(この記事は、第183号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、連日熱戦が繰り広げられている、ショパンコンクールのお話です。

5年に一度のショパンコンクールも、後半戦に突入しています。

書類審査から始まり予備予選(ここまでが事前審査)、第1次予選、第2次予選、そして、第3次予選。

最後の本選(ファイナル)までの道のりは、なんとも長く感じますが、参加している演奏者は、はるかに強くそう思っていることでしょう。

ピアノと言えばショパン。ショパンと言えばピアノというくらい、ショパンとピアノは切っても切れないものですが、そんなショパンの音楽を誰が一番素晴らしく演奏するのか?

ここ数回は、日本人の演奏者が、予選の早い段階で全員敗退するという結果でしたので、今年はなおさら関心が高まっています。

ショパンコンクールに限ったことではありませんが、参加者全員の中で一番上手だったとしても、過去の演奏者たちと比較して同レベルでないと「優勝者なし」という結果もあり得ます。

ショパンコンクールで優勝者が出なかったことは、過去に何度もありますので、今回は優勝者が出るのか?という事も気になるところです。

日本人ピアニスト15人が、事前審査に臨みました。

その中には、既に国際的に活躍されている方、国際コンクールで上位に入っている方、最年少15歳の方、ショパンコンクールに参加するのが2回目の方などもいらっしゃいます。

その中から、5人の方が1次予選に進出しました。

予選から YouTube にも、公式に演奏がアップされているので、自宅などに居ながらにして、コンクールの演奏が聴けるのは本当に便利で嬉しいものです。もちろん、いつかは生で聴いてみたいと思っていますが、その場合、ポーランドまで足を運ばなければなりません。

インターネットでは、会場全体の雰囲気を感じるには限界がありますが、逆に演奏者のアップが映るので、顔の表情や指の動きなど、演奏している姿がとてもよくわかるところが利点です。会場全体の雰囲気も映りますし、時には審査員の先生方の様子も映ります。

例えば、演奏が終わって、会場が盛り上がっている中、審査員の先生方は、実に落ち着いていて、表情などもほとんど変わらない様子だったりします。

改めて、これが演奏会ではなく、順位をつけるコンクールの舞台なのだと感じで、見ている方も緊張してきます。

1次予選、2次予選と進み、昨日までの3日間で3次予選が行われて、最後のファイナルに進む演奏者が発表になりました。

3次予選の段階で、日本人のピアニストは1人だけとなりましたが、見事にファイナルへ進出することができました。

事前審査や1次予選などでは、さすがに緊張していたのか、ミスが少し目立っていましたが、だんだんと慣れてきたようで、3次予選では、とても落ち着いた様子で、表情豊かな音楽をされていて、すべての演奏が終わった時には、「ブラボー」と相次いで掛け声がかかり、会場中がとても盛り上がっていました。

3次予選まで進みますと、どの演奏者も持ち味が存分に発揮された演奏ばかりで、それぞれどの演奏も素晴らしいと思います。ここまで来ますと、優劣をつけるのは至難の業という感じです。

緻密で繊細なショパンがよいのか、大きなスケールで迫力もあるショパンがよいのか、自由さと即興的な雰囲気のあるショパンがよいのか、内に秘めたショパンがよいのか…

時と場合によって、人間は様々な顔を持ちますが、きっとショパンも同じはずで、どれもがショパンなのでしょう。その様々な顔を持つショパンを、どれだけ表情豊かに表現できるかということなのかもしれません。

ファイナルには、10人の演奏者が進みます。

曲目は、ピアノ協奏曲なのですが、ショパンはピアノ協奏曲を2曲しか作曲していませんので、おのずと他の演奏者と曲が被ることになります。

今回は、10人中9人の演奏者が、同じ曲(第1番)を選んでいました。

あからさまに比較されるわけですが、聴く側からしますと、これ以上の贅沢な楽しみ方は無いとも言えます。

10月18日から始まるファイナルの熱演に期待したいですね。

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