(この記事は、第264号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、参加したピアノ・コンクールのお話です。
昔は、ピアノ・コンクールと言うと、日本音楽コンクールと、毎日新聞社が主催しているため通称「毎コン」と呼ばれる全日本学生音楽コンクール、もう少し近年になりますとピティナ・ピアノコンペティションなど、かなり数が少なく、相当上手な方が、先生に「コンクールを受けてみたら?」と声をかけられて参加するもので、参加するだけでも「すごい!」というイメージがありました。
しかし現在では、ピアノ・コンクールの数も相当多くなり、幼児の部から大学を卒業した大人、35歳以上の部、40歳以上の部、50歳以上の部など、かなり幅広い年代の方が参加できるようになりました。アマチュア部門(音大などでピアノを専攻していない方)を設けるコンクールも見かけるようになり、コンクールが、演奏家を目指す登竜門という位置づけから、自分の実力を試す場にもなってきています。
演奏する曲目についても、課題曲だけのものから、課題曲・自由曲を数曲用意して参加するもの、自由曲(複数)だけでよいもの、自由曲1曲だけでよいものなど様々です。
自由曲のみで参加できるコンクールは、ほとんどの場合制限時間がありますが、苦手な曲を避けることができ、自分の好きな曲や得意な曲目1つで参加できますので、コンクールの敷居はかなり低くなります。
さて、私事ですが、先日ピアノ・コンクールを受けてみました。昨年あたりから、15分以上の長い曲を練習していて、その曲だけで受けられるコンクールの存在を知ったことがきっかけです。
コンクールの名前も、審査員の先生方のことも、会場も、何もかもが初めて聞くものばかりでした。予選と本選の2段階で、予選を通過しますと、2週間後に本選が行われます。
予選の申し込みをして、しばらくしてから、受験番号の通知と連絡事項の案内が郵送されてきました。
予選当日、受付を済ませますと、控室の場所や、おおよその演奏開始時刻、演奏時間の説明がありました。
ホールのロビーには、開催される部門とその開始時刻、エントリーナンバーとその方の演奏曲目などが張り出されていました。
バッハからベートーヴェン、ショパン、ラフマニノフ、デュティーユ、ドビュッシー、チャイコフスキー、リスト、ガーシュインなど、自由曲のみのコンクールなので、思った以上に色々な作曲家の曲目が並んでいて、大変興味深く、観客として全部聴いたらとても面白いのではとも思いました。
説明された時間に舞台袖に移動しましたが、予定よりもだいぶ進行が早くなっていました。欠席された方がいたようで、他の部門でも複数の棄権者がいたようです。これは、コンクールではよくあることです。
会場は、今回初めてでしたが、木をふんだんに使った落ち着きのある内装で、舞台にはスタインウェイのフルコンサート用ピアノが置かれていました。
予選の演奏ですが、妙に緊張して、演奏を始めて割と早い段階で、今まで間違えたことがない箇所でミスをしてしまいました。一瞬音の迷いがあり、弾いたら今まで聴いたことがない、ありえない和音になってしまい、自分で「えーーっ?」と大変驚きました。その後は、割とよかったところもありつつ、つまらないミスもあったりで、全体的にはかなりイマイチな演奏になってしまいました。
まさかの予選敗退かと、不安を感じながら結果発表を待ちました。
結果は、当日中に、通過した人のエントリーナンバーがロビーに張り出される仕組みです。私の番号もあり、なんとか予選を通過することができました。審査員の方々からの、簡単な講評もいただきました。
そして2週間後、いよいよ本選の日です。
本選の日まで、何回も自宅での練習やレッスンを録音して、注意されていることを確認したり、本番と同じピアノをレンタルできるスタジオを探して練習したりと、いろいろと工夫して練習をしてきました。
舞台に上がって、予選よりも若干落ち着いて弾き始めたわけですが、またもや一瞬の音の迷いからミスをして、そこから動揺してしまい、全体的には、予選の時以上にイマイチで「これは全然ダメだったな」という出来になってしまいました。
長さのある難しい曲を選んだわけですが、時間をかけて練習をして、そこそこの自信もあり、もしかしたら入賞とかできるかもと思っていたこともあり、自分で自分にがっかりしたという感じです。
結果は、その日全部門が終わった夜に、舞台上で発表されました。もちろん?入選止まりで入賞はできず、大変残念な結果に終わりました。
先生に、早速ご報告したところ、音の聴き方と力抜きをすると、本番の緊張対策や演奏が随分違ってくるというご指摘を受けました。
審査員の先生は、講評の時に、もっと楽譜を読むことや、楽譜の一部だけでも書いてみると、もっと音楽の風景やイメージが変わってくるというお話をされていました。
練習をたくさん行うと自信がついてくるものですが、どうもそれだけでは、本番で上手に弾くことはできないようです。
もちろん、音はすべて覚えていて、弾き方などもすべてわかっているはずですが、なんとなく指を動かすだけになっていて、本当に頭で音楽を理解して弾いていなかった箇所がミスに繋がってしまったのかと思いました。
やはり、結果以上に、練習の成果が全然発揮できなかったことは、がっかりして落ち込みますし、かなり後ろ向きな気分にもなるものです。
気分をどう立て直すのか模索しているところですが、やはりリベンジすることが一番なのではないかと思っています。力を出しきったという、すっきりした清々しい気持ちで弾き終えることができるように、また精進したいと思います。
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