(この記事は、第65号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回のピアノ教室の出来事は、冬休み明けのピアノ教室のお話です。

年末年始のお休みも終わり、ピアノのお教室もレッスンがスタートしています。小・中・高校生は、11日から学校が始まった生徒さんが多く、例年よりも長い冬休みだったようです。

お休みの期間中にやっていた事を聞きますと、塾の冬期講習に参加していた生徒さんが何人もいました。普段、ピアノのレッスンの後に夕食のお弁当を持って塾に通う生徒さんもいて、いつもはレッスン後に「塾も頑張ってね。いってらっしゃい」と声をかけていますが、この冬休み期間は、朝から塾でお勉強をして、お昼を食べ終えて空になったお弁当を持ってレッスンに来ていました。

また、部活動の練習に参加していた生徒さんもいました。運動系の部活動では、外で活動をしますので、とにかく寒くて大変なんだそうです。

そして一番多かったのが、お祖父さんやお祖母さんの家へ遊びに行っていたという生徒さんです。特に小学生に関しては圧倒的に多かったですね。しかし、お祖父さんやお祖母さんの家と言っても、とても離れた距離ではなく、思ったよりも近県だったりします。いわゆる「田舎へ行く」というイメージではないようで、昔とは変わってきているのかもしれません。

不況が長引いていますが、海外へ遊びに行っていた生徒さんも何人もいました。
「あら、○○ちゃんのお家は、すごいわね、海外旅行してきたのね」と、お話しを聞きますと、海外に住んでいるご友人に会いに行かれていたようです。そこのお宅に泊って、街中を案内してもらって観光して来られたようです。地元の方から色々な情報を聞いたり、案内してもらえると、より旅行も楽しくなりそうですし、久しぶりにご友人と会えるというのは、嬉しいものですね。

もちろん、ご家族で個人旅行という生徒さんもいました。毎年、年が明けてから1週間ほど海外へ行かれているようです。なんとも羨ましい限りです。

このように長い冬休みをそれぞれのスケジュールで過ごし、いざレッスンが始まりますと、ハッと感じることがあります。

よく練習をしていて、随分先まで弾けるようになっている生徒さんと、先に進むどころか、やりかけの曲まで弾けなくなっている生徒さんに、二分されるのです。

どの生徒さんも、1・2回はレッスンがお休みになりますので、その分多めに宿題を出していて、「学校がお休みのうちに、教材をどんどん進めましょうね」と声をかけているのですが、このどちらかの結果となり、人数的には大体半々づつに分かれます。

これは、レッスンをしている立場から見ますと、興味深いというレベルではなく、大きな差がついているわけですし、ある意味危機感も感じてしまいます。多めの宿題をこなして、なおかつその先まで練習をしている生徒さんは、レッスン回数で言いますと、お休みの1・2回にプラスして、それ以上のレッスンで弾く曲数をこなしている事になります。3回分くらいのレッスンを受けた後のレベルに進んでいるのです。

その反面、やりかけだった曲も忘れてしまっている生徒さんは、冬休みの前の状態をキープすることもできず、厳しい見方をしますと後退している事になります。単純に約1ヶ月分の差がついてしまった事になるのです。

長期のお休みには、冬休みと夏休みがありますので、同じ回数のレッスンを受けているのに、1年で約2か月分もの差が生まれ、それが何年も続くとなりますと、大きな差となって表れることになります。

長期のお休みにしか出来ない事は色々ありますし、それぞれ状況や予定が違いますので、なんとも言えない部分でもありますが、毎年感じているこの現実だけは生徒さんや親御さんに知っていてほしいと思うのです。

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(この記事は、第63号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回のピアノ教室の出来事は、大人の生徒さんのお話です。

70代の生徒さんで、知り合いの方のご紹介でピアノに通われるようになりました。
小さい頃に少し習っていたそうですが、それから50年以上ものブランクの後、再開されたことになります。

私が小さい頃は、小学生女子の習い事で真っ先にピアノが挙げられるほど、お稽古ごとの定番でしたが、70代の方が小さい頃となりますと、状況はかなり異なります。

それこそ学校にピアノがあるかどうかという時代(足踏みオルガンの世代)ですので、その時代に、家にピアノがあって習っていた方は、ごく稀でしょう。

先生が厳しく、よく注意もされていたそうで、「嫌だなぁ」と思ったこともあるという話をされていました。でも、音楽は好きで、家では家族みんなで蓄音機を回して楽しんでいたそうです。

