(この記事は、第86号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「ピアノ教室の出来事」は、大人の生徒さんのピアノ発表会のお話です。
夏休みの時期には、お子様の発表会があり、秋には大人の生徒さんの発表会があります。今回の発表会では、ほとんど毎年出演されているベテランの生徒さんの他に、初参加の生徒さんも何人かおられました。
今回出演された生徒さん方は、本番1ヶ月前からの進歩が素晴らしく、レッスンでも演奏がぐんぐんと上達されていたので、本当に驚きの連続でした。
「すごいですね。1週間前と比べて、すごく良くなりましたよ。」
「先週のレッスンでも、いいなあ~と思っていましたが、今日もやっぱりよく出来ていましたよ。」
「思った以上に、よくお弾きになれているので、びっくりしました!」
などと、声をかけていました。
「そうですか。あぁ~、よかった」と、ほっとされている生徒さんもいましたし、「先生、コレが上手なんだから・・・」と手でゴマを擦るジェスチャーをしつつ、でも嬉しそうな表情の方もおられました。
お子様ですと、1週間で急成長することが時々ありますが、大人の方がお子様と同じくらいに見る見る進歩し、それがお一人だけではないというのは、これまでになかった現象です。
レッスンの時に、「随分上達されましたね。猛練習されたのですが?」と聞きますと、「はいっ!」と即答された方が何人もいました。
やはり練習して努力を重ねることは大切ですし、その努力はちゃんと演奏に反映されることを感じました。
ショパンをお弾きになった生徒さんは、本番直前のレッスンで「今回、ここまで色々と(曲の表現などについて踏み込んだレッスンが)出来たので、本番、もし失敗しても満足できると思います」とお話されていたのも印象的でした。
この生徒さんは、本番で多少のミスはあったものの、流れるような演奏で、納得のいく演奏が出来たようでした。
「ここが、いつもちゃんと弾けないんだよね。鬼門だな」とおっしゃっていた生徒さんも、本番では無事に弾けていましたし、選曲の段階で「この曲は、かなり難しいかな」と思っていた生徒さんも、立派に弾きこなしていました。
組曲を数曲お弾きになった生徒さんは、「1曲目が特にとてもよかったですね」と声をかけますと、ご家族の方が直ぐに、「そうそう、ホントに良かったよ」とお話しされ、それを聞いて更に嬉しそうな顔をされていました。
小さい頃からずっとピアノを弾かれている生徒さんは、少し暗譜のミスが出てしまって「やっちゃいました・・・」とお話されていましたが、「あのくらいのミスは、(聴いていても)そんなにわからないですよ。初めての発表会ですから、もう上出来です!」と声をかけますと、「そうですかぁ~」とホッとした表情をされていました。
個人的には、今回出演された方全員が、普段のレッスンで聴いていて「とっても上手だなあ」と思っていた箇所が、本番でも発揮できていたことが、何よりも良かったと思います。
生徒さんご自身は、あまり気が付いていないようですが、演奏のレベルにかかわらず、絶妙な間の取り方、リタルダンドやディクレッシェンドの分量、ペダリングや音のバランスなど、人を引き付けてキラッと光る演奏が、どなたにでもあるものです。
それが、その方の持っている良さですので、本番で発揮できたことは、指導する立場としても嬉しい限りです。
そのような意味でも、今回の発表会は、出演された生徒さん同様、私も満足できる発表会になりました。
(この記事は、第85号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、小澤征爾さんのお話です。
先日、小澤征爾さんが、高松宮殿下記念世界文化賞を受賞されました。小澤征爾さんは世界で活躍している指揮者で、新聞記事などでも「世界のオザワ」と紹介されることが多いと思います。
日本人の演奏家や音楽家はたくさんいますが、世界で、しかも巨匠クラスで活躍されている方は、本当に極わずかです。
多くの音楽家を輩出している桐朋学園の前身である「子供のための音楽教室」を開設した一人で、当時の指揮者でチェリストでもあった齋藤秀雄や、カラヤン、バーンスタインなど、世界トップクラスの音楽家達に学んでいます。
主に海外で活躍されていて、ボストン交響楽団の音楽監督を30年ほど務め、その後はウィーン国立歌劇場の音楽監督なども務めています。毎年1月に行われる、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の「ニューイヤーコンサート」でも、日本人指揮者として初めて指揮を振りました。
日本での活躍も増えており、長野オリンピック開会式での演奏や、サイトウ記念オーケストラの音楽監督、小澤征爾音楽塾での活動などもあります。
そして、3年前には、文化勲章を受賞されました。
音楽に対しとても情熱的で、ほとんどの作品を暗譜して指揮を振っているスタイルは、見ているだけでも全身全霊を込めて音楽と向き合っているように感じられます。
今回受賞された高松宮殿下記念世界文化賞は、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の5つの分野で、世界的に顕著な業績をあげた芸術家に授与されるものです。
