(この記事は、2022年11月14日に配信しました第359号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、大人の生徒さん方の発表会のお話です。

ピアノ教室では、夏はお子様の発表会、秋は大人の生徒さんの発表会と、季節ごとに大きなイベントがあります。

お子様の発表会は、基本的に全員参加ですが、大人の生徒さんの発表会は、自由参加となります。お子様は、生徒さんだけでなくご家族も含めて、1年に1回発表会がある事が当たり前という意識をお持ちの方が大半だと思います。そのため、これまで発表会参加を見送りたいというご相談は、ほとんど受けたことがありません。

一方で、大人の生徒さんの発表会は、参加される方は毎回コンスタントに参加されますし、参加されない方は毎回参加されません。これは、ピアノの経験の長さや、どのくらい弾けるのかというレベルにも関係がありません。定年を機にピアノを始められた方が、ほぼ毎年参加されることもあれば、お子様の時にピアノを習っていて、ショパンの練習曲をどんどん弾いているような方が、「子供の時に発表会に出ていたので、もういいです」と丁寧にお断りされたりもします。

先日行われた大人の発表会は、まだコロナが完全に収束していないこともあり、引き続き制限をかけての開催となりました。コロナが広まり始めた3年前は開催中止でしたが、翌年から、少しずつ開催する楽器を広げていき、今ではソロで演奏する場合は、ほぼ全ての楽器で発表会が開催されるようになりました。それでも、制限をかけての開催ですので、1回のステージの参加者は半分以下の10人まで、座席も間隔を空けて少なめの配置です。集合時間は設けず、講師演奏や集合写真も無し、全員の演奏が終わったら解散という進行で行われました。

このような発表会のスタイルになって2年が経ち、生徒さん方もすっかり慣れて、ご理解もいただき大変ありがたく思うと同時に、1年に1回の大舞台なのになんだか味気ない感じで申し訳なく思っています。

さて、発表会の本番当日ですが、前のステージが終了予定時間になっても終わらず、少しハラハラしましたが、終了と同時にバタバタと入れ替えとなり、結局10分遅れでスタートしました。今回は、割とご年配の生徒さんが多かったような気がします。

お子様の発表会よりも、アットホームな雰囲気で行われるのが大人の発表会の特徴ですが、そのような雰囲気でも、やはり普段のレッスンとは異なりますから、多かれ少なかれ緊張はするものです。おそらく今朝までは調子よく弾けていたのかなという方が、本番ではミスしてしまい、何回か弾き直そうとしてもどうしてもうまく続きを弾く事ができず、「もう~」と、つい独り言をつぶやいてしまう場面もありました。見ていてヒヤヒヤしましたが、その後ふとしたタイミングで、いつもの調子を取り戻したようで無事に演奏を終えることができ、本当にほっとしました。

ほぼ毎年参加されている生徒さんは、夏あたりからお仕事がかなり忙しくなったようで、レッスンをお休みされることもあり、本当に発表会に参加するのか心配していました。しかし、改めて意思確認すると、「発表会には出ます!」と力強いお返事を頂きましたので、「お忙しいようですが、2022年は発表会に出て頑張ったという証を残せるように、頑張りましょう」とお返事をしました。

それまでは、曲の前半部分と、中間部の半分ほどを細かく丁寧に反復練習なども含めてレッスンをしていたのですが、この決意をお聞きした1週間後のレッスンでは、なんと発表会で弾く曲全部を、両手でかなりスラスラと弾いていて、本当にびっくりしました。

「いや~、最後まで全部両手で弾けましたね。1週間でこんなに弾けるとは、本当に驚きました。凄いですね~」とお話しますと、「いやいや…」と照れたような表情で、でも嬉しそうなお顔をされていました。その後、いくつもの声部(パート)が入り組んだ作品なので、どのフレーズが重要なのか、そこが浮き立って聴こえるようにするにはどうしたらよいのかなど、弾きながら説明をして、一緒に練習をしました。

同じ曲でも、フレーズを見て弾き方を変えると、ガラッと曲の印象が変わります。生徒さんも、解説を聴きながら深く頷いていましたし、実際にご自分で弾いてみて「ああ~、全然違うっ」と驚いたような声で話していて、「ですよね~。すっごく変わりますよね」と返事をしました。作品の奥深さを、ご一緒に感じることができて、私もとても楽しいひと時でした。

本番では、緊張はされていたようですが、最初の音から気持ちを込めて弾いていることが伝わってきましたし、レッスンで「ああ~、全然違うっ」とおっしゃっていた部分も、味わい深く弾いていて、凄いなあと感じました。

