(この記事は、2021年6月7日に配信しました第324号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、小さい生徒さんの発表会に向けたレッスンの様子です。
6月に入り、気がつけば今年も半分が過ぎようとしています。徐々に蒸し暑くなってきたので、小さい生徒さん方は既に半袖半ズボンと、真夏のような装いで元気にレッスンに来ています。
お子様の発表会は、昨年コロナの影響で延期となり、最終的に年末に開催しましたが、今年は例年通り夏休みの時期に開催します。とは言ってもコロナ禍に変わりはなく、前回同様、様々な制限が付きます。1回のステージに出演する生徒さんは最大10人で、観客は出演する生徒さん1人につき2人までとし、会場の収容人数を50%以下にします。30分ごとには換気タイムを設け、集合写真もなし、講師演奏もなし、ご自身の出演時間に合わせて会場に来ていただき、終演後は速やかに退場していただく形になります。味気ない気もしますが、安全に安心して発表会が行えることが重要ですから、致し方ないところです。
生徒さん方は、そのような制限に一切気持ちが揺らぐこともなく、着々と練習を重ねており頼もしい限りです。
そんな生徒さん方の現在の様子ですが、小学校2年生の生徒さんは、左手がずっと3連符の伴奏を弾いていて、それに合わせて右手のメロディーに所々8分音符が出てくる曲を弾いています。
それぞれのリズムは弾いたことがありますが、一緒に合わせて弾くのが初めてなので、最初は少し大変そうでした。なにしろ、左手が3つ弾いている間に右手は2つ弾くので、そもそも左右の音数が合いませんから、どんなタイミングでどちらの音を弾くのか、把握するだけでも大変です。
左右それぞれの最初の音は一緒に弾くことが分かっても、その後は互い違いに弾くことになり、それを正しいタイミングとスピード感で弾き、しかもそれが連続して出てくるとなると、なかなかの難問となります。
レッスンでは、一旦ピアノから離れ、その部分のリズム打ちを練習して、しっかりとマスターしてもらう事にしました。正しいリズムの説明をして、私が実際にリズム打ちの見本を示し、生徒さんに真似してリズム打ちをしてもらいました。それを自力で完璧にできるように、ご自宅でも宿題として練習してもらいました。リズム打ちは、特に小さい生徒さんにとっては遊び感覚で、間違えると笑い声をあげながら楽しくできました。
「ややこし~い」と言いながらも、気が付けば自力で正しいリズムを打てるようになり、それが連続で、速い速度でも危なげなくできるようになりました。
リズム打ちが余裕で出来るようになりましたら、いよいよピアノでの実践練習です。私が横でリズム打ちをして合図を送り、生徒さんは、それに合わせてピアノを弾きます。混乱した時にはもう一度リズム練習に戻り、正しいリズムを再確認してから、またピアノ演奏にチャレンジしました。段々と出来るようになり、現在ではあまり心配することなく弾けるようになってきました。
ただ、慣れてきてしばらくすると、段々と雑になってくることが多いので、時々基本のリズム練習や、ゆっくりと正確に弾く練習を取り入れていく必要があります。元々速く弾く曲なので、生徒さん自身はも速く弾きたくてうずうずしている様子が垣間見えますが、「発表会本番でスピード感を持って、きれいに弾けるようになるために、今は、正しいリズムで弾く練習をしているのよ。今のゆっくりなテンポで本番弾くわけではないから、安心してね」と声をかけています。
今年小学生になった生徒さんは、前回は1番年齢が低かったので最初に弾きました。「今年は、3番目に弾く予定になっているのよ。お姉さんになったね~」と話しますと、嬉しそうで満足げな表情をしていました。1曲目の曲が思った以上に早く譜読みが終わったので、もう1曲追加をして本番では2曲弾く事にしました。
先日のレッスンでは、1曲目の曲を暗譜で弾いてみようと提案すると、「うん、いいよ。私ね、楽譜があんまりよくわからないから、見ていないんだよね」と、思わぬカミングアウトをされてしまい、私もドキッとして驚きましたし、お母様も苦笑いされていました。
生徒さん本人は、ケロッとした表情で早速暗譜で弾き始めましたが、手慣れた様子で最後まで弾いていました。フレーズごとの強弱や表情付けがもっとできると良いなあと思い、生徒さんと楽譜を見て強弱の確認をしたり、フレーズごとにどんな感じで弾いた方がよいのか話し合い、レッスンの最後には、様々は表情のある優雅な音楽を演奏できるようになってきました。レッスンに同席されていたお母様も、うんうんと頷きながら演奏を聴いていました。
後から追加した2曲目の方も、コツコツと練習を重ねていて順調に進んでいる印象です。
弾く前から、生徒さん自身が、「この曲の盛り上がるところがあるでしょ。あそこはね、こんな風に弾くといいんだよね~」とジェスチャーたっぷりに話しているので、「そうだね。そんな感じに弾けるとステキよね~。じゃあ、ちょっと弾いてみてくれる?」と答えると、早速弾き始めました。
