(この記事は、第162号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、兄弟・姉妹でのピアノレッスンについてです。
ピアノ教室の生徒さんの中で、兄弟や姉妹で通われている方も割と多いものです。お姉さんと弟というパターンもあります。
最初は、上のお子様が通っていて、送り迎えに、お母様に連れられて下のお子様が来ていて、興味を持ち始めるというパターンです。
「ぼくも、大きくなったらピアノやるんだ!!」と、お姉さんのお迎えに来るたびに、話していた弟さんもいました。
やがて、兄弟揃って続きの時間でレッスンを始めると、一緒にレッスン室に入って、途中で弾く人が交代する感じになります。
上の子がレッスンをしているときは、下の子が待っていて、下の子がレッスンをしているときは、上の子が待っています。
やがて、兄弟別々に異なる時間にレッスンをするようになるのですが、個人的には、兄弟のレッスンは、なるべく早い段階で個別に行うようにした方が良いと思っています。
特に、上の子の態度は、兄弟一緒のときと別々にレッスンするときでは、ガラリと変わります。
上の子は、下の子の面倒を見るという役割がすっかり身についているものです。これは、普段の生活では必要なことだと思いますが、ピアノのレッスンでは、そういう役割を取り払ってレッスンをした方がよいように思うのです。
一人だけですと、とても自由に「のびのび」した態度になり、演奏も変わってきますし、なにより楽しそうです。
私も、「○○さんのお兄さん」「○○さんのお姉さん」として見ることがないので、気が楽になるのかもしれません。
また、下の子にも、良い影響があるように思います。
兄弟の関係や性格にも寄るのでしょうが、お兄さんやお姉さんを頼りにして、わからないことを教えてもらう癖がついていることがあります。
そのため、ピアノのレッスンで何か質問をすると、すぐに「わからない」と答えるのです。
すごく考えても分からないというのではなく、ちょっと考えて、難しい、分からないと言っているようです。
また、「○○ちゃんは、どう思うかな?」と自分の感じた気持ちについて質問をしても、同じような状態になります。
まだ小さいので、頭では分かっていても上手に言葉や文章にならない事もありますが、しかし、兄弟がいない状態で、レッスンの度に質問をして、焦らせないように待っていますと、徐々に自分の頭で考え、自分の意見が言えるようになってきます。
兄弟・姉妹でピアノを楽しむのは、お互いの刺激になり、共通の趣味にもなると思います。
そして、同じ曲を弾いても、それぞれのお子様の個性が演奏に現れるので、親御さんから見ても、とても楽しいのではないでしょうか。
ちょっとした工夫で、それぞれのお子様が、より大きく伸びていければと願っています。
(この記事は、第161号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、音楽演奏とご家族の理解についてです。
ピアノのレッスンをしていて、残念に思う事の一つが生徒さんの退会です。
かなり長くピアノの講師をしていますが、いつも残念で悲しくなります。
このことは、ピアノの先生が集まると必ず話題の一つに挙がるので、みんなそのように感じていると思います。
ピアノを辞めるタイミングとして、お子様の生徒さんで一番多いのが受験です。
高校受験も多いのですが、最近では中学受験も珍しくなく、クラスの半分は中学受験すると答えた小学生の生徒さんもいました。
そうなると、小学校4年生くらいから塾に行き始め、小学校6年生で、「受験をするので、ピアノは辞めます・・・」となってしまう訳です。
塾によっては、「小学校4年生では遅いです。小学校3年生からスタートしないと」と話しているところもあるようです。
大人の生徒さんの場合、ご本人やご家族の体調不良が一番多く挙げられます。
特に高齢となりますと、当初の予定よりも長い入院となってしまったり、リハビリが思うように進まず時間がかかることもあります。
家族の体調が悪く、入退院を繰り返していることがきっかけとなり、ピアノを辞めてしまった方もおられました。
入院中はまだしも、退院後は連日病院通いで、つきっきりに近い状態となり、そうなると介護する方もくたくたに疲れてしまい、レッスンどころか自宅での練習も難しいようです。
「実は、今度入院することになりまして・・・」、「主人の体調が悪く・・・」などのお話を前々から聞いていて、その結果としてピアノを辞めてしまう事は、まだ理由が明白なので納得もできます。
しかし、そのような前触れもなく、突如辞めてしまわれる事が先日ありました。
思い当たる事が全く無かったので、本当にビックリしたのですが、少しお話を伺いますと見えてきました。
