(この記事は、第55号のメールマガジンに掲載されたものです)
ピアノ教室の出来事、今回は、大人の生徒さんのお話です。
この生徒さんとは、かれこれもう10数年のお付き合いになります。昔ギターを少し弾いていたそうですが、ピアノは全く弾いたことが無い方でした。しかし、たまたま知り合いからピアノを貰ったことがきっかけで、体験レッスンにいらっしゃいました。
今でこそ多くの音楽教室で、大人の初心者の方のレッスンを行っていますが、当時はまだそれほどでもなく、ましてやピアノを貰った事がきっかけで、お子様や奥様ではなく、ご主人様がピアノを始めるということに、少々驚いた記憶があります。
その時は、リチャード・クレイダーマンの易しくアレンジされた曲集をお持ちになり、「こういうのを弾けるようになりたい」とお話をされていました。
まだ30代で、ギターを少しやっていたこともあり譜読みも速く、比較的早い段階で、憧れだった「渚のアデリーヌ」を弾けるようになり喜んでいました。
その後、リチャード・クレイダーマンの作品を数曲弾いたり、映画の音楽を弾いたりしていましたが、そのうちに「クラシックを弾いてみたい」と話されるようになりました。
大人の生徒さんは、初心者や中級者などレベルに関わらず、以前からクラシックが好きな方が多いようで、この方のように色々なジャンルを弾いていても、「いつかはクラシックを弾いてみたい」というお気持ちを持たれているようです。
そして、易しくアレンジされたクラシックの作品を弾くようになり、その後原曲も弾けるようになってきました。
ベートーヴェンの「エリーゼのために」やモーツァルトの「トルコ行進曲」という、大人の生徒さんの憧れであり人気がある曲や、ショパンの「ノクターン第2番」なども弾いてきました。
ショパンに関しては、これまでよりもかなり難しい曲なので、いつも以上にご自宅での練習を熱心にされていて、レッスンも補講を入れて、発表会直前までレッスンをしていました。相当難しかったそうですし、ご苦労もされてたかと思いますが、演奏後に満足そうな笑顔をされていたのが印象的でした。
今は、秋の大人の発表会に向けて頑張っておられます。
大人になってからピアノを始めた生徒さんでも、このようにクラシックのピアノ曲を原曲で弾けるようになることは多々あります。目標の一つにしてみても良いかもしれません。
(この記事は、第54号のメールマガジンに掲載されたものです)
たのしい音楽小話、今回は、音楽とグルメのお話です。
私自身、料理やスイーツを作るのも食べるのも、とても興味があり好きなのですが、音楽が好きな方や職業とされている方でグルメ好きな方は結構多いように思います。
例えば、ピアニストであり音大の教授でもある横山幸雄さんは、自身でレストランを経営されています。音楽とグルメを結びつけたコンサートをなさっている方もいらっしゃいます。
また、音楽とグルメは切っても切れない関係という見方も出来ます。レストランに行きますと、必ずと言っていいほど音楽が BGMで流れていますし、オペラ鑑賞の後にレストランで、今見てきたオペラについて語り合う光景は、ヨーロッパではごく当たり前のようです。
最近では、牛などの動物にクラシック音楽を聴かせるとか、お酒やパンの発酵の時に音楽を聴かせたり、植物を育てるときにモーツァルトを聴かせる事も行っているそうです。音楽は、もはや人間だけではなく、あらゆる生物の生長や癒しに、欠かせないアイテムになっているのかもしれませんね。
以前、フランス料理の「牛肉のステーキ ロッシーニ風」とは、作曲家のロッシーニのことであるとお話をしました。彼は、イタリア生まれですが、途中でフランスのパリに移り住んでいます。その理由が「美味しいものを食べるため」とも言われています。それだけではなく、養豚場を始めたり、レストランを始めて色々なメニューを生みだしているのです。
また、グルメを題材にした音楽も次々と作曲しました。デザートを題材にしたり、食材を題材にしているのですが、その中で特に面白い題名の曲は「ロマンチックな挽き肉」という曲です。まだ、聴いたことがないのですが、どうも挽き肉にする機械の音を表している音楽のようです。
ロッシーニ以外でも、「主よ、人の望みの喜びよ」などで有名な J.S.バッハは、「コーヒーカンタータ」という曲を書いています。コーヒーにすっかりはまっている娘と、それをやめさせようとする父親がテーマの楽しい音楽です。バッハが活躍していたライプツィヒは、コーヒーが有名な土地なのだそうです。またコーヒーを飲めるコーヒーハウスでコンサートも行っていたそうで、そこで演奏するために、バッハは「コーヒーカンタータ」を作曲したと言われています。(ライプツィヒについては、ヨーロッパ音楽紀行・ライプツィヒもご参照ください)
