(この記事は、2025年3月10日に配信しました第417号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、大人の生徒さん方の最近の様子です。
3月に入り、春本番のような暖かい日もあれば、真冬に戻ったかのような寒さの日もあり、寒暖差の大きい日々になっています。そろそろ卒業・入学シーズンになり、これまでの生活に区切りがついたり、進学や進級などの新生活のスタートということもあり、何か始めてみようと、ピアノ教室にいらっしゃる方も増えてくる季節です。
私がピアノ講師を始めた年に、初めてピアノを習ってみようと入会された2人の生徒さんは、先日相次いで定年退職され、まさに人生の一区切りをつけられました。お一人は、私がピアノ指導を始めて、最初の体験レッスンを受けられた方です。その時には、まさかこんなに長いお付き合いになるとは思ってもいませんでした。
元々キーボードをお持ちでしたが、ピアノレッスンが少し進んできたときに、「うちにあるキーボードには、この鍵盤がないんだよね」とおっしゃり、「それは困りましたね。そろそろ88鍵あって、ペダルも付いているものをご用意された方がよろしいかと…」などとお話をしましたが、その後ヤマハの電子ピアノを購入されました。その後も、どんどん弾けるようになってきて、ドビュッシーなどのフランスゆかりの作曲家の作品を好んでお弾きになっていましたので、「フランスものがお好きでしたら、ベヒシュタイン社のピアノで弾くと、すごく素敵ですよ。今度の発表会のホール近くに、ベヒシュタインのピアノもありますから、ちょっと弾いてみたらいかがですか?」とお話をしたところ、気に入ったようで、後日購入されたという話をお聞きして、とてもビックリしたことがありました。
今でも、そのベヒシュタインのピアノで練習しつつ、秋の発表会に向けてレッスンにも欠かさず通われています。「今月末で定年退職するので、これからヒマになりますから…」と、ご挨拶をいただいた時には、「そうなのですね、長年お疲れ様でした。まずはゆっくりされつつ、でもお時間が取れるということでしたら、じゃんじゃんレッスンをしましょう!」とお返事をして、2人で大笑いしました。
最近は、お好きなフランスのものだけではなく、いろいろな作品にチャレンジされていますので、お好きな曲がもっともっと見つかると良いなあと思っています。
もう一人の定年退職された生徒さんは、元々ピアノ教室に通われていた職場仲間のご紹介で、通われることになりました。その時には、下のお子様が保育園生で、「子供の保育園のお迎えがあるので…」という事でレッスンをお休みされたこともありましたし、お仕事が多忙の時には、1年ほど休会もされましたが、その後復帰され、今日に至っています。
数年前、お子様がご結婚された時には、「まあ、あの保育園生だったお子様がご結婚されたとは…。月日が経つのは早いですね」とお話をしていましたが、その後、お孫さんが生まれて、「コロナの影響で、ずっと会えなかったけれど、ようやく会いに行ける」と、とても喜んだ様子でお話をされていました。
そして、先日ご自身の定年を迎えられました。「先生も、定年ってあるの?」と聞かれましたので、「定年は、ないんですよね。生徒さんみなさん定年後も元気にレッスンに通われていて、70代80代の生徒さんも多いんですよ。今月から、86歳の生徒さんが新入会で通われるんです。『もっと上手になりたい』とおっしゃっていて、すごいですよね。でも、昨年米寿を迎えられた生徒さんもいらっしゃるんです」とお話をしました。
すると、「いや~、すごいですね」と感心した様子で、「自分も最高齢の生徒を目指そうかな」とおっしゃっていましたので、「私も最高齢のピアノ講師を目指しますので、2人で最高齢になりましたら、その時には一緒にお祝いしましょう!」とお話をしました。米寿の生徒さんを超えるという事は、なかなかハードルが高いかもしれませんが、そこまで長く楽しみながら生徒さんがレッスンに通って下さったら嬉しい限りです。まさかの新しい目標もできたので、頑張っていこうと思っています。
