(この記事は、第72号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回のピアノ教室の出来事は、今年入られた小学5年生の生徒さん(Aさん)のお話です。
Aさんは、今年の2月に入会されました。お子様の場合、1年のうちで一番多く入会される時期は春ですので、タイミングとして珍しいケースだと思います。
しかも、「子供のためのピアノ教育」でも書いていますが、ピアノを始める年齢としては珍しく、小学5年生の生徒さんなのです。
Aさんのお母様は、フルタイムでお仕事をされていて、お仕事帰りの夜の時間帯に、お子様と一緒に体験レッスンに来られました。
小学5年生という年齢や、冬に体験レッスンにいらっしゃることは、これまでに全くなかった訳ではありません。しかし、多くの場合は、以前からピアノを習っていて、引っ越しなどでピアノ教室を変えるパターンなのです。
Aさんも同じような経緯なのかと思っていましたが、これまでにピアノを習ったことがなく、全くの初心者だったのです。
お話を伺いますと、自宅にキーボードがあり、光る順に鍵盤を弾いていくと、曲が演奏できる機能が付いているそうです。そのキーボードをAさんが弾いているのを見て、「それだけ好きなら、ピアノを習わせてみようか」と思われたのだそうです。
また、Aさんに直接聞いてみますと、クラスの友達がピアノを弾いているのを見て、「いいなぁ」と憧れを持っていたそうで、それもきっかけとなったようです。
小学5年生の初心者というのは、なかなか珍しいケースなので、使用する教材を選びに楽譜屋さんに足を運んだのですが、思った以上に時間がかかりました。
お子様の初心者用の楽譜は、小学校入学前後の年齢を対象としているので、結構可愛らしい絵が描かれている楽譜が多いのです。
悩んだ末に楽譜を決めたのですが、多感な年頃でもあり、「こんな子供っぽい楽譜は嫌だ」と言われてしまうのではないかと心配しましたが、それなりに気に入ってもらえて、ほっとしました。
ピアノの楽譜と共にワークも渡したのですが、両方ともどんどん進んでいて、まだ数カ月しか経っていないのに、すでにピアノの楽譜もワークを3冊づつ終わらせています。
特にワークの進み方がとても速いので、Aさんに聞いてみました。
「Aさんは、いつもたくさんワークをやってきてくれるでしょ? お家でどんなペースでやっているの? 時間のある時に、たくさんやっているのかな?」
「いえ、毎日2ページやるって決めて、やっています。それで、土曜日とか日曜日の学校のない時には、もっとやっています。」
「あらそう、毎日やっているのね。すごいわね~。毎日やるって大変でしょ、今日は疲れたからいいやってならないの?」
「はい、自分で毎日2ページやるって決めたし、ピアノも自分でやりたいって言って習っているので、そういうのはないです。」
文章で書くと少し硬い印象かも知れませんが、可愛らしい笑顔で、このように話していました。小学校低学年のお子様とは違って、また年齢以上に、とてもしっかりとした意思を持ってピアノを始めたことが、とてもよくわかった瞬間でした。
毎日コツコツと練習する事は、ピアノだけではなく、何かを習得する時には欠かせないものです。それを自分の意思で進められる人ほど、強いものはありません。
Aさんは、進みが速いだけではなく、分からないことは、どんどん質問をするので、レッスンもおのずと効率よく、内容の深いものになっていきます。
「ピアノが上手になりたい」という熱意も、とてもよく伝わってきますので、今後の成長が楽しみです。
お家では、まだキーボードで練習をしているそうですが、すでに楽器に対して物足りなさを感じていました。すぐに音が出てしまうので、弾いている感触があまりないところや、いつも一定の音量しか出せないので、音の強さが変えられないところが、とても不満のようです。こういう時こそ、生のピアノで練習をさせてあげたいなあと思っています。
(この記事は、第71号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回のピアノ教室の出来事は、夏のピアノ発表会に向けた準備についてです。
毎年、3・4月は、夏の発表会に向けて一つの大きな山を迎えます。それは曲選びです。
レッスンの時には、生徒さんに、こんな風にお話をしています。
「今年の発表会、何を弾くのか考えてね。この曲を弾きたい! というのがあれば教えてほしいし、こんな感じの曲が弾きたいなぁ~って言うのでもいいよ。例えば、元気な曲がいいとか、去年は速い曲だったから、今年は少しゆったりしたロマンティックな曲がいいとかね。」
勿論、曲を紹介はしますが、なんとなくでも方向性が欲しいですし、たまにですが、「前に習っていたピアノの先生には、曲を指定されて、弾かされた」という事を言っていた生徒さんもいました。
曲を決めた状況が分かりませんので、おススメというニュアンスでお話をされたのかもしれませんが、少なくとも生徒さんは、そのように捉えられてしまったことになります。
そのような状況では、きっと生徒さん本人も、楽しく弾いていたとは思えませんし、観客の方にも、音楽の楽しさや良さが十分に伝わらないように思います。