どうも、ご家族の理解が得られなかったようなのです。
音を出して楽しむことがピアノであり音楽なのですが、曲が完成するまでには、同じ所を何回も練習したり、それでもあまり進歩しなかったりと色々あるものです。
弾いている本人も辛い時期なのですが、それが聞こえてくるご家族も辛いという事なのでしょう。
大人の方ですと、お子様のように、ちょっと弾いたらコツが掴めたとか弾けてしまったということは少なく、習得に時間がかかることの方が多いと思います。
そのため、しばらくご家族との間でギクシャクしていたようです。
消音ピアノや電子ピアノなどを提案するタイミングもないまま、お別れになってしまったことは、とっても残念に思いました。
このようにご家族の理解が得られず、辞められた生徒さんもいれば、その一方で、ご家族が亡くなった悲しみを、ピアノを弾くことで乗り越えて行かれた生徒さんもいらっしゃいます。
音楽は、一人でも複数人でも楽しめ、色々な楽しみ方が出来て、とても心が潤い、癒され、活力が沸く素晴らしいものです。
しかし、生活を共にする家族の理解を得ながら音楽を楽しめるようなアイデアも必要なのだと、考えさせられました。
(この記事は、第160号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、先日行われた大人の生徒さんの発表会のお話です。
毎年このくらいの時期に行っていますが、今回は初の試みとして、お子様の発表会で使用するような大きなホールで開催しました。
これまでは小さめのサロンのような会場で開催していて、アットホームで比較的気軽に参加できる雰囲気がよかったのですが、コンサート専用の会場ではないため、どうしても音響的には少し残念な面がありました。
そこで、音響効果の高いコンサートホールで、スタインウェイの大きなグランドピアノを弾く体験を大人の方にしていただくのもよいのではと思い、今回は会場を替えてみました。
お子様の発表会の場合、出演される生徒さん1人に付き、ご両親や兄弟、祖父母の方が応援にいらっしゃるので、それなりに多くのお客さんの前で弾く雰囲気になります。
しかし、大人の発表会の場合、ご家族が応援に来る事も少なく、普段のレッスンのように、お一人でいらっしゃることも珍しくありません。そのため、場合によっては、空席が気になる事もあるのです。
今回は、大きなホールなので、空席だらけという印象になってしまったらどうしようと、少し心配をしていましたが、実際には思ったよりも空席が気にならず安堵しました。
今回参加されない生徒さんにも、事前にプログラムをお渡ししていたので、その方々もいらしてくださったようです。
演奏が始まり、出番直前の生徒さんが、舞台袖に続々と集まってきました。
お子様の発表会では、話すことも無く、比較的シーンとしてピリピリとした空気が流れるのですが、今回は神妙なお顔をされつつも、「いや~、もう緊張しちゃって・・・」と、生徒さん同士でお話をされていました。
「楽譜はどうされますか? 見て弾きますか?」という問いかけに、「あら、どうしたらいいでしょう? どうしたらいいと思います?」というお返事をしつつ、「でもね、置いていても、あまり見ていないのよね~。あっ、でも分からなくなっちゃった時には、いるかしら?」と逆に質問される場面もありました。
「そうですね、もしもの時の保険みたいに、ちょっと置いておくだけで少し安心という事もあるかもしれないですね」とお答えをして、その生徒さんは、お守り代わりのように、一応楽譜を見て弾くことになりました。
また、「短い曲なのに、緊張しちゃって・・・」とお話されている生徒さんに、「弾いて物足りなかったら、2回くらい弾いてもいいですよ~」とお話をして、「この曲だったら、何回もこの部分を弾けるから、エンドレスになっちゃうかも!?」と、笑いが出る場面もありました。
発表会は、予定よりも少し時間がかかりましたが、無事に終了しました。
状況をあまりよく理解できないうちに、勢いで本番を終えることも少なくないお子様と異なり、大人の生徒さんは、十分に状況を把握されています。
任意の参加なので、緊張して失敗するかもしれないから参加しないという選択肢もあります。
それでも、ご自分の意思で参加を決断し、練習を積んで本番を向えたこと自体がすごいことだと思います。
生徒さんの中には、大人になってからピアノをはじめた方や、70代の方、今回が初めての発表会という方もいらっしゃいました。
色々な状況の中で、無事に本番を終えられて、ほっとされていました。
次回は、参加者が増えて、さらに盛り上がることを期待しています。
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