(この記事は、第69号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回のピアノ教室の出来事は、東北地方太平洋沖地震です。
先週、大地震が起きました。被災者の方々には、心からお悔やみ申し上げます。
大手のピアノ教室では、天災などが起きた場合、事務所(本部)から指示が来ますので、それに従う事になっています。例えば大雪などの場合、休講や、午前中のみ休講などの決定がなされ、各教室へ通知されます。そして、各教室から、私たち講師に連絡が来て、講師が生徒さんに連絡を取ります。
私たち講師が自宅にいる場合には、家の電話から生徒さんのご自宅などに連絡をすればよいわけですが、教室に到着してから休講の決定がされた場合、携帯電話がなかった昔はなかなか大変でした。限られた数の電話機を使って、ピアノ科も、声楽科も、ヴァイオリン科も、ご自分の生徒さん方に連絡をするわけです。順番に電話を使用する事になりますが、あまりのんびりともしていられません。
現在では、携帯電話が普及し、随分連絡が容易になりましたが、しかし、今回の大地震は想像をはるかに超えたもので、連絡手段が寸断された事で、この連絡網も機能しませんでした。
固定電話や携帯電話を使って、何回も本部や生徒さんのお家に電話をかけましたが、殆ど繋がらず、かけ続けて数時間後に、やっと教室と連絡が取れたくらいで、生徒さん方とは、残念ながら殆ど連絡が取れませんでした。メールを使用して連絡を取ったりもしましたが、送信出来ても、きちんと届いていなかったようです。
翌日、お詫びと安全確認を兼ねて、生徒さん方に連絡をしたところ、まずは皆さん無事だったので安心しました。しかし、皆さん大変だったようです。
1回目の大きな地震が起きたときに、小学生の生徒さんは、下校途中だったそうです。信号機の支柱にお友達としがみついて、難を逃れたとお話していました。
またある生徒さんは、テスト期間で早く帰宅していたのですが、お買い物に都心まで出ており、そこで地震に遭遇したそうです。その後、無事にお母様と合流することができましたが、徒歩で夜10時くらいにやっと帰宅出来たそうです。
私自身も、このような大地震は経験したことがなく、今思いますと、対応について考えさせられたり、反省する点もありました。例えば、教室自体の対応の迅速さも求められるわけですが、このような天災の場合、救急車などを呼ぶ方々のために、電話の使用を控えなくてはならないことも、後になって気づきました。
今後は、生徒さん方と、天災が起きた時の対応について事前に意思統一をしつつ、家族とも連絡手段や対応について、きちんと決め、天災に備える対策も欠かせないと思い知らされました。
被災地の一日も早い復興も、心からお祈りしています。
(この記事は、第69号のメールマガジンに掲載されたものです)
今年は、フランツ・リスト生誕200年の記念イヤーですが、今回の「たのしい音楽小話」は、先日開催されましたフランツ・リストのコンサートのお話をいたします。
通常よくあるピアノリサイタル(コンサート)は、複数の作曲家の曲を並べるプログラム構成になっていますが、今回聴きに行きましたリサイタルは、全てリストの曲という構成になっていました。フランツ・リストの世界を深く、しっかりと堪能することができます。この珍しさに惹かれて、足を運びました。
ピアニストは、横山幸雄さんです。横山さんは、第1線のピアニストとして活躍されているだけでなく、2009年にヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで日本人として初めて優勝した辻井伸行さんを指導された大学教授でもあります。また昨年は、ショパンのピアノ曲を全曲暗譜で演奏しギネスに認定される快挙も揚げられました。演奏とお食事を楽しめるレストランも経営されており、まさに多方面に渡って活動をされています。
今回のリサイタルでは、リストの「リゴレットパラフレーズ」「2つの伝説」「演奏会用練習曲」「愛の夢 第3番」「ラ・カンパネラ」「ピアノソナタ」を演奏されました。
リストは、当時コンサートピアニストとして絶大な人気がありました。今で言う、ジャニーズ事務所や宝塚のトップスターのような感じで、コンサートでは、興奮しすぎた観客が失神したという話まであるくらいです。容姿端麗で、素晴らしくて華麗な演奏は、当時の人々を虜にしていたようです。
しかし、リストは、そのような華やかな面だけではなく、多くのお弟子さんを育てた教育者でもあり、また、他の作曲家が、声楽や他の楽器のために書いた作品を、ピアノ用にアレンジする編曲家、神父となり宗教家としての側面もありました。
今回のリサイタルでは、「練習曲」は教育者としてのリスト、「リゴレットパラフレーズ」は編曲者、「2つの伝説」(実在した聖者をテーマにしている)は宗教家としての側面を楽しむことができました。
有名な曲がとても多かった事や、週末の昼間の開演で、一流のピアニストのリサイタルにも関わらず比較的リーズナブルな価格だった事もあり、小学生くらいのお子様の姿もあちこちに見かけられました。
