(この記事は、第227号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、お子様の発表会とオーディションのお話です。
先日、毎年夏に開催しているお子様の発表会が行われました。今回は、初めて使用する会場で、2人のピアノの先生と合同で行いました。
朝から日差しも強く暑い日でしたが、少し早目に会場に入りますと、既に生徒さんが何人もいらっしゃっていました。
打ち合わせでは、アナウンスの原稿に演奏する生徒さんの名前の読み仮名を書いたり、足台の有無、補助ペダル使用の有無や持ち込みの有無、タイムスケジュールの確認などを行いました。
その後、初めて参加する生徒さんに、舞台上での動きのリハーサルを行い、定刻通りに始まりました。
私のクラスにも、今回初めて参加する生徒さんがいます。
その生徒さんは、以前から発表会に出たくないと言ってみたり、自宅練習やレッスンも消極的な姿勢になっており、本番に来てくれるのか心配していました。
しかし、開場時刻前にご家族で到着されていて、新しい黒い革靴に、おしゃれなシャツと半ズボンの装いをしていました。やはり、少々緊張気味の硬い表情でしたが、特別嫌そうな雰囲気でもなく、少しほっとしました。
お母様と舞台まで来ていただき、出番前の待機場所(舞台袖)やお辞儀をする位置の確認などを行いました。
今回は、会場の作りが少し特殊で、通常のように演奏後に舞台袖へ戻りますと、その後ご家族が座っている客席に戻るには、かなり遠回りをしなければならず、小さい生徒さんには、少々難しい事もあり、演奏後は、舞台隅にある階段を下りて、ダイレクトに客席に戻る流れにしました。
生徒さんが安心して演奏できるように、演奏前の舞台袖にお母様が付き添って頂く予定でしたが、それでは演奏後に合流できなくなってしまいます。
「お母様には、一番前の席に座って頂いて、弾き終わったら、階段を下りてお母様の所に行っていいからね? いいかな?」
当初の予定と異なってしまうので大丈夫かなと思いましたが、静かに、こくんと頷いてくれました。
全員出席のもと、定刻通りに発表会が始まりました。
一番最初は、先程の生徒さんの演奏です。
今回初めての参加とは思えない落ち着きぶりで、堂々と舞台に上がり、演奏も上出来で、とても安心しました。
別の生徒さんで、本番前のレッスンで暗譜が少々不安だった生徒さんは、舞台袖に来るなり、「間違えそうな気がする」と、しきりに話していました。
これまで何回も発表会に参加していて、慣れているはずが、思わぬ弱気な発言に少し驚きましたが、「そういうことを言うと、本当にそうなっちゃうから言っちゃだめよ」と話しますと、「でも、5回は間違えそうな気がするんだもん」と話していました。
暗譜以外は、かなり良い感じに仕上がっていましたので、「そうは言っても大丈夫なのでは?!」と思っていました。
しかし、出番が来て演奏が始まりますと、最初の1段目で早くもミスが始まり、その後も、あれっ?あれっ?という場所で小さなミスが重なってしまいました。残念ながら、出番前のご本人の予言が、当たってしまった結果になりました。
また別の生徒さんで、今年もオーディションに参加する生徒さんは、ご自宅で使用している補助ペダルを持参していらっしゃいました。持ち込んで下さったお母様に、生徒さんの様子を伺いますと、あまり上手くいっていないとのお話で、少し心配になりました。生徒さんは、いつもの本番のように、少々不安そうな様子で舞台袖に来ました。
「いつも通りに弾いたら大丈夫よ。コンクールの本番の時よりは、いいでしょ?」と聞くと、少しハッとしたような表情になり、若干表情が緩んだように見えました。
演奏が始まりますと、お母様がお話していたような不安さはなく、堂々とした演奏で、かなり力を発揮できたように思いました。
今回、最後の演奏を飾るトリを務めた生徒さんは、以前コンクールの全国大会で演奏した曲を披露しました。
バスケットボール部の練習漬けの日々は卒業しましたが、今度は受験のために、日々塾に追われていて、ピアノのレッスンの後にロビーで夕食を食べて、そのまま夜遅くまで塾の授業をこなしています。
受験生なので、練習時間もままならないと思いますが、しっかりとまとまった演奏を披露できました。
発表会は見学自由なので、生徒さんの小さいご兄弟がいらっしゃることも多いのですが、演奏中は驚くぐらいに静かな会場でした。演奏した生徒さん方も、きっと集中して力を発揮できたと思います。
発表会後暫くして、オーディションが行われて、私も審査員を務めました。これまで何回も務めていて、小学生の部を担当することが多かったのですが、今回は大学生の審査を担当しました。
オーディションの曲目は自由なので、ベートーヴェンやリスト、ドビュッシー、ラフマニノフなど、いろいろな時代の作品を聴く事が出来ました。
コンクールやオーディションは、点数をどのように出して合否を決めるのかケースによって異なり、同じコンクールでも地区大会と全国大会で異なる場合もあります。
例えば、各審査員が出した点数の平均点を計算し、○○点以上は合格としたり、審査員が出した点数のうち、最高点と最低点を削って、その他の点数で平均点を出して合否や順位を付けることもあります。
今回のオーディションは、審査員1人につき複数の投票権が与えられ、素晴らしい演奏をした参加者に1票ずつ投票し、その合計投票数が高い方から合格とする方式です。(どんなに素晴らしくても、1人の審査員が同じ参加者に複数投票することは禁止)
これまでは、最高得点の満点と、ほとんど票が入らない最下位はすぐに決まるものの、大多数は僅差となり、2次投票をしたり意見交換をするなど、なかなか審査に時間がかかっていました。
しかし今回は、いざ開票してみますと、綺麗に順位がついていて、審査員全員が驚くぐらいにすっきりと合否が決定しました。
私のクラスの生徒さんも別の日に審査があり、今回も見事に合格することが出来ました。
審査では、審査員全員が講評を書くのですが、その講評を読む限りでは、テンポの揺れを多少指摘されましたが、曲の各場面の変化がしっかりと出来ていたことや、曲に合わせた演奏が出来ていたこと、完成度の高さを評価して頂けました。
これから、合格者の披露コンサートまで少し時間がありますので、さらにバージョンアップした演奏を目指して、生徒さん自身が、「かなり思ったような演奏が出来た」と手ごたえを感じ、今後の自信に繋げられればと思っています。
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