(この記事は、第260号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、メモリアルイヤーの音楽家、バーンスタインのお話です。
11月も下旬となり、朝晩はだいぶ肌寒くなってきました。私は、既に手袋が欠かせませんが、レッスンにいらっしゃる生徒さん方も口々に「もう暖房をつけています」とお話されています。
今年も残り1カ月ちょっとですので、「今年の汚れ、今年のうちに」というお掃除のCMではありませんが、今年のうちに今年ならではのものを楽しみたいものです。
今年2018年は、ドビュッシー没後100年の他に、ロッシーニ没後150年、そしてバーンスタイン生誕100年の記念年でもあります。
ピアノを弾いている方やクラシック音楽が好きな方には、ドビュッシーやロッシーニはお馴染みの作曲家だと思います。
ドビュッシーは、ピアノ曲「月の光」「亜麻色の髪の乙女」、交響詩「海」などの作品が有名で、パリ万博で東洋の音楽や文化に触れて大いに影響を受け、西洋と東洋をミックスさせた作品作りをして大きな功績を残しました。どことなく、日本の音楽や東洋の音楽に似ているような気がするのは、このような理由なのですね。
ロッシーニは、イタリアの作曲家で「セビリアの理髪師」や「ウィリアム・テル」など多くのオペラ作品を作りました。
ショパンが活躍していた時には、ロッシーニは既に大人気の作曲家となっていて、自分の馬車でレストランなどに出かけていたそうです。それでもまだ、音楽家は身分が低いので、表口から入ることは許されず、裏口からお店の中に入っていたそうです。
代表作のオペラ「ウィリアム・テル」は、上演時間が4時間くらいかかるので、まとまった時間がとれそうな年末年始に、じっくりと聴いてみたいですね。
ドビュッシーもロッシーニも、没後の記念年ですが、バーンスタインは生誕というおめでたい記念になります。
バーンスタインは、ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」の作曲家としてすっかりお馴染みですが、指揮者としても大変有名です。
ドビュッシーやロッシーニの時代は、映像が残っていませんが、バーンスタインは映像が残っており、彼の演奏を聴くことができるのは嬉しいものです。
バーンスタインは、「世界のオザワ」こと小澤征爾さんや佐渡裕さんの師匠でもありますが、ヴァイオリニストの五嶋みどりさんも、彼が世に送り出した音楽家です。
当時14歳だった五嶋みどりさんは、バーンスタインにその才能を高く評価され、アメリカのタングルウッド音楽祭にソリストとして招かれました。そして、野外ステージで演奏するのですが、演奏中にヴァイオリンの弦が切れてしまうというアクシデントが発生します。コンサートマスターのヴァイオリンを借りて演奏を続けるのですが、またしてもヴァイオリンの弦が切れてしまうのです。今度はサブのコンサートマスターのヴァイオリンを借りて、演奏を続け、立派にヴァイオリンを弾ききりました。
ヴァイオリンは体の大きさに合わせて、楽器のサイズが異なります。14歳だったみどりさんは、まだ体が小さかったので、使用しているヴァイオリンは大人のサイズではなく、4分の3サイズだったそうです。サイズが異なると、音程を決める指の置き方や幅も変わってくるはずですから、慣れるまでに時間もかかり、そうそう簡単には演奏できないものです。
2度も弦が切れるというアクシデントや、代わりの弦の持ち合わせがなく張り替えることができなかったという、影の?アクシデントにも見舞われましたが、瞬時に対応して演奏を続け、素晴らしい音楽を奏で続けるという、まさに神業のようなことをしたわけです。
この出来事がきっかけとなり、みどりさんは一気に世界中で有名になり、アメリカの教科書にもこの話が掲載されました。
後に、「タングルウッドの奇跡」と呼ばれるこの出来事は、映像が残っています。
アクシデントに動じず、冷静に対応して演奏するみどりさんと、演奏後に拍手をするボストン交響楽団のメンバー、世界の巨匠であるバーンスタインが涙を流して、みどりさんを抱きしめる姿は実に感動的ですし、バーンスタインの人柄も知ることができる映像です。
バーンスタインを記念したコンサートが全国各地で行われているようですので、足を運ばれるのも良いのではないでしょうか。
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