点で10点になるように、全部出し尽くして、楽しく弾いてね!」

そして、全国大会の本番では、普段の力をかなり出せた演奏ができました。

生徒さんも笑顔で舞台裏に戻ってきたので、「上出来!! とっても素晴らしい演奏だったわよ。よく弾けたわね!」と声をかけました。そして、良い結果をいただけたのです。

生徒さんの出番前までは客席で聴いていたのですが、さすがに全国大会ともなりますと地方本選を勝ち抜いてきただけあって、上手な方が多かったですね。

「小学生でこれだけ弾けたらスゴイ!」という方ばかりでした。

コンクールやオーディションは、演奏に対して合否を付けるので、常に賛否両論があります。私も個人的には、一生懸命頑張って演奏したものに、合否や点数を付けることには、かなりの違和感を持っていました。

しかし以前、先輩の先生から「結果はともかく、参加して成長できる生徒さんもいる」という話を聞いて、少し柔軟な考えを持つようになりました。今回コンクールを紹介した生徒さんは、正にそのタイプに当てはまるのではないかと思ったのです。

今回は、努力が報われる結果となりましたが、そうでない結果となることもあります。そのような時には、ピアノ講師のフォローと共に、ご家族のフォローもとても大切になります。

今回も、そのようなお話を事前にして、ご両親と生徒さんで考えた上で参加することになりましたが、落ち込んだ後に潰れてしまいそうなデリケートな生徒さんには、お勧めできないかもしれません。

コンクールへの参加は、生徒さんやご家族の覚悟も必要となるのです。

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(この記事は、第96号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「ピアノ教室の出来事」は、この時期のお子様の生徒さんのお話です。

3月は、卒業のシーズンです。

今年も小学校や中学、高校を卒業される生徒さんが何人もいますが、生徒さんもご家族の方も、卒業式や謝恩会などで忙しくされているようです。

生徒さん方に聞いてみますと、寂しい気分よりも、新しい学校に通う事への不安と期待の方がはるかに大きいようです。

先日も高校を卒業した生徒さんに、「まずは、高校卒業おめでとうございます。卒業した心境は? やっぱり少し名残惜しいかな?」と聞きますと、すぐに「いや、それはない」と言うのです。

「あら、そうなの。もしかして、清々したという感じなの?」

「あぁ~、まあね・・・」

「へぇ、そうなんだ。それなら、4月から大学に行くのが楽しみでしょう?」

「いや、それもあんまり・・・」

「あら~、あまり知っている人がいないから、お友達関係が心配なのかな?」

「そうそう」

大学の授業の内容やレベルなどよりも、やはり人間関係についての不安が大きいようでした。

「大丈夫よ、大学の時に出来たお友達って、一生のお友達になるわよ。私もね、とても仲の良いお友達って大学の時の友達だから。しかも、必修科目が違うクラスの人で、大学に来る前まで全然違う感じの環境だったのよ。なんだか面白いご縁よね。そういう人と出会えるかもしれないって思ったら、とっても楽しみになるわよ」

「あぁ~、なるほどね。そう考えればいいんだぁ」

ついつい昔話をしてしまうのですが、私が経験したことをお話しすることで、少しでも不安が少なくなればと思っています。

また、この時期に新しいことにチェレンジする生徒さんもいます。

小学生の生徒さんは、初めてグレードの試験を受けます。

試験前の最後のレッスンで、「本番みたいに1回通して弾いてね。私は、もうお口にチャックして静かに聴いているからね」と話し、弾いてもらいました。

すると、出だしは調子良かったのですが、途中でメロディーの音が1つ思い出せなくなり、パッタリと止まってしまったのです。

しばらくして、少し前から弾き直したのですが、それでもどうしても1つの音が思い出せなくて、立ち往生してしまいました。

なんとか続きを弾くように促して、最後までたどり着いたのですが。

これまで何回も発表会などの本番を経験していますし、今回弾く曲でもこのようになったことは一度もなかったので、私もとても驚きました。

どうしたの?という気持ちを抑えて聞いてみました。

「○○ちゃん、ちょっと緊張した?」

「うんっ、すっごく緊張した。本番と同じくらい緊張した」

「そうだったの。それなら今日レッスンがあってよかったわ。本番で緊張したらどうなるのか、本番前にわかるからね。こうならないように練習をすればいいからね」

よくよく話を聞いてみますと、この生徒さんにとって、ピアノの演奏に点数が付く(合否が付く)というのは初めての経験なので、少しどうしていいのかわからなかったようなのです。

「グレードはね、お客様の中に試験の先生が2人くらいいるだけだから、発表会と同じなの。だから、発表会と同じように弾けばいいのよ。では、ここで質問ね。弾いていたら次の音がわからなくなりました。どうしたらいいでしょうか?」

「飛ばして、どんどん先に行く(先を弾く)」

「そう、大正解。発表会の時と同じでいいのよ。気にしないでどんどん弾いていくの。そして、本番では女優さんになるのよ。あっ、なんだっけ?って思っていいけれど、顔に出しちゃダメね。全然平気!っていう顔をして弾くの。そういう風に見えるように演技をするのよ」

「そっかぁ、女優さんかぁ」

「そう、だってピアノを弾く人が緊張して青ざめて舞台にいたら、見ているお客様が、あらっ、この人大丈夫かしらって不安になって、楽しく音楽が聴けなくなっちゃうでしょ。」

「うふふ(笑)、そうだよね~」

思った以上に弾けなかったショックから、一転して晴々したいつもの笑顔に戻り、私もとてもホッとしました。

そしてお迎えにいらしたお母様の前で、最後にもう一つお話しをしました。

「○○ちゃんね、本番前に言っちゃいけない言葉があるの」

「言っちゃいけないこと?」

「(音を)忘れそう、弾けなさそうっていう言葉よ。私ね、すっごく昔に本番前に、そう思って言っちゃったことがあってね。そうしたら、本当に音を忘れちゃって、暗譜が飛んじゃったの。○○ちゃんには、私と同じ間違いをしてほしくないから、失敗した時のお話をしたのよ」

「うん、絶対に言わないね」

本番で、いつもの力が十分に発揮できるように、後は祈るのみです。

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