音楽部門では、小澤征爾さんが初めての日本人受賞者となりました。この音楽部門の歴代の受賞者を見ますと、以下のようなすごい顔ぶれに驚きます。
・18歳でショパンコンクールに審査員全員一致で優勝し、その後もトップピアニストであるマウリツィオ・ポリーニさん
・ベートーヴェンのピアノ曲を全曲録音した最初のピアニストである アルフレート・ブレンデルさん
・ウィーン・フィル恒例のニューイヤーコンサートで何回も指揮をしているズービン・メータさん
・7歳でピアノコンサートを行った神童で、その後指揮者としてもデビューし、ベルリン国立歌劇場の音楽総監督も務めたダニエル・バレンボイムさん
・女性で初めてショパンコンクールに優勝し、その後も大人気ピアニストであるマルタアルゲリッチさん
・ミラノ・スカラ座の常任指揮者やウィーン国立歌劇場の音楽監督、ベルリンフィルの芸術監督を務め、小澤征爾さんと同じくバーンスタインやカラヤンに見出されたクラウディオ・アバドさん
・ジャズ界の巨匠ピアニストで、グラミー賞を7回獲得し、カルガリー冬季オリンピックの開会式の音楽なども作曲したオスカー・ピーターソンさん
・劇団四季の公演でも有名な「エヴィータ」「キャッツ」「スターライト・エクスプレス」「オペラ座の怪人」など大ヒットミュージカルを次々と作曲しトニー賞やグラミー賞なども受賞したアンドリュー・ロイド・ウェッバさん
・巨匠パブロ・カザルスも絶賛した、20世紀最高のチェリストで、モスクワ音楽院の教授を務め、指揮者としても活躍しつつ、国際人権連盟賞やアルベルト・シュヴァイツァ賞を授与されるなど、数多くの賞を受賞しているムスティスラフ・ロストポーヴィチさん
・指揮者・作曲家でありミュージカル「ウエストサイド物語」でも有名で、小澤征爾さんなども育てたレナード・バーンスタインさん
ちなみに、演劇・映像部門では、映画監督の黒澤明さん、歌舞伎役者の中村歌右衛門さん、坂田藤十郎さん、建築部門では、安藤忠雄さんなどが受賞されています。
小澤征爾さんは、世界で活躍しつつ、いくつもの病気と戦い、昨年は食道癌の手術を受けました。
その後、見事に復活され、ニューヨークで指揮をされたときには、物凄い拍手喝采とスタンディングオベーションで、あちこちのニュースで大きく取り上げられました。
これからも、まだまだ活躍される姿を見たいですし素晴らしい演奏を聴きたいですね。
(この記事は、第85号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「ピアノ教室の出来事」は、大人の生徒さんの発表会の準備についてお話いたします。
大人の生徒さん方の発表会が、刻々と近づいています。本番まで数週間なので、出演される生徒さんは、最後の追い込みの時期に入っています。
お仕事をされている方が殆どなのですが、普段と違い、皆さん練習量を増やしているようです。また、発表会の前には、普段と違う練習も必要となることがあります。
例えば、生徒さんの半分近くは、自宅で電子ピアノを使って練習をされていますが、本番ではフルコンサートピアノを弾くことになります。
ピアノの演奏レベルにかかわらず、弾くピアノが異なると、その弾き心地の違いを敏感に感じるものですが、電子ピアノとグランドピアノでは、尚更その違いを強く感じることになります。
先日レッスンにいらした方は、発表会でテンポの速い、軽快な曲を演奏するのですが、「家の電子ピアノで弾くとすぐに音が鳴るのに、グランドピアノは鍵盤が重くて、家のように弾けない」とおっしゃっていました。
電子ピアノでも、高価なものになりますと、本物のピアノに近い作りになり、鍵盤の重さや感触がかなり似てくるのですが、多くの電子ピアノは、かなり鍵盤が軽いので、本物のピアノを弾くと、鍵盤が重くて弾きにくいと感じるようです。
その方は、ご自宅の楽器を変えることは難しいので、音楽教室のレッスン室を借りて、仕事帰りや仕事の合間に30分から1時間ほど練習にいらしています。
最近では、徐々にグランドピアノにも慣れて、演奏が安定し、本来の実力が発揮出来つつあるようです。
学校関係の仕事をされている方で、職場のピアノを借りて練習されていたり、街中にあるレンタルスタジオで練習されている方もいました。皆さん、工夫をしながら練習を積んでいるようです。
また、現在は本番前なので、レッスンでも1回通しで弾いてもらっていますが、その時に色々とクセが出てしまうことがあり、それを直す練習もしています。
大人の方で割と多く見られるクセが、間違えた時に、始めから弾き直してしまうクセです。
普段のレッスンでも、間違えた時にピタッと止まり「あっ間違えた。もう1回始めから」と言って弾いていたりします。
間違えた箇所やフレーズも影響するので、一概に始めから弾き直すことがよくないとは言えませんが、それがクセとなり、「始めからでないと弾けない」という状況は改善が必要になります。
特に、本番では緊張することもあり、1度も間違えずに弾くことはかなり難しくなります。間違えないことよりも、間違えた時にいかに最小限のミスだけで済ませて、演奏を継続できるかが重要になってきます。
曲の途中から弾くのが難しかった生徒さんも、レッスンや練習を繰り返すことで、最近では結構慣れてきたように思います。
本番でどこまで力を発揮できるのか、最後の数週間の練習がカギだと思います。
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