今月から入会された86歳の生徒さんは、初レッスンを終えたところです。本当は、もう2回目のレッスンが終わるところでしたが、「初レッスンに向けて、本人が頑張りすぎてしまったようで、当日になって体調を崩してお休みしてしまい、すみません」と付き添われたご家族が盛んにおっしゃっていました。ご本人も相当残念に思っていたようで、新たに設定した初レッスンの当日には、「今日は、絶対にレッスンに行きますので、よろしくお願いします」とわざわざご連絡をいただきました。
それだけでも、とてもご丁寧ですし、レッスンを楽しみにしている様子が伺えますが、レッスンの時には、「これからよろしくお願いします。これはお近づきのしるしです」と、小物やお茶菓子まで持参してくださいました。ご家族曰く、「一人暮らしをしているもので、なんだかいろいろと買っちゃって、家にたくさんあるんです。もしよろしかったらもらってください」とおっしゃっていて、せっかくなのでありがたくいただきました。
現在行っているレッスンでは、体験レッスンの時にアドバイスした箇所をきっちりと直して弾かれていて、とてもきれいに弾けています。「難しい」「難しい」と言いつつも、着実に弾かれていますし、「これだと、8月の発表会に間に合わない」と、体験レッスンの時にお話した発表会も参加する気満々で、意欲がとにかく素晴らしいと思いました。
「大人の生徒さん方の発表会は、8月ではなく、10月~11月くらいなんです」と話しますと、「ああ、10月ね。それならよかった、まだ時間がある」とかなり安心されている様子でした。
体験レッスンにいらしゃる方には、年に1回発表会があるというお話はしますが、入会と同時に発表会参加を意識される方は、これまでほとんどいらっしゃらなかったので、とても驚きました。これからレッスンに慣れていただきつつ、発表会でご本人が満足できる演奏ができますように、私もしっかりとレッスンを進めていきたいと思います。
(この記事は、2025年2月24日に配信しました第416号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、指揮者による音楽の違いについてのお話です。
長く音楽に携わていますと、ちょっとでも音楽が聞えてくると「何の曲だろう?」と気になり、耳を傾けて演奏に聞き入ってしまったり、演奏の仕方が気になってしまいます。生身の人間が演奏していないものについては、違和感を感じるので特に気になります。駅へ行きますと、電車の発車メロディーが流れますが、勝手に頭の中で音を聞き取り、楽譜に書き起こしてしまう事も多々あります。
また、アレンジされている曲が流れていると、「えっ、そこでここに飛んじゃう?」とか「ここ、カットしちゃうのね」など、いろいろ思う事もあります。そのため、よく受験生がBGMを流しながら勉強していますが、私の場合は、ついつい音楽の方に耳が吸い寄せられてしまうので、勉強が全然はかどりませんでした。
もっとしっかりと絶対音感が付いている方は、あらゆる音が、ドレミ…で聴こえるそうで、私以上に気が休まらないのではないかと思います。もちろん、音楽にフォーカスしないように、耳のスイッチを自分でオンオフすることができるようになってきますがね。
先日、『なぜ、クラシック音楽ファンは「誰が指揮するか」をやたら気にするのか』という記事を目にしたので、読んでみました。
ピアノ教室にいらしている生徒さん方は、音楽好きな方々なので、ご自宅でピアノの練習をするだけではなく、普段からいろいろと音楽との接点が多いように見受けられます。ピアノ以外の楽器やコーラスをされていたり、音楽系のテレビ番組を見ていたり、リサイタルやコンサートに足を運んだり、音楽系がテーマの映画を見たり本を読んだりされています。
その中で、交響楽団の会員になっている生徒さんは、この記事の通り、「この前行ったコンサートは、〇〇が指揮をしていて…」と、誰が指揮をするのかチェックして演奏会を選んでいるようです。