生徒さん自身は、ミスしたところを少し悔やんでいるようにも見えましたが、お忙しい中、当初の予定通りに発表会に向けて準備をして、やり切った達成感も感じていただければと思いました。

忙しい事を口実に、回避することもできたわけですが、それをせずに最初に決めた事を最後まで貫く姿勢に、心から拍手を送りたいですし、とても励まされた出来事でした。

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(この記事は、2022年10月31日に配信しました第358号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、小学生の生徒さんのレッスンのお話です。

朝晩もだいぶ寒くなり、紅葉が見頃を迎えている所も多いようです。ピアノ教室の生徒さん方にも、「寒くなってきましたから、お教室にいらっしゃるときに、手が冷えないようにしてくださいね」と話しています。3ヵ月ごとにレッスンの予定表をお渡ししていますが、それを見た生徒さんが、「もう、年明けのレッスン日まで書かれているのですね。時が経つのは、早いものですね」と感想を漏らしていました。

先月下旬辺りから、小学生の生徒さん方には、通常よりパワーアップしてレッスンを行っています。例年では、夏の発表会が終わり2学期に入ると、本来のレッスンのペースでじっくり落ち着いてレッスンを行うのですが、今年はだいぶ様子が異なっています。というのも、今年はヤマハのコンサートグレードを受験する生徒さんが何人もいるのと同時に、小学校の学習発表会や音楽会で演奏する曲をレッスンで見てほしいという方が続出しているのです。

恐らくですが、これまでコロナの影響で中止していた学校行事が、だんだんと再開されてきていて、それに伴って音楽関連の行事も復活してきているのだと思います。コロナが流行り始めた頃、しばらく休校になりましたが、その後学校が再開しても、しばらく音楽の授業は合唱などの歌なし、鍵盤ハーモニカやリコーダーの授業もなし、リズム打ちくらいしかなく、「音楽の授業がつまらない」と残念そうに話していた生徒さんもいました。あれから2年余り経ち、学校の音楽の授業もコロナ前の状態にだいぶ戻り、みんなで合奏して披露する場も復活したということのようです。

ある生徒さんは、ピアノパートのオーディションがあるとの事で、楽譜を持って来ました。1週間後くらいに、決められたところまでを弾かなければならないとの事でしたが、幸い生徒さん自身で譜読みをしてきていましたので、より良い指使いに修正し、強弱を付けるポイント、そしてペダルを入れる箇所を決めて、華やかに弾けるようにレッスンをしました。

原曲ではピアノが使われていないらしく、アレンジされたピアノのパート譜には、演奏不可能な指示が書かれていたのですが、生徒さんと一緒に原曲を聴きながら、「こういう風に弾いたら、かなり元の曲に近くなるね」と確認して、実際にピアノで弾いて練習もしてみました。生徒さんのお母様も、演奏不可能なところについては疑問に思っていたそうなので、レッスン後に説明しましたが、「なるほど~」と疑問が解消されてすっきりされた様子でした。

その後、生徒さんから、「無事にピアノパートのオーディションが終わり選ばれた」という嬉しい報告を聞きました。「曲の続きの部分も、お家で練習して、わからない事があったら、また楽譜を持ってきてね」とお話しました。きっと張り切って、曲の続きも練習していると思います。

今年の春くらいに入会された生徒さんも、同じ様に小学校の行事で演奏する楽譜を持ってレッスンに来ました。レッスンでは、両手で異なる音を弾き始めて少し経ったくらいなのですが、持ってきた楽譜を見ますと、16分音符なども並び、しかも結構テンポの速い曲です。生徒さんのお母様は、「難しくて無理だから、やめて他の楽器にするように言っているのですが…」と少々困ったような表情でお話をしていました。

確かに、かなり難しいと思いますが、生徒さん自身は、「かっこいいから弾きたいんだよね」と話していますので、頑張って練習してみようという事になりました。本来ならば、一音ずつ音を読んで、音符の長さからリズムを見て、指番号を考えて、拍子に合わせて弾く、そしてだんだん速く弾けるようにするという流れになりますが、そこまでの時間的猶予もないので、「ここは、この指番号で弾いて、こんなリズムなのよ」とごく小さいフレーズに分けて、見本として弾いて真似して弾いてもらい、一人でも弾けるように練習をしました。

生徒さんも、普段のピアノレッスンでは、まだ出てこない指使いやリズムに難しさを感じていたようでしたが、黙々と何回も練習をして、だんだんと自力で弾けるようになってきました。その様子を見ていますと、かなり本気で「かっこいいから弾きたい」と思っているのだなあと改めて感じました。翌週のレッスンでは、前回弾いたところをバッチリ弾けるようになっていましたので、続きをレッスンすることができ、あともう一息で全部弾けるようになるというところまで進むことができました。どちらかというと大人しいタイプの生徒さんですが、一連のレッスンを通して、実は内に秘めた情熱を持っていることがわかり、生徒さんをより深く知るよいきっかけにもなったと思いました。