音楽家は、貴族のお抱え音楽家だったり貴族のサロンで演奏していたので、貴族たちに美味しい食事をご馳走になりグルメな人が多かったのだそうです。
しかし、時にはそうでない作曲家もいます。
ベートーヴェンは、ロッシーニのように自ら料理をして友人達にふるまっていたそうですが、かなりイマイチな味だったそうです。イマイチどころか、その料理を食べた友人達が、お腹を壊したり食中毒にかかったこともあるそうです。でも、ベートーヴェンは「こんなに美味しいのに」と納得がいかなかったそうです。
音楽もグルメも美を追い求めていく部分がありますが、それはかなり個人差があるのかもしれませんね。
(この記事は、第54号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、お子様のピアノ発表会のお話です。
毎年夏に行われる、お子様を対象としたピアノ発表会が先日無事に終わりました。
生徒さんも終わってほっとしていると思いますが、一番ほっとされているのは、親御さんを始めとするご家族の皆様かもしれません。
「なんとか無事に終わってよかったです」と安堵の表情でお話されている、お父様やお母様方が何人もいらっしゃいました。
小さなお子様が、恥ずかしそうに舞台に上がり、お辞儀も忘れてぼーっと立ったままというかわいらしい姿に、会場がふと和やかな雰囲気になった時もありました。
また、中高生が難しい曲を一生懸命弾いている姿に、会場全体が引き込まれ、釘づけになっている時もありました。お子様が舞台の上で、緊張と戦いながら頑張っている姿は、毎年のことながら感動を覚えずにはいられません。
ピアノを指導する立場になって、もう10数年経ちますが、慣れていることがある半面難しさを痛感することも多々あります。その1つを挙げますと、「生徒さん全員が、一番良い状態のときに発表会を迎えること」です。
ピアノに限ったことではないのですが、何かを習得するまでには、「上手にできる、上り調子の時期」と「調子が今一つになる、崩れる時期」がやってきます。
この上り調子の時期に発表会が重なると、当日満足いく演奏ができるものですが、時期を合わせるのがとても難しいのです。
今年も、発表会前の最後のレッスンで、ちょっと崩れ始めた生徒さんがいて、レッスン内で調整をしたのですが、当日ちょっと惜しいミスが出てしまいました。全体的には良かったので、尚更「発表会が数週間早かったら・・・」と思ってしまいました。
逆のパターンもあります。数週間前のレッスンでは、「弾けてはいるけれど、もう一段内容の深い演奏が出来れば・・・」という生徒さんがいましたが、最後のレッスンでは上り調子になってきて「当日、この演奏をもう一回聴きたい」という状態でした。そして、発表会本番では、最後のレッスンと同じく、またそれ以上に深みのある演奏が披露出来たのです。
発表会本番では、普段の演奏にプラスして、臨機応変さも大切です。何かアクシデントが発生した時に、どう対処するかで全体の演奏に影響が出るからです。これは、本番を想定した練習と、ある程度の場馴れで習得できるようになります。
私自身も振り返ってみますと、小さい頃は、ガチガチに緊張していました。
よく「頭が真っ白」になるという例えをしますが、あれは本当に頭が真っ白になるんですよね。本当に驚いたのですが、その時はなんと、気が付いたら曲の終りのほうに進んでいたので、ちゃんと弾いていたようです。記憶がないので、演奏としてはあまり良い出来ではないと思いますが、一応なんとか乗り切りました。
また、ピアノの試験中に停電になったこともあります。弾きながら「あれっ、なんだか暗くなった!」と思ったら停電だったのです。「真っ白」ではなく「真っ黒」ですね。そんなアクシデントがあっても、弾き続けました。もし、停電だからと言って止まったら、おそらく不合格になっていたと思います。本番は、本当に何が起こるか分からないものです。
今回の発表会でも、間違えてしまった生徒さんがいましたが、それでもどんどん先を弾けた生徒さんと、止まってしまって前から弾きなおした生徒さんがいました。当然止まらない方がよいので、全員がこの対処方を身に付けてくれたらと思いながら聴いていました。
最後に、発表会などの本番で絶対にしてはいけないことを一つだけお話いたします。
これは、昨年の「ピアノ教室の出来事」でも書きましたが、ネガティブなことを言わないことです。「(暗譜を)忘れそう」「間違えそう」などと声に出さない事です。
本当にそうなってしまった生徒さんが何人もいます。私自身も、ずいぶん昔に一回そうなってしまったことがありました。
これを覚えておくだけで、本番上手に力が発揮できると思います。
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