(この記事は、第83号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「ピアノ教室の出来事」は、ピアノ教室で開催されたコンサートのお話です。
どのピアノ教室や音楽教室でも、年に一度は発表会が開催され、日頃の練習の成果を発揮する場があると思います。
本番に向けて、何か月も前から練習をして、時には壁にぶつかりながら成長していく姿は、レッスンを担当している立場から見ましても、「すごいなあ」と思いますし、成長していく様子に嬉しくなったり、また「自分も頑張らないと」と励まされたりもします。
生徒さん方も、本番は自分のことで精一杯かと思っていると、きちんと他の方の演奏を聴いていて、「○○ちゃんが、すっごく上手でびっくりした」とか「私も、○○の曲が弾けるようになりたい」と、とても良い刺激になっているようです。「自分の直前に弾いていた人が上手で、すっごく焦った」という生徒さんもいましたね。
生徒さんのご家族も同様で、「○○の曲を弾いた生徒さんって、何歳なんですか?」と聞いてきたり、「○○くん、上手になっていた」と、ご自分のお子様だけでなく、他の生徒さんの成長ぶりまで見ていらっしゃるのが、とても嬉しく思います。
先日、ピアノ教室では、オーディションに合格した生徒さん方のコンサートが開かれました。一般の発表会とは異なり、審査に合格した方だけが出られるコンサートです。
そのオーディションの審査員も務めたのですが、その時はかなり心中複雑でした。
一生懸命練習して、「オーディションを受けるからには合格したい」と全員が思っているはずです。そのような演奏に合否を付けるのは、とても難しく、また色々と考えさせられます。
特に自由曲の場合、少し易しい曲を手堅くまとめて弾くのと、少し難しい曲をある程度まとめて弾いた演奏を、どのように比べて合否を付けるのかは、かなり意見の分かれるところです。
バロック期の作品の演奏と、近現代の作品の演奏を比べるのも、かなり難しいと思いました。
抜群に上手な生徒さんというのは、限られているので、殆どは接戦になります。そのような中、見事に合格した生徒さん方が、本番の舞台で演奏するのです。
オーディションの時にも、すでに完成した演奏でしたが、そこから更に練習を積んでいますので、さらに進化して深みのある演奏になっていました。安定感も更に増していますので、心地よく聴くことができます。
色々な先生の生徒さん方が出演されますので、曲選びから曲の解釈、まとめ方などが様々で、指導している立場から見ても、とても勉強になりました。
有名な曲では、曲が重なることもありました。弾いているご本人は、心中穏やかではないのかもしれませんが、それぞれ独自の音楽になっていて、興味深く聴くことができました。
普段のレッスンでは、なかなか1曲にずっと関わることは難しいものです。
発表会の曲の練習でも、3か月くらいですので、それ以上の月日をかけて1曲を練習し続けることは、コンクールやオーディションの参加以外にはないかもしれません。
音楽はとても不思議で、「弾けた」とか「完成した」と思っても、次々に課題が出てきて、いつも悩むものです。正解がないので、常に「これでよいのか」「もっと上手に弾けるのではないのか」と思えてくるのです。
しかし、そう簡単に進歩できない部分もありますので、時にはずっと停滞したままになってしまうこともあります。
そのように、色々試して、工夫して、苦労して、乗り越えると、音楽に深さや味わい、その人らしさが生まれるのだと思います。
また、「やりきった」という達成感も大きいようで、演奏した生徒さん方は、みなさん晴々とした顔をしていたのが、とても印象的でした。
そのような経験も、ピアノの上達には大切なのかもしれませんね。
(この記事は、第81号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「ピアノ教室の出来事」は、演奏のミス(間違い)の対応に悩む生徒さん方のお話です。
ピアノを弾く時、発表会やコンクール、ちょっと人前で弾く時などは特にそうですが、ミスをしないで、音楽的に美しく弾きたいと誰もが思います。
しかし、それを実践することは、本当に難しいですね。
普段のレッスンでも、生徒さん方の演奏を聴いていますと、いろいろと間違いが見つかります。それらを直して曲を仕上げていくわけですが、修正方法は多岐にわたります。というのも、「間違い」の種類や症状が様々だからです。
・「ド」の音符を「レ」と読んでしまったような、音の読み間違い
・弾けているけれど、音楽の流れがよくない(リズムの間違い)
・わかっているのに、いつも同じ所で間違えてしまう
・なぜか(なんとなく)上手に弾けない
音の読み間違いやリズムがわからないときには、「気を付けて下さいね」と間違った箇所を伝えたり、「こんなリズムです」と見本を聴いてもらい、あとは何回か練習することで比較的簡単に直ることが多いようです。
しかし、「いつも同じ所で間違える」場合や「なぜか上手に弾けない」場合は、そういうわけにはいきません。
「家で弾くと、いっつもここで間違えているの!」と言われる方や、ピアノを弾きながら、「なんだか間違えている」と感じるのか、首をかしげて弾いていたり、眉間にしわを寄せて難しい顔をして弾いている方もいます。
多くの場合、「間違えている」ことには気づいているようなのですが、その対応方法に悩まれているようです。
このような場合、間違いの原因をはっきりと掴んでおかないと、なかなか直りません。原因が不明なままですと効果的な練習に結びつかないからです。
100回練習しても、頑張った割にあまり効果がなかったということにもなりかねません。
まずは、上手に弾けていない箇所を絞り込んで、特定していきます。
弾きながら問題の箇所を絞り込んで行ってもいいですし、それが難しい場合には、自分の演奏を録音して、楽譜を見ながら聴いてみるとわかりやすいと思います。