小学校高学年の生徒さんは、今年もピアノパートを希望していて、希望者は少なかったそうですが、それでもオーディションがあるという事で、レッスンに楽譜を持って来ました。中盤から後半にかけては、同じ和音の連打なので、音さえ読んでしまえばだいぶ楽なのですが、オーディションで弾く曲の冒頭部分は、リズムが少し難しく、音を把握するのもやや難しいフレーズでした。また、他の生徒さん方の曲とも共通するのですが、原曲がピアノで弾く曲でない場合、ピアノ演奏の指運びを考慮していないので、弾きにくい箇所が出てくることがあります。そのため、どの指を使うと一番弾きやすいのか、決めることが重要になります。レッスンで生徒さんと相談しながら指番号を決めて、なんとかオーディションで弾く範囲のフレーズを弾けるようにしました。

その後、この生徒さんもピアノパートを弾けることになり、現在もレッスンを続けています。かなりたくさんの楽器との合奏になるので、どの部分で何の楽器がどんなメロディーを弾いているのかを把握しないと曲の全体像がつかめませんので、私がメロディーを弾いてそれに合わせて弾くということをしています。

さすが高学年の生徒さんともなると、自宅での練習も工夫していて、学校の先生から他のパートの音源をもらってきて、iPhoneで流しながら合わせて弾く練習をしていました。そのため、レッスンでいきなり私がメロディーを弾いても、つられることなく弾けていて、とてもびっくりしました。練習を始めて最初の頃は少し難しそうでしたが、もう大体弾けるところまで進んでいますので、次回のレッスンからは、ヤマハのコンサートグレードの曲の練習も、本格的に始めてみましょうとお話をしたところです。

生徒さん方が、ピアノ教室以外の場所で、日頃のピアノレッスンを生かして活躍できることは、私としても大変嬉しいものですし、きっとご家族の皆様も同じ思いなのではと思います。ピアノを弾いていて、またピアノレッスンを受けていて、よかったと思っていただけるように、これからも日々精進したいと思います。

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(この記事は、2022年9月19日に配信しました第355号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、秋へと向かうピアノ教室のお話です。

9月も半ばを過ぎて、少しずつ秋を感じる今日この頃です。ピアノ教室にいらっしゃる生徒さん方とも、「日中はともかく、朝晩は少し過ごしやすくなってきましたね」などと話をしています。みなさん、やっと突き刺さるような灼熱の暑さから解放され、ホッとされているようなご様子です。

今年の夏もかなり暑かったので、少し体調を崩された生徒さんもいらっしゃいました。その生徒さんは、ご夫婦で日常的にウォーキングをされたりと、日頃から健康管理の意識が高かったので少し驚きましたが、無理は禁物ですから1ヵ月程レッスンを休むことになりました。来週から復帰される予定ですが、お元気な姿でいらっしゃることを心待ちにしているところです。

定年を機にピアノを始めた生徒さんは、ウィンタースポーツがもう一つのご趣味です。「秋になってきましたから、(ウィンタースポーツの)シーズンが少しずつ近づいてきていますね」とお話をしますと、「そうですね」とニコニコしていました。この生徒さんは、お教室に入会されてから、毎週熱心にレッスンに来られ、着々と練習曲や自由曲を進めてきていましたが、ここ最近は若干スランプ気味のご様子です。

曲の長さは、これまでとほぼ変わらないのですが、原曲にかなり近いアレンジのため調号が多く、複雑で微妙な音の進行に少し苦戦しているのかと思っていました。とは言っても、いつもと変わらずしっかりと練習を積まれているので、指運びは全体的によく、鍵盤上でうろうろと音を探しているような動きはほぼなく、弾く直前になって1つ隣の鍵盤の音を間違えて弾いてしまうという感じでした。その個所から弾くとほぼ弾けていますので、もうゴールは間近という感じで前回のレッスンを終わりました。

この日のレッスンでは、最初の音から、この作品特有の静かで少し悲しみと幻想的な雰囲気を感じる演奏で、スランプの原因になっていると思われる最難関の箇所も落ち着いて、ほぼノーミスで弾く事が出来ていました。

