今回は、50代の女性の生徒さんのお話です。

この方は、私がレッスンを担当してから 5・6年ほどたっています。
レッスンでは、ピアノのテクニックの教材と題名のついた曲を弾いています。11月くらいに今まで練習をしていた曲が終わりましたので、次に弾く曲をご相談して、ベートーヴェンの第9を弾くことにしました。

ベートーヴェンの第9とは、よく年末になるとコンサートやテレビでも、さかんに演奏される交響曲第9番のことです。壮大なスケールの曲で、特に終楽章では合唱や歌のソリストが入り、とても華やかになる曲です。

有名な曲ですし、曲のアレンジがこの生徒さんのレベルに合っていましたので練習をすることになりました。

ただ、練習を始めるタイミングとして、ちょっと遅かったかなと実はひそかに心配をしていました。おおよそ、大人の生徒さんの場合、1曲仕上げるのに、2・3カ月はかかるからです。

でも、着々と練習をなさっていたようで、2008年最後のレッスンの時には、つい1週間前の演奏と比べて格段にお上手になっていたのです。

「ずいぶんと安定してすらすら弾けるようになりましたね」と言うと、「もう必死に練習してきました」という返事が返ってきました。そして、めでたく年末までに仕上がったのです。

満面の笑みを浮かべて、お帰りになりました。

ちなみに、この第9と呼ばれているベートーヴェンの交響曲第9番は、正式名称ではありません。実は、以下のような、とても長い名前のついた曲なのです。

シラーの領歌{歓喜に寄す}を終末合唱とし、大オーケストラ、4人の独唱者と4声の合唱の為に作曲され、プロイセン国王フリードリッヒ・ヴェルヘルム3世陛下に、ルートヴィヒ・ベートーベンによって最も深い畏敬のうちに献呈された交響曲、作品125

歌の歌詞は、ドイツの詩人で歴史学者や劇作家、思想家としても活躍をしたフリードリヒ・クリストフ・シラーの原詩にベートーヴェンが手直しをしたものです。

曲自体も壮大なスケールですが、曲の名前もすごいスケールだったのですね。

シラーについては、ヨーロッパ音楽紀行でも書いておりますので、合わせてご覧ください。
趣味の音楽: ヨーロッパ音楽紀行・ワイマール

「ピアノ教室の出来事」について

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今回は、40代後半の生徒さんのお話です。

この方は、丸10年ピアノのレッスンに通われています。ピアノは今までまったく弾いたことがなかったそうですが、多少は楽譜が読めるという状態から始められました。

ピアノが弾けたらかっこいいだろうなあと思っていたそうで、またご自宅にキーボードがあったのも、ピアノを始めようと思ったきっかけのようです。

初心者の大人の方向けの教材を2冊ほど練習し、そのあとは、少しずつ色々なジャンルの曲を弾いたり、ご自身の弾きたい曲を練習するという進め方をしています。

今まで、エルトン・ジョンさんの「YOUR SONG」や坂本龍一さんの「戦場のメリークリスマス」、モーツァルトの「トルコ行進曲」などを弾いてきました。

今は、ドビュッシーの「夢」を弾いています。

この曲は、以前弾けるようになった曲なのですが、ご本人が「もう一回ちゃんとやりたい。今弾いたら、前よりもうちょっと、ちゃんと弾けるようになるのでは」とおっしゃるので、再度練習をしています。

このお話を聞いたときに、「なるほど、こういう考え方もあるなあ」と思ったのです。

ピアノの曲を練習していますと、どんどん先に進めたい、もっと難しい曲を弾けるようにしたいと思います。これは向上心の表れなので、素晴らしいことです。

しかし、ピアノの楽しみ方ってそれだけではないはずなのです。

ピアノに限らず、日常生活で同じものを見ても、その時の気分や時間帯、状況によって、感じ方がずいぶん違うものになりますね。ピアノも同じなのです。

同じ曲でも、練習をしていた当時は、もしかしたら弾くことに必死だったかも知れませんが、しばし時をおいて再度同じ曲を弾いてみますと、「ああ、やっぱりいい曲だなあ」とか「この部分が好き」というように、以前よりも一段とその曲の良さを噛みしめることもありますし、「今は、この部分がいい」というように、曲の感じ方や印象が変わってくることもあるのです。

時を隔てて、ご自分の感じ方の変化を楽しむ、というような進め方も、ピアノの楽しみ方の一つなのだと改めて感じさせて頂きました。

「ピアノ教室の出来事」について

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今回は、大人の生徒さんの発表会のお話です。

大人の生徒さんはお子様と異なり、色々な目的を持ってピアノのレッスンにいらしています。その中で、「発表会に出てピアノを弾く」ことを目標にされた生徒さんが、発表会に参加されます。そして、発表会に参加される生徒さんは、たいてい毎年参加されます。

反対に、発表会に参加されない方は、一回も参加されないことが、とても多いのです。これは、面白い傾向だと思います。

大人の生徒さんは、発表会独特の雰囲気や会場の大きさなど、周りの状況がよく把握できてしまいますので、その分、強く緊張されているように思いました。

舞台に上がりますと、緊張がピークに達し、手が震えるのはもちろん、ペダルを踏む足も震えていることも珍しくはありません。
また、弾き始めてからも、急に分からなくなってしまって止まってしまったり、弾き直したりと、色々とアクシデントが発生することもあります。

それでも毎年参加されますと、段々と発表会自体に慣れてくるようで、今回参加された生徒さん方はミスはあったものの、ご自身で立て直し、それぞれご立派に弾ききりました。終わった後の皆さんのお顔は、晴れ晴れとされていました。

大人の方ですと、人前で弾くということ自体、大変なプレッシャーです。逃げようと思えば、すぐに出来ます。お仕事などを抱えて、忙しく、思うように練習時間が取れない方も、多くいらっしゃいます。

それでも、発表会に参加してみようというチャレンジ精神の旺盛さと向上心の高さは、とても素晴らしいことだと思いました。

また、参加されている生徒さん同士で終わった直後に「また来年(この場で)お会いしましょう」とお話していて、ますます「すごいなあ」と感じました。

お子様の発表会とは違った感動を味わえた、大人の発表会でした。

「ピアノ教室の出来事」について

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