(この記事は、第222号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、ラ・フォル・ジュルネのお話です。
今やすっかりお馴染みとなったラ・フォル・ジュルネは、毎年ゴールデンウィーク期間に、東京国際フォーラムを中心に、大手町や丸の内、有楽町エリアで開催されている日本最大級のクラシック音楽祭です。(日本での正式名称は『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 「熱狂の日」音楽祭』)
朝9時半過ぎから夜の10時半過ぎまで、一日中コンサートが開催され、世界中から2000人もの演奏家が参加します。1公演が約45分と短時間で、チケット料金も手頃なので、一般的なクラシックのコンサートに比べて、気軽に参加できるものとなっています。
0歳から聴く事が出来るコンサートもあり、殆どのコンサートは3歳以上の入場が可能なので、小さなお子様にも、本物の生の音楽を聴かせることができる貴重な機会にもなっています。
以前は、「モーツァルト」や「ショパン」のように、毎年、特定の音楽家にテーマを絞っていましたが、最近は大きく転換し、普遍的な大きなテーマで開催されるようになりました。今年のテーマは、「ラ・ダンス 舞曲の祭典」で、クラシックの有名な音楽から、タンゴ、和太鼓、ジャズまで幅広く多彩なプログラムが用意されました。
そんな中から今回は、いろいろなクラシック音楽家のワルツ作品をまとめて演奏するコンサート「ワルツ賛」を聴いてきました。
会場は、ホールAという東京国際フォーラムの中でも一番大きなホールで、5000席以上あります。舞台の左右に大きなスクリーンが設置してあり、ピアニストの指の動きや指揮者の表情までも、ライブで見られるようになっています。この大きな会場も、開演時は、ほぼ満席でした。
ロシア屈指の交響楽団であるウラル・フィルハーモニー管弦楽団と、巨匠キタエンコに師事していたドミトリー・リスの指揮で、ロシアの国民的作曲家グリンカの「幻想的ワルツ」からコンサートが始まりました。
ウラル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏は、初めて聴きましたが、派手ではなく、落ち着いた上品な演奏をしていて、どこか素朴さも感じられました。指揮者のドミトリー・リスは、大きく手を振ってとても情熱的に、演奏をリードしていました。
グリンカの「幻想的ワルツ」の後は、同じロシアの作曲家ハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」よりワルツが演奏されました。この音楽は、先日現役を引退された、フィギュアスケート選手の浅田真央選手が使用した音楽で有名ですね。
少し怪しい雰囲気の壮大なワルツの後には、元祖ロシア音楽の巨匠チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」よりワルツが演奏されました。ロシアの音楽やバレエ音楽では、真っ先に挙げられるほど人気がある曲ですね。とてもロマンティックな優雅な音楽で、まさに夢のような世界でした。
そして、ガラッと雰囲気が変わり、北欧の作曲家シベリウスの悲しきワルツ、ヨハン・シュトラウス2世のワルツ「ウィーンの森の物語」と続きました。
「ウィーンの森の物語」は、年明けに世界中継されるニューイヤーコンサートでも定番の音楽で、ワルツと言えばウィンナーワルツと言う通り、ワルツの代名詞と言えるかと思います。
1814年~1815年に、オーストリア帝国の首都であったウィーンで開催されたウィーン会議をきっかけに、ヨーロッパ中に広まったワルツです。3拍子のリズムであることは、一般的なワルツと同じですが、2拍目がやや早いタイミングで演奏されるので、独特の「揺れ」が生まれるところが大きな特徴です。
なかなかの大作ですが、これで終わらず、最後にはフランスの作曲家ラヴェルの「ラ・ヴァルス」が演奏されました。これまで演奏されたワルツとは大きく異なる独特の世界観ですが、ワルツの幅広い可能性を感じ、コンサート全体もボリュームのある満足度が高いものとなりました。
コンサートを聴いた後は、屋台のお店を見て回りました。東京国際フォーラムの敷地には、様々なメニューのお店が並び、ビールやワインなどのアルコール類もありますので、みなさん思い思いに休憩をされたり、ランチを楽しんでいました。
会場を少し離れて、第一生命保険日比谷本社のロビーで開催された、モーツァルトのコレクション展とコンサートも覗いてみました。この建物は、戦後しばらく GHQ の総司令部として使われていたものです。(現在は、一部を残してタワービルになっています)
国際モーツァルテウム財団所有の貴重なモーツァルトの直筆譜や絵画などが展示されていました。
その中でもひときわ注目されたのが、モーツァルトが使用していた2挺のヴァイオリンです。モーツァルトが愛用していた楽器が、展示されるだけではなく、実際にコンサートでも使用されるとは滅多にないことです。
8歳くらいの時に使用していたそうで、パッと見ると、「うわ~小さい」と思いました。コンサートでは12歳の少年が演奏しましたが、やはり楽器がかなり小さく見えました。演奏も、結構大変だったのではないかと思います。
まるでおもちゃの様に見えるヴァイオリンですが、実際に音を聴きますと、おもちゃというのはとんでもなく、小さくても一般的なサイズのヴァイオリンと同じような、深みのある音が出てきて驚きました。さすが、モーツァルト愛用の楽器ですね。
このラ・フォル・ジュルネの期間中、歩行者天国などでもヴァイオリン演奏が聞こえてきたりと、オフィス街のエリア全体で音楽が楽しめました。
東京では今回が13回目の開催となり、すっかり定着した音楽祭ですが、出店しているお店が以前より少し減っていたり、グッズも少しマンネリ化してきている気もします。
今後どのように改革されていくのかも、楽しみに見ていきたいと思います。
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