今回は、小学校1年生の生徒さんのお話です。

先日のレッスンでは、小さいお子様がよく弾くウェーバー作曲の「人魚の歌」という曲を練習してきました。新しい曲なので、まずは1回通して弾いてもらいました。

「人魚の歌」は、8分の6拍子の曲です。

小さいお子様の場合、4分の4拍子や4分の3拍子のように、4分音符を1拍と数える曲はたくさん弾いていても、8分音符を1拍と数える曲はまだ殆ど弾くことはありません。その練習をする課題としても、この曲はよく使われます。

小さいお子様にとっては「1拍伸ばすのは4分音符」と覚えていますので、いきなり「この曲では1拍伸ばすのは8分音符です」と言われても、なかなか納得できないものです。

「1拍伸ばすのは4分音符で、半拍伸ばすのは8分音符。でも、この曲では半拍伸ばす8分音符が1拍伸ばす音符になるから・・・
と言うことは、4分音符は? 付点4分音符は??」

と頭の中が混乱してしまう生徒さんもいます。

でも、この生徒さんは拍子を正しく捉えてすらすらと上手に弾いていました。

1回でなんなく弾いていましたので、その先の新たなテーマをレッスンすることにしました。というのも、とてもすらすらと弾いているのですが、曲の始めから終わりまでずっと同じ強さで、抑揚のない一本調子な演奏だったからです。

「○○ちゃん、ピアノだけでなく音楽には、この曲のように半ページの曲もあれば、この楽譜1冊と同じくらいの長さで1曲というくらい長い曲もあるのね。

でも、どんな曲にも、必ず「ここが一番大切!」というところがあるのね。

そういうのを「曲の山」とか「サビ」とか「曲の中心」と言うんだけどね。

ではここでクイズね。この曲の山はどこかしら?」

これまで、うんうんと頷いて聞いていましたが、ちょっと困った顔をしていました。

「曲の山をどうやって見つけるか?というとね、頭の中でこの曲を歌うでしょ。

そうするとね、一番気持ちがわあ~と盛り上がるところよ」

「うーーん・・ここ?」

「○○ちゃん、本当の山に登ったことある?

山に登っているとね、「次の一歩から山の頂上ですよ。」とはならないじゃない?

ずっと登っていて、ふと気がつくと山の頂上が見えて「あっ、山の頂上にすごく近いんだ」ってなるのよね。

それと一緒だから、「この辺が曲の山」という答え方でいいのよ」

そうしますと、見事に曲の山を答えられました。

「じゃあ、今、答えた通りに弾いてみて。聴いている人に分かるように弾いてね」

この生徒さんは、曲の山を意識して弾いただけで、自然に抑揚がつき、ロマンティックな演奏にガラッと変わりました。

弾いている姿勢や雰囲気もまるで別人の様です。

後ろで聴いているお母様も笑みを浮かべながら、楽しそうに聴いていました。

「○○ちゃん、すっごくステキだったわよ。同じ人が弾いていたとは思えないくらい良かったわ。」

お母様の前で褒められて、とても嬉しそうに得意げな笑顔をしていました。

ピアノを弾く時には、フォルテやピアノなど強弱記号をつけて弾きますが、「フォルテと書いてあるから強く」「ピアノと書かれているから弱く」だけでは、本当の曲想をつけた演奏にはならないと思います。

「強く」といっても、エネルギッシュな強さ、怒りに満ちた悪の強さ、怒りに悲しみの混ざった強さなど、色々な強さがあるからです。

また、強弱記号は限られた数しかありませんから、曲の中で何回も同じ記号が登場することになります。

それがすべて同じ強さになってしまいますと、抑揚はついても曲の大切な部分がわからなくなり、まとまりのない演奏になってしまいます。

曲の山を考えることで、今のご自身の演奏がまた少し変わるかもしれません。参考にしてみてくださいね。

「ピアノ教室の出来事」について

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