この記事の「交響曲は指揮者次第?」という項目では、クラシック音楽は、演奏家が異なると、全く違う様に聴こえることがままあると述べられています。これは、ピアノなど楽器を演奏している方は、直ぐにピンとくると思います。ピアノのレッスンにいらしている生徒さん方でも、新しく練習する曲を決めるときに、YouTube などでプロの演奏家の演奏を聴いて、「あ~素敵っ!これを弾いてみたい」と思い練習を始める方がいらっしゃいます。
練習を始めて最初の頃は、無我夢中で音を読んでピアノを弾きますが、ご自分が何の曲を弾いているのかよくわからないという方も少なくないようです。先日も、とても有名なピアノ曲を練習している生徒さんが、「まだまだ、音楽が聴けてこないです」とおっしゃっていました。ご自分が良いと思って選んだ曲を弾くわけですが、どうも同じ曲に聴こえない、まさに演奏者によって違ったように聴こえるという事ですね。
私自身も、先日生徒としてピアノのレッスンを受けた時に、先生が弾くフレーズが、つい先程自分が弾いたフレーズと全く異なっていて、先生の演奏の素晴らしさを感じつつ、自分の実力を思い知らされて複雑な思いをしました。
オーケストラも、指揮者の存在が大きく、同じオーケストラでも指揮者次第で素晴らしかったり、そうでなかったりと、ものすごい差が生まれると書かれています。記事の中で、極端な例として、ブルックナーの「交響曲第8番」について述べられていました。ブルックナーの傑作なのですが、指揮者によって70分くらいで演奏されることもあれば、100分かけて演奏されることもあるそうなのです。演奏時間が30分も異なると、だいぶ曲の印象が変わりそうですね。
筆者の音楽評論家 許光俊さんがご自身の経験を語っていて、最初に買ったレコードがカラヤン指揮のもので、子供ながらに違和感を感じたそうですが、その後で買ったベームが指揮をした音楽は圧倒的にしっくりきたそうです。後に、カラヤンの指揮が、表面的とか機械的という批判があることを知って、「そうだ」と膝を打ったことが書かれていました。
ショパンコンクールが開催されていた時、生徒さん方に、「YouTube の公式チャンネルで、コンクールの演奏が聴けるので、ご興味があれば聴いてみて下さいね」とお話したところ、早速聴いた生徒さんが、「同じ曲でも、弾く人によって、とても違っていて驚いた」と感想を話されていました。
私も、ちょうどショパンの曲を練習していたこともあり、いつにも増して興味津々で聴いたのですが、とにかく速いテンポで弾く方がとても多く、ゆっくりのテンポの曲はとってもゆっくり弾いていることも多々あり、本当にこんなテンポで弾くのかと驚いて、ピアノの先生に聞いたものです。その先生は、「コンクールだから、速く弾いた方がやはり華やかさが出るし、テクニックもアピールできるし、印象に残るんじゃない?また、他の曲との対比などを考えてテンポ設定をしているかも」と話していました。
その時に、私が、「みなさん、とにかく速く弾いていてびっくりしましたが、〇〇さんの演奏は、私が思っているテンポで弾いていて、そうそう、これこれ!という感じで、すごく納得したのですが…」とお話したところ、「そうね、とてもきれいに弾いていてリサイタルだと良いのかも知れないけれど、コンクールの場だと、ちょっと地味に聴こえちゃうのよね」とも話していて、なるほどコンクールという他者との比較の場だと、いつもとは異なる演奏になるのかもしれないと思ったものです。
同じ演奏者でも、年月を経て何回も同じ曲を録音していることがありますが、昔の解釈と今の解釈が異なることもあり、おのずと演奏も変わってくるのでしょう。
「決定版 交響曲の名曲・名演奏」という本の中で、この記事の筆者である許さんが書いていますが、「だれだれ指揮のどこそこ管弦楽団との演奏」と記してはいても、何年の録音とかは、あえて記していないそうです。どの録音かが書いてあると印象がどうなるか、自分で考えながら自分の耳で音楽を聴くことが大事なんだそうです。
近年は、演奏会に足を運べなくても、いろいろな方法で身近に音楽を聴くことができるようになっていますので、私も、指揮者にもっと注目をしながら、やはりブルックナーの交響曲第8番を聴き比べてみたいと思います。
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