子育てや介護も一段落し、悠々自適の生活になってから、ピアノを再開されました。大人用の教材を1巻から進めていますが、もうすでに3巻目まで進んでいます。

色々なケースがあるので、一概には言えませんが、平均しますと1冊を終えるのに1年から1年半ほどかかる教材です。しかし、この生徒さんは、お教室に通われてまだ2年も経っていませんが、既に3巻の半分まで進んでおり、かなりのハイペースと言えます。

大人の方だけでなくお子様でも、新しい曲を初めてレッスンする時には、片手だけ練習をしてきたり、途中まで練習をしてくる生徒さんがいらっしゃるのですが、この生徒さんは、初めての曲でも、いつも両手で最後まで練習をされた状態でレッスンにいらっしゃるのです。

どんな曲でも、このような状態ですので、物凄く譜読みが速いのかと思っていましたが、家では時間をかけて、コツコツと練習をされているようです。そして、レッスンをしている曲以外に、次の曲も並行して練習をされているので、次の曲に移ったときには両手で弾けるようになっているのです。

最近では、さすがに曲が難しくなってきているので、レッスン時間を倍にしたいとの申し出があり、今はそのように進めています。年齢的な事もあり、長時間のレッスンがこなせるのか、少し心配していましたが、実際に始めてみますと、全く心配無用で、難なくこなしています。

レッスンでは、連続で何回も同じ曲を通して弾きますが、全く飽きる様子もなく、私の方が、「自分が、この生徒さんと同じ年齢になった時に、こんなにも熱心に出来るのだろうか」と感心しています。

ピアノ以外にも麻雀や、宝塚歌劇団の観劇など、楽しみがいくつもあるそうですし、スポーツ観戦も大好きなのだそうです。しかもラグビーや野球など、どのスポーツを見るのも楽しいそうです。

いつまでも若々しく元気でいる事は、誰もが理想とするところですが、このような方を実際に目の当たりにしますと、こちらも元気を頂いているような気がして、毎回楽しくレッスンをしています。

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(この記事は、第61号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回のピアノ教室の出来事は、小学校低学年の生徒さんのお話です。

レッスンに通い始めて3年ほどになるAちゃんは、体験レッスンの時からおばあ様が連れて来られていました。ご両親揃ってフルタイムでお仕事をされているご家庭が多くなっていますので、彼女のようなケースは、決して珍しいものではありません。

Aちゃんは、毎回ワーク(音楽ドリルのようなもの)をきっちりとやってくるのですが、ピアノの演奏の方は、曲の途中でよく止まってしまう傾向がありました。普段のレッスンはともかく、発表会など人前で演奏する時に止まってしまう事は、なるべく避けたいことなので、毎年発表会前の大きな課題として、止まらない練習をしてきたのです。

元々、あまり器用な方ではないようですし、性格もおとなしく、質問をしてもあまり答えられずに黙ってしまうところがありました。答えに確証がない状態では、発言しようとせず、「わからない」ということを言い出せない事も度々ありました。

決してムッとした表情でレッスンをしている訳ではないのですが、お家のことや学校であったことなども、あまり話さないので、レッスンをしている私としては、「果たしてAちゃんは本当にピアノを楽しくやっているのだろうか?」と不安に感じてしまう事もありました。

そんな折、いつものようにAちゃんと一緒におばあ様がいらっしゃいました。おばあ様は、いつもレッスンを見学しているのですが、「今日はちょっと用事があるので、後程迎えに来ます」とおっしゃるので、「はい、わかりました。それでは後程」とお返事をしたところ、おばあ様はおもむろにバックの中から1枚のパンフレットを取り出しました。

「親バカみたいな感じですけど、先生にお見せしたくて。これは、(Aちゃんの)学校で今度行われる音楽会のプログラムなんですけど、ここに彼女の絵が載っているんです!!」

そこには、グランドピアノの絵が描かれ、Aちゃんの名前も書かれていました。

「私、もうホントに嬉しくて・・・。これも本当に先生のおかげです。ありがとうございます」とおばあ様は、満面の笑みでお話されました。

「Aちゃん、スゴイじゃない!上手に描けているわね~。鍵盤の所がとっても細かく描けていて上手ね。Aちゃん、選ばれて描いたのかな?」

「学校の先生がね、楽器とか歌っているところの絵を描いてって言ったから描いたの。」

「そうなの、それでグランドピアノの絵を描いたのね」

音楽をテーマにした絵でグランドピアノを題材に選んでくれたことで、私もAちゃんが、彼女なりにピアノを楽しく弾いているように思え、とても嬉しく感じました。またその絵が、コンサートなどの聴衆から見たピアノではなく、弾いている自分の目線から見たピアノの絵であることが、尚のこと嬉しく思えました。

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