コンサートの冒頭では、横山さん自らが、今回のリサイタルの解説をお話されていたので、より興味深く聴くことが出来ました。横山さんの演奏は、とても聴きやすく分かりやすい演奏で、真珠のような光沢がありながら、どこか落ち着いた上品さを感じる音色でした。
どの曲を弾いても、とても余裕が感じられ、演奏が終わっても精根尽き果てたという感じが全くなく、良い意味でひょうひょうとされていました。2時間のコンサートを行った後とは思えない雰囲気は、オリンピックの女子マラソンで金メダルを獲得し、ゴール後もケロッとしていた高橋尚子選手を思い出しましたが、本当にすごい人というのは、軽々とすごい事をなさるんですね。
予定のプログラムが終わった後も拍手が鳴り止まず、アンコールの演奏を披露されていました。しかも、3曲もです。こんなにサービス精神のあるピアニストも珍しいかもしれません。やはり全てリストの作品で、シューマンの歌曲を編曲した作品などを披露されていました。
ショパンの曲を聴くことはあっても、リストは「愛の夢第3番」や「ラ・カンパネラ」くらいしか聴いたことがない方も多いかと思います。今年は、記念の年ですので、是非色々なリストの作品を聴いてみて下さい。
(この記事は、第68号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回のピアノ教室の出来事は、幼稚園生の生徒さんのお話です。
この生徒さんは、昨年海外から帰国して、お教室に通われるようになりました。海外では日本人の先生にピアノを習っていたようです。偶然、私がお子様のレッスンで使用している教材と同じ物を使っていたので、そのまま続きを行う事になりました。
お母様が、少しピアノがおわかりになる方の様で、お家での練習を見ているそうです。
その為、毎回きっちりと練習をしてきていて、着実に教材が進んでいます。お子様のレッスンの場合、音符の種類やその書き方を覚えたり、その他の音楽知識やリズムの練習をする「ワーク」を併用しているのですが、そちらも毎回3ページほど進んでいます。しかも、ほとんどが正解しているのです。
このワークの中には、「四分音符と八分音符を足したら、何音符と同じ長さになるのか?」とか「8分の3拍子の曲に出てくる4分音符は、何拍伸ばす音符なのか?」というような、小学生でも間違えそうな少々ややこしい問題もたくさん登場します。
また、「真ん中のドから数えて、2オクターブ高いド」など、自分で横線を書いて音符を書く、いわゆる加線を使った音の読み方なども、慣れないとかなり面倒に感じる問題ですが、ほとんど完璧にこなしているのです。
このような場合、本人がどのくらい理解しているのかバラツキがありますので、ワークに○を書きつつ、復習をしています。そうしますと、この生徒さんは、やはりほとんど正解を答えるのです。このくらいの年齢の生徒さんで、これだけ音楽的な知識を理解している事は、とても珍しく、驚きました。
また、ピアノを弾く練習の方も、毎回必ず1・2曲は仕上がっているので、合格しています。レッスンでは、他の生徒さんもそうですが、まずは1回通して弾いていただいています。お家での練習の成果を聴きたいので、間違っていても、ほとんど何もコメントせず、そのまま曲が終わるまで聴いていますが、先日のレッスンで、この生徒さんが1回通して弾いた後、質問をしてみました。
「○○ちゃん、よく通して最後まで両手で弾いたわね。頑張ったね。この曲、よく弾けているから、早く終わらせようと思うんだけど、その前に、聴きたいことがあるの。今の演奏でね、「あっ、ここは楽譜とちょっと違っていた」という所があったら、教えてほしいの。ちょっと難しい質問だけどね」
そうしますと、ちょっと困った様な顔をしていました。
「ちょっと難しい質問だから、勘でもいいよ。もし○○ちゃんが気がついていたら、「そう、ここよね」ってなるし、もし違っていたら「ここなのよ」って言うだけだから、気楽に考えてね」
そうしますと、○○ちゃんは、小さな右手を出して、恐る恐る楽譜のある部分を指して「ここ・・・」と答えました。
大正解です。しかも、2ヵ所共です。
「よくわかったわねえ。」「すごいわね。」と褒めたら、とても嬉しそうな顔をしていました。
「勘でもいい」と話したのですが、どうも偶然ではなく、きちんと分かって答えていると思ったので、翌週のレッスンで、また別の曲で同じように質問をしてみました。そうすると、やはり正解するのです。
小さいお子様の生徒さんに限った事ではないのですが、生徒さん自身に聞いてみますと、やはりこちらが想像する以上にピアノを弾きながら、ご自分の演奏を聴いているようです。そのため、楽譜と違う箇所なども理解しているのです。
音の間違いやリズムの間違いなど、演奏を聴いた瞬間に指摘することが、ベストではないということを、改めて感じました。
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