十分場所を絞り込むことができたら、次に原因を探ることになりますが、これはご自身だけですと結構難しいことが多いようです。
ただ、1つおススメなのが指番号の確認です。
楽譜に書かれている指番号通りに、きちんと弾くことができているか確認します。意外に違う指を使っていることが多く、それが上手に弾けない原因になっていることがあるのです。
ピアノの上達には、日々の練習が欠かせませんが、つまづいたときには、やみくもに練習するのではなく、上手に弾けない箇所の絞り込みと原因の分析をしてみましょう。
(この記事は、第78号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回のピアノ教室の出来事は、お子様のピアノ発表会の様子です。
お子様を対象とした発表会が終わりました。発表会は毎年行っていますが、慣れるという事はなく、いつも本番が終わるまでそわそわと落ち着かない気分になります。
私自身がそのような心境ですので、ご家族の方は、もっとドキドキされていたと思います。今年も、発表会前に何人もの生徒さんのお母様から、
「うちの子、大丈夫でしょうか?」
「発表会に間に合うのでしょうか?(曲が仕上がるのでしょうか?)」
と質問を受けました。
当の本人は、意外と普段とあまり変わらない表情だったりするのですが。
今年は、発表会2ヶ月前に、思う様に進んでいない生徒さんが何人かいて結構ハラハラしていました。
さすがに1ヶ月前には頑張っていましたが、やはりこれまでの遅れを巻き返すところまではいかず、最後のレッスンの時も暗譜が未完成という状況でした。
連日の塾通いで、練習時間が思う様に取れない状況は十分に理解していましたが、ここまで来ますと「本番までは頑張ってね!」と激励するくらいしかできません。
そして、発表会当日となりました。
出番を控える楽屋では、生徒さんの年代によって雰囲気がとても違っていました。
幼稚園・保育園生や小学校低学年の生徒さん方は、見たこともない様な神妙な顔で楽屋の椅子に座っていました。
小学校高学年くらいになりますと、普段とあまり変わらない表情で現れる生徒さんも、ちらほら見受けられました。もちろん緊張している生徒さんもいます。
「うわ~、どうしよう。出だしの音なんだっけ? 忘れちゃった~」
と、ちょっと慌てている生徒さんもいました。
「今、楽譜を見て、もう一回覚えればいいのよ。でも、何カ月も練習していて、よく弾けていると思うから、いつもと同じように弾けば大丈夫よ」
と励ましていました。
私も経験があるのですが、出番前に「忘れそう」と思うと、本当に忘れてしまうものです。なるべく、そのように思わない様にして、そして言葉に出さないことが重要です。
中学・高校生くらいになりますと、割と普段と変わらない表情で現れますが、生徒さんによって出番前の過ごし方が違います。
「なんか~、暗譜、ぐしゃぐしゃになりそう」と、思わず心臓が止まりそうな事を言う生徒さんもいれば、普通に静かに椅子に座っている生徒さん、柔軟体操をして体をほぐしながら集中している生徒さんなど様々です。
私も、年代によって接し方を変えています。
幼稚園・保育園生や小学校低学年の生徒さん方には、
「ピアノの横の所に、黒いテープが張ってあるでしょ、わかる? あそこでお辞儀をしてね」
「まぁ、今日のドレス、とってもかわいらしいわ。お花が付いているのね。私もここにお花が付いているの。お揃いみたいね」
と、ステージマナーを話しつつ、リラックスできるようにしています。
小学校高学年くらいの生徒さん方には、
「ホールもピアノも、とっても響くから、上手に聴こえるわよ~」
「大丈夫、大丈夫。いつも通りに弾けばいいのよ」
「今回のピアノのペダルは、浅めだから、弾く前に必ず踏んで確かめてね」
「ピアノね、鍵盤が軽めだから、弾きやすいわよ」
と、トークで気持ちをほぐしたり、時には冗談を言って笑わせつつ、ピアノやぺダルについての情報をお話するようにしています。
中学・高校生の生徒さん方は、それぞれ独自の調整法があるので、必要最低限の事だけを話して、あえて一人にさせています。
そして全員に、アナウンス後「いってらっしゃい!」と背中をポンと押して送り出し、帰ってきた時には手でポーズを取りながら
「よかったわよー」「よく頑張ったわね、上出来だわ」
とねぎらいの言葉をかけています。
暗譜が心配だった生徒さんは、なんとか弾ききった生徒さんもいれば、最後のレッスンの時から、更に自分で仕上げてきた生徒さんもいて、みなさん無事に終えることが出来ました。
どのような状況でも、弾き終わって帰ってくる生徒さんの表情は柔らかく、笑みがこぼれている事も多いのです。
ただ、発表会が全て終わった後、帰りがけに色々とお話を聴きますと、いろいろな思いが交錯しています。
「何ででしょうね。普段は弾けている所が、本番になると弾けないというのは・・・」
と、生徒さんのご家族からも質問を受けました。
「そうですよね。でも、これが本番の難しいところで、その解決法があったら、私の方が聴きたいくらいです(笑)。ただ、今回は初めて使用するホールで、残響もたいぶ長く、音が聞こえるのに時差があるのも、少し影響しているかもしれませんね」
とお答えしました。
満足いかなかった生徒さんには、
「では、来年挽回しましょ。来年は、何の曲を弾く?」
と悔しさを次に繋げるように促しました。
生徒さんの感想は様々ですが、自分だけの力で最後まで弾ききった事は素晴らしいことです。
この経験は、これからのレッスンや来年の発表会にも繋がることですし、またピアノ以外のところでも役立つと思います。
まずは、生徒さん方の頑張りに拍手を送りたいです。
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