(この記事は、第218号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、生徒さんの成長ぶりを垣間見たお話です。
先日、生徒さんがヤマハコンサートグレードというピアノの検定を受けました。
従来の音楽検定は、ピアノ演奏だけでなく、即興演奏や変奏、聴音などがあり、限られたレッスン時間の中で準備するのは、なかなか難しいものがありましたが、このコンサートグレードは、ピアノ演奏2曲のみで受験できるので好評です。一度受験された方の満足感も高いようで、リピート率が高いそうです。
今回受験したお子様の生徒さんは初参加ですが、それほど緊張した様子もなく、会場にいらっしゃいました。自宅で使用している足台の方がよいとのことで、わざわざ足台も持って来られました。
コンサートグレードの試験は、公開形式になっていて、試験というよりも発表会という感じです。会場は小さめのサロンですが、試験を受ける人だけでなく、ご家族連れで来られる方がほとんどなので、満席状態でした。
受験される生徒さんが全員集まったところで、最初に全体の流れの説明があり、その後一人ずつ順番に舞台に上がり、お辞儀の位置や椅子の高さ、足台の高さのチェックをすることができます。
そして、休憩を挟んで、いよいよグレード試験の開始になります。
これだけ親切丁寧に実施される試験やコンクールは、他に見たことがありません。特に小さい生徒さんや、初めて受験される方にとっては安心出来るのではないでしょうか。
満席状態の会場で、司会者から受験する生徒さんご自身のコメントも読み上げられ、まるでコンサートや発表会の様な感じです。発表会の時の様にドレス姿の生徒さん方もたくさんいて、華やかな感じもありました。ただ、舞台上に発表会の時のようなお花はないので、その部分は簡素な感じがしましたが。
今回初めて受験した生徒さんですが、舞台に上がった時から笑顔さえ見えるような様子で、落ち着いて演奏していました。グレード試験は、コンクールの様な「落とす」ためのものではないので、私自身もそこまでドキドキすることなく演奏を聴くことができました。
細かい所で、「あれっ、この部分を変化させて弾く事を忘れちゃっている」という、ちょっと惜しい箇所がありましたが、だいぶ思ったように弾けていたように思いました。
課題曲と自由曲の2曲を、決められた演奏時間内で弾き、それぞれの曲に対して、SS、S、A、B という評価と共に、ヤマハのアドバイザーの先生2人からコメントが頂けます。
全員の演奏が終わりますと、休憩を挟んでアドバイザーの先生方のお話や、出演者全員の記念撮影があり、そして帰りに講評が頂けます。
生徒さんは、もちろん問題なく無事に合格となり、それぞれの先生から SS の評価を頂く事が出来ました。
帰りがけに生徒さんとお話をしますと、やはりそれほど緊張しないで弾けたと言っていました。
私が感想を色々とお話しますと、惜しかった部分について、「あーーっ、忘れた・・・」という反応で、しまったという顔をされていました。
この生徒さんは、もっと小さい時、発表会の出番前に青ざめた顔で舞台袖に来ていて、緊張の為あまり力を出し切れていませんでした。そこで、親御さんと面談をした時に、そのようなお話と共に、もっと本番で弾く経験をたくさん積んでいくことの重要性を話し、発表会だけでなく、今回のコンサートグレードやコンクール、オーディションなどをご紹介してきました。
色々な会場で、色々な状況の中で演奏する難しさや充実感を感じて、経験を積んできたことが、こうして少しずつ実を結んでいるような気がして、私も嬉しくなりました。
大人になりますと、どうしても恥をかきたくないという気持ちに負けてしまい、躊躇したり、自分自身で色々な理由を付けて回避したり、守りに入ってしまう事もあります。小さいうちに本番での演奏をたくさん経験して、その成功体験を得ることは、ピアノだけでなく、社会人になってからも様々な場面で生きてくるのではないかと思います。
グレードの本番を終えて、息つく暇もなく、今度は夏の発表会の曲選びを行い、すでに練習に入りました。今度は、発表会での成長ぶりが見られることを楽しみにしています。
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