(この記事は、第210号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、音楽を専門に勉強することについてのお話です。
東京芸術大学の学生さんの事を、略して芸大生と呼びますが、芸大生がどのような学生生活を送っているのか書いた本があり読んでみました。
東京芸術大学は、音楽を専門に勉強する人にとって、日本で最高峰にして最難関の学校です。
ピアニストの園田高弘さんや小山実稚恵さん、フジコ・ヘミングさん、舘野泉さん、若林顕さんなども、かつて東京芸術大学で学びました。
その他にも、ヴァイオリニストの葉加瀬太郎さんやサクソフォン奏者の須川展也さん、歌手の安田祥子さん(由紀さおりさんのお姉さん)、作曲家の瀧廉太郎さんや團伊玖磨さん、山田耕筰さん、中田喜直さん、芥川也寸志さん、指揮者では山本直純さんや小林研一郎さんなど、書ききれないほどの有名人がすらりと並びます。
通常、音楽を専門に学ぶ音楽大学は、その名の通り音楽だけの単科大学である事がほとんどですが、芸大の場合、美術系の学部があるのも大きな特徴と言えます。平山郁夫さんや横山大観さん、岡本太郎さんなど日本の美術界の巨匠と呼ばれた方々もここで学びました。
さて、芸大生のうち、音校と呼ばれる音楽学部の学生は、どのような人たちなのでしょうか? 芸大生でなくても、そもそも音大の学生は、どのような感じの人達で、どのような学生生活を送っているのか謎ですよね。
まず、入学に関してですが、入学前から芸大の教授や、元教授などに習っている事が当たり前のようです。
これは芸大に限った話ではないのですが、入りたい音大の先生にあらかじめ習う事は本当に多く、むしろそうでない方は、ほとんどいないくらいです。
ただ、小さい頃からずっとそのような先生に習う事は難しいので、今習っている先生から紹介していただくとか、夏期講習会などのレッスンでご縁を作っておき、そのツテを利用したりします。
地方に住んでいる場合、受験の何年も前から、大都市に住んでいる先生のレッスンを受けるため、新幹線などで通う事も珍しくありません。
レッスンも月謝ではなく、レッスン1回でいくらという形で、交通費にレッスン代と経済的負担は大きくなります。それでも、親御さん自身が芸大に憧れていて、自分は入れなかったから、せめて子供にはという思いもあるのかもしれません。
ピアノやヴァイオリンは、2・3歳から始めることがとても多く、小学校入学くらいから始めると、スタートが遅くてハンデがあると言われるくらいです。
そして、芸大入学前には、有名なコンクールで上位を取る常連だったり、既にコンサートでお客さんを呼べるくらいの人たちも珍しくありません。
ちなみに、入学前から芸大の教授などに習うということは、芸大に入るためにはコネが必要という訳ではありません。
芸大という最難関の学校に入る為には、高度な演奏技術が必要で、その高い技術を身に付けるためには、そのようなレベルの先生に習う必要があり、そのような先生は最難関の芸大に多くいらっしゃるという事のようです。
入学試験では、自分が指導している生徒を審査することは出来ないようなので、公平性は保たれているようです。
個人的な感想ですが、自分が果たせなかった夢を子供に託すというのは、一見美しい話に聞こえますが、危険な面もあるのではないかと思っています。
お子様に対する親御さんの本気度という面では素晴らしく、音楽教室でも、親御さんの熱心さがお子様の上達に大きく影響している事は、多くの講師と意見が一致するところです。
しかし、子供の意思をくみ取り、その個性を伸ばす事よりも、自分の夢を押し付ける事に注力することにもなりかねません。子供は、親の期待に応えようとしますので、そうなる可能性は高いでしょう。
現に、芸大に入って才能も抜群だった人が、卒業後「義理を果たした」と言って、楽器をキッパリと辞めてしまった例もあるようです。
とても小さい頃からピアノや音楽を習わせる場合、お子様自身が、「やってみたい」と言える年齢ではない場合も多いのです。
きっかけは、親御さんの「音楽をやってみたら?」「ピアノを習ってみたら?」という事であっても、お子様が「やらされている」という気持ちではなく、楽しいから音楽を勉強しているとか、好きだからピアノを弾いているという気持ちになってもらう事の大切さを改めて感じました。
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