そのため、小さな生徒さんでも、最終的には自分で決めたというスタンスを守ってほしいと思っています。
そのためにも、「この曲いいっ!」とか「この曲好き!」「この曲を弾きたいっ!」と言って貰える曲を紹介しなければなりませんので、実は、結構神経を使う事になります。
一人ひとりの生徒さんの持ち味や、技術、好みなどを把握しながら、3曲くらいは用意していきます。
この時期以外でも、日頃から楽譜屋さんで色々な楽譜を見て、面白そうな曲があると購入していますが、その時に「この曲は、○○ちゃんに合いそう」とか「この曲は、□□ちゃんが好きそう」と、パッと生徒さんの顔が思い浮かぶので、発表会の曲選びの時期には、それらの曲もご紹介するようにしています。
勘や、ひらめきの様に思うかもしれませんが、実際にはかなりの的中率なのです。
先日も数人の生徒さんに、こうして以前から見つけていた曲を、見本として弾いてみせたところ、弾き終わらないうちに「これいいっ!すっごく面白い」という反応で、「じゃあ、これにしましょう」と、あっと言う間に決まってしまった事もありました。
別の生徒さんは、同じように見本として弾いてみせたところ、「う~ん、どうしようかな… こっちの曲もいいし、あっちの曲もいいし…」と結構迷っていました。
3曲ご紹介したのですが、そのうち2曲が気に入った様なのです。それぞれの曲の良さや、難易度などをお話して、もう一回づつ弾いて、迷いに迷い、やっと選んでいました。
中学生くらいですと、自分で曲を探して、決めてくる生徒さんが殆どです。
ショパンが大好きという事で、ショパンの曲に決めた生徒さんや、お家の方が好きという曲を選んだ男子中学生の生徒さん、大好きなアイドルグループの曲を選んだ女子中学生など様々です。
このように一から自分で曲を決めた生徒さんの演奏は、とてもよく個性が出てくるので、昨年の発表会では、普段あまり音楽を聴かない方が、「それぞれ、みんなタイプが違って面白かった」と感想を話していた程です。
今年は、バッハ、ベートーヴェン、ショパンやリストなど、クラシックの有名な曲だけではなく、ジャニーズ事務所のアイドルグループの曲や、スタジオ・ジブリの映画音楽など、昨年よりもバラエティーに富んだ曲目が並びそうです。
レッスンを行う立場ではなく、聴衆の一人としても、今から発表会当日が楽しみです。
(この記事は、第70号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回のピアノ教室の出来事は、東北地方太平洋沖地震の時のピアノ教室の、その後です。
東日本で起きた大地震の影響は、日に日にその悲惨さが報道され、心が痛みます。また、その余波も想像以上に大きく、生活に支障をきたしている方々も多いかと思います。
ピアノ教室では、5日間ほど休講の後、レッスンが再開されました。とりあえず、生徒さん方のお顔を見ることが出来て、安心しているところです。
地震が起きた時のお話を聞きますと、色々な体験をして、色々な思いをされたことが分かりました。
ご家族がそろっていたご家庭もあれば、たまたま日常行かない様な所で地震に合われた方も、いらっしゃいました。会社に泊まった方、数時間も歩いて帰宅された方も何人もおられました。
ピアノのレッスンは再開されましたが、やはり地震やその後の計画停電の影響などもあり、なかなかピアノを弾く気分になれなかった生徒さんも多かったようです。
また、ピアノ教室が計画停電の対象地域に入っているため、レッスンにもかなりの影響が出ています。毎日、何時から計画停電になるのかチェックをして、レッスン時間と重なっている生徒さん全員に電話をし、レッスン時間を変更しています。
現在は、小・中・高・大学生が春休みに入っていますので、午後の早い時間等に変更してレッスンをすることが出来ていますが、お仕事をされている大人の生徒さんや、学生の方も新学期が始まりますと、そのような変更は難しいので、とても心配しています。
この計画停電は、まだまだ続くようで、夏にはもっと影響が出ることは必至です。
生徒さんの中には、計画停電の時に、懐中電灯で照らしながらピアノの練習をされている方もおられますが、ピアノ教室でのレッスンとなりますと、懐中電灯というわけにはいきません。
ピアノ教室は、一般家庭と違って防音設備の部屋になっていて、壁もドアも防音用の特殊なものを使用しています。そして、音が漏れる要因となる窓がない部屋も多く、完全に密閉された空間なのです。
そのため、通常は空気清浄機を回しながらレッスンを行っていますが、停電となりますと、真っ暗になることは勿論のこと、完全に空気が遮断されますので大変危険な環境になってしまうのです。
私も以前、練習している時に、エアコンや空気清浄機のごくわずかな音が気になり、全て電源を切って練習していたことがありますが、どんどん気温が上昇して、汗が吹き出してきて、手にも汗をかくため、鍵盤を弾く指が滑ってしまいます。また、暑さで集中も出来なくなり、長く練習は出来ませんでした。
これから夏に向かってピアノ教室がどうなってしまうのか、大変気になっています。
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