演奏が終わって、私は拍手をしながら「今まで弾いてきた中で、一番良かったですね~。落ち着いて、この曲の雰囲気たっぷりの演奏でしたし、この難しいところも成功でしたね」とお話をしました。生徒さんは、「ここ(難しいところ)は、ちょっと音がちゃんと鳴らなかったですが…」とは言いつつも、誉め言葉に照れているような表情をされていました。そして、「実は、ここの部分、弾いていて音楽が聴こえてくるようになったんです」と嬉しそうにおっしゃったので、私は思わず、「え~っ! 聴こえましたか~。いやー、素晴らしい!」と興奮してしまいました。「先生の方が感激していますね」と生徒さんがおっしゃっていて、今度は私が少し照れてしまいました。

「これも、コツコツと練習をされているからこそです。あーでもない、こーでもないと思いつつ練習をしてると、ある日突然『聴こえた』という体験ができるんですよね。本当に素晴らしい。よかったですね。これが段々と、聴こえる箇所が長くなったり、あっちこっちに点として聴こえるようになって、やがてそれが繋がって聴こえるようになってくるんです」とお話をしました。

ピアノは、指で鍵盤を弾くと当然音が出ますから、ピアノの練習をしている時、音は聴こえているはずなのですが、弾くという動作に一生懸命になってしまい、自分の出している音がどのような音なのか、思ったような音が出ているのか、判断できないことがとても多いのです。こうなると、主体的に音楽を奏でているのか実際にはかなり怪しくなります。そして、「今、私が弾いた音って、合ってました?」と私に聞いたりするわけです。

客観的に、自分の出している音を意識して聴きながら弾く事がとても重要なのですが、これがまた大変難しいのです。正に、「言うは易し行うは難し」という状態なのですが、これがまた、ある日突然「(自分の音が)聴こえた」という瞬間が訪れ、この体験があって、初めて音を聴くとはどういうことなのかが分かるわけです。この生徒さんも、以前、私が説明をした時には、やはり「???」という表情をされていましたが、それでも意識して練習を続けたからこそ、今回ご自分の音が聴こえたのだと思います。

なかなか仕上がらなかった曲も、この日のレッスンで無事に仕上がり、次は大変神聖な雰囲気の、ゆったりとしたテンポの曲を練習することになりました。この体験を大切に、これからますます、ご自身の音が聴こえてくるのかと思うと、私もとてもワクワクします。

小さい生徒さん方は、学校の2学期の授業が始まり、学年によっては初めての6時間授業も始まり、ややお疲れ気味の生徒さんも見受けられます。「今日は、レッスンの30分前に帰ってきたから、急いで来た~」と言いながら、小学生姉妹の生徒さんがレッスンに来られました。

小学2年生の生徒さんは、先日からモーツァルトのアレンジ作品を練習しています。ソナタのテーマ部分が、お子様が弾きやすいようにアレンジされていて、「静かな春」という題名も付いていました。この曲の練習を始めた時に、原曲はソナタというタイトルになっていて、ソナタ形式という形で作られた作品であること、また「静かな春」というタイトルは、モーツァルト自身が付けたものではないので、タイトルを気にしないで弾いてほしいとお話しました。

そして、先日この曲をレッスンで扱ったのですが、タイトルにこだわることなく自分のイメージを大切にきれいに弾いていました。弾き終わった後に生徒さんが、「音楽って自由なんだね」としみじみと話していて、小学2年生ながら音楽の本質を捉えている様子に、凄いなあと思い嬉しくなりました。

曲のタイトルに関連した、別のカワイらしいエピソードもあります。こちらも小学生の生徒さんですが、新しい曲を練習して、だんだん弾けるようになってきたことが嬉しようで、いつにも増して張り切って弾いていました。でも、曲には「夕べのうた」というタイトルが付けられています。「夕べ」の意味について説明しましたが、それでも張り切って元気よく演奏しているのでした。

そのため、「夕方の曲だから、これからだんだん夜になって暗くなっていくんだね。それで、お家に帰って、あ~今日も一日頑張ったから疲れたという感じになって、ご飯を食べて、その後寝るのかもね。例えばこんな感じの曲かな」とお話をしますと、生徒さんは、「えっ?そうなの? 夕方って、これからお家の中で何して遊ぼうかなあ~という、お楽しみの時間だと思った」と言うのです。楽曲を実際に弾くと、やはり静かで落ち着いた感じに弾いた方がふさわしいのですが、曲のタイトルからイメージするという点では、それも一つのアイデアだと思い、「なるほど~」と思ってしまいました。

お子様の自由な発想やイメージ作りは、大人顔負けの幅の広さで、凄いなあと改めて感じました。このような感性も、音楽には大変重要だと思いますので、大切に育んでいきたいと思いました。

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