細かい16分音符の連続も、指が転ぶことなくこの日も安定して弾いていましたし、生徒さんが弾く前に話していた部分も、カッコよく情感を込めて弾けていました。初めて両手で弾く部分だったのですが、既に曲のイメージもしっかりと掴んで弾いているのですから、なかなか凄いなあと感心してしまいました。
レッスンを終えて、お母様に「あと少しで最後まで弾けるようになりますから、ゴールが見えてきましたね。盛り上がる部分も、しっかりとピアノが鳴っていて、○○ちゃんにとてもよく合っている曲ですね」とお話をしました。生徒さんもさることながら、お母様も、この2曲目についてはかなり気に入った曲だったらしく「本当ですかあ~!」ととても嬉しそうにお答えになっていたのが印象的でした。
発表会本番まで、まだ1ヵ月以上ありますから、焦らずに細かいところに気を配りながら、生徒さん方と一緒に練習をしていきたいと思っています。
(この記事は、2021年5月24日に配信しました第323号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、コロナ禍でも楽しめる音楽のお話です。
相変わらずコロナの話題が連日報道され、東京では緊急事態宣言も続行中です。日常の生活スタイルも影響を受け、だいぶ変化してきました。
音楽業界でも、変化は見られます。例えば、ピアノの国際コンクールは、昨年延期や中止ばかりでしたが、今年はオンラインで開催されるものも出てきました。
ベルギーのブリュッセルで4年に1度開催されるエリザベート王妃国際音楽コンクールは、昨年延期になり今年5月から無観客で開催しています。
通常、国際音楽コンクールは、コンサート形式で行われます。一般客も入れますが、客席は満席となり、日本からもツアーが組まれます。そして、素晴らしい演奏は、拍手喝采で称えられ、拍手が鳴りやまない事すら起こるものです。
しかし、今年は無観客です。審査員はいますが、間隔を空けて座っていて、マスク姿で顔もよく見えません。ガラガラの状態で盛り上がることもなく進んでいるようですから、参加しているピアニストの皆さんも、少々戸惑うかもしれません。
それでも、日本から60人近くのピアニストがチャレンジされていて、そのうち2人がファイナルに進むことが決定しました。
もうすぐファイナルが始まりますが、インターネットでその模様がライブ配信されますから、自宅でゆっくりと聴くことができます。以下のサイトです。
これまでに、エミール・ギレリスさんやアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリさん、ウラディーミル・アシュケナージさん、シプリアン・カツァリスさんなど、世界の巨匠クラスのピアニストが優勝や入賞し、日本人でも内田光子さんや神谷郁代さん、 松本和将さん、花房晴美さん、若林顕さん、仲道郁代さんなどたくさんの人気ピアニストが入賞をしています。
ヴァイオリン部門では これまで堀米ゆず子さんや戸田弥生さんが相次いで優勝していますが、ピアノ部門ではまだ日本人優勝者が出ていませんので、未来の巨匠の誕生を期待しつつ聴きたいものです。
このようにオンラインで音楽に触れるという動きは、さらに広がりを見せていて、おそらく日本で一番有名な音楽ホールであるサントリーホールが「デジタルサントリーホール」というサイトを先月開設しました。
サントリーホール会館35周年の記念事業の一つだそうで、現在オンラインイベント第1弾として、春に開催されているイベント「デジタルオープンハウス」を5月末まで期間限定で見ることができます。
バーチャル バックステージツアーでは、ホール内部を3Dで見ることができて、エントランスや座席だけでなく、ステージ裏など普段コンサートに行っても見ることができないところも見ることができます。オーケストラのメンバーが使用する椅子や譜面台が大量に置いてあり、数の多さに驚きました。ホールスタッフの解説も聞けて、理解しやすくなっている所も良いと思います。
オンライン配信では、オルガン プロムナード コンサートや「コバケン」の愛称で有名な指揮者の小林研一郎さんの祝祭演奏会を無料で聴くことができるほか、サントリーホール主催のコンサートは500円から2000円くらいで聴くことができます。
通常のコンサートの価格を考えますと、だいぶ手軽になっていますので、気になる演奏家のコンサートを聴くチャンスかもしれません。
動画ライブラリーでは、2014年以降のコンサートや演奏家のコメントなどがたくさんアップされていますし、サントリーホール開館当時からのチラシなどが見れたり、オンラインショップやサントリーホールの情報誌のコラムなども読めるようになっています。
まだ立ち上がって1ヵ月ほどですから、今後ますます充実したコンテンツになるのではないかと思います。
ホールに足を運んで生の音楽に触れることが何よりとは思いますが、このような状況なので、オンラインで楽しめるものも上手に活用して、音楽を常に身近に感じ、楽しむ機会を失わないようにすることが大切だと思います。
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