(この記事は、第268号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、イベント演奏のお話です。
3月も半ばになり、卒業シーズンを迎えています。街中でも、袴姿の学生さんやドレスアップしたご家族の姿を見かけるようになりました。
卒業式の後は、謝恩会が定番ですが、先日その謝恩会で演奏をしてきました。謝恩会で、全員で合唱する際の伴奏が必要になり、謝恩会の係になっていた人が、たまたま私のことを思い出してくれたのが、きっかけでした。
早速、楽譜をいただきましたが、伴奏が思った以上に簡素だったので、係の方の許可を得て、もう少し音数を増やすなど華やかな音楽になるようにアレンジをしました。
また、先生方の入場時にも演奏してほしいという事で、運動会の時に使用されていた曲を弾くことになりました。
その後、謝恩会のタイムススケジュールや司会者の台本などをいただいて、どのようなタイミングで弾くのか、弾いている最中に、どのようなトークが入るのか、どのくらいの演奏時間になるのかなどを確認しました。
その中で、先生方の入場時の演奏は私が行うのですが、退場時はCDを流すシナリオになっていたので、「せっかくなので何か弾きましょうか?」と提案をしたり、その他の場面での演奏についても、いろいろと提案をしました。最終的には、退場時も学校行事で使用していた曲の中から選んで弾くことになりました。
係の方々は、追加でいろいろとお願いするのは気が引けていたそうなので、私が追加の提案をしたときは、「本当にいいんですか!」と喜んでくださいました。
次は、段取りの調整です。
台本では、「開会いたします」という言葉の後に演奏を始めて、「先生方のご入場です。後ろのドアにご注目ください。皆様、盛大な拍手をお願いいたします」という言葉の後にドアが開いて、先生方が入場される段取りになっていました。
しかし、入場時に使用する曲の前奏が短く、また会場のドアが大きくて重いため、歌の部分が始まってもドアが開かず、入場のタイミングが合わないことがわかりました。そこで、司会の言葉を少し短くして、「先生方のご入場です」という言葉の後に、演奏とドアを開け始めるように変更しました。これですと、前奏が終わって歌の部分の始まりと、先生方の入場のタイミングがピッタリと合います。
このようなイベントでは、行動と音楽のタイミングを合わせる事が、思った以上に重要になります。
以前、結婚披露宴での演奏の勉強をしたことがあるのですが、ドアが開いて「新郎新婦のご入場です」という司会の言葉の後に、曲の盛り上がる部分を合わせることや、新郎新婦が座る高砂に到着して「今一度、盛大な拍手をお願い致します」という言葉の後に、即座にしかも自然に音楽を盛り上げて、華やかに終わらせる練習を随分とやりました。
タイミングを合わせると、自然に拍手が沸き起こり、そして拍手の終わるタイミングも自然と揃ってくるものです。
録音された音楽を流すだけですと、盛り上がる場面に曲のサビ部分を合わせることは難しく、曲の終わりも途中でブチっと切れて、場の雰囲気が盛り上がりに欠けたり、中途半端な感じになることがあります。
例えば、ドアが開くまでの時間やドアから席までの歩く時間を正確に計算して、事前に録音した演奏を編集したとしても、当日予定通りに事が進まないと、行動と音楽のタイミングがずれてしまいます。
生演奏ですと、この行動と音楽のタイミングを合わせる事が可能になります。今後、入学式や卒業式、謝恩会やパーティーなどのイベントで演奏する機会がありそうな方は、タイミングを合わせる練習をされるとよいでしょう。
具体的には、どの場面に曲のどの部分を合わせるかを考えて、1カッコを飛ばすとか、2番の歌詞部分から弾き始めるなどの調整をすることや、曲のどの部分を弾いていても、もうすぐ席につきそうとかエンディングになりそうなときは、カデンツ(終止形)の属七の和音に自然に進めるようにして、拍手を促す場面で2小節くらいの長さで1度の和音で華やかに終わらせる練習などが有効と思います。
普段のピアノの練習では、そのような事は全くしませんので、特別な練習になりますね。
謝恩会当日は、開会1時間半前に会場に入り、リハーサルを行いました。司会者と打ち合わせをして、曲のこの部分の演奏が始まったら、先生方のご紹介を始めるなどの確認もしました。
また、電子ピアノでの演奏だったので、音量のボリューム調整をしたのですが楽器本体の音量と、会場のスピーカーの音量のバランス、そして私自身のタッチによって、音が割れてしまうことが多く、ちょうど良い音量に調整するのが少し大変でした。
ピアノで始まる曲と、フォルテで始まる曲でも、音量調整が変わりますし、音が割れることを恐れて音量を弱くしてしまうと、座席によっては音が弱すぎるという事も起こります。
合唱の伴奏では、歌声の邪魔をせず、でもきちんと伴奏が聴こえるような音量が必要ですが、会場に人が入っていると時と空の時とでも音量は変わってきますので、結構時間をかけて調整をしました。その甲斐もあって、本番では音が割れることもなく、ちょうど良い音量で演奏ができました。
ドアが開くタイミングと曲の歌の部分もピッタリと合ったので、自然に拍手が生まれ、オープニングからとても盛り上がることができましたし、その後もスムーズに進行し、涙あり笑いありと大いに盛り上がり、無事に終えることができました。
終わった後に、会場の方々からいろいろと感想を伺うことができました。「CDの演奏かと思っていたけど、生演奏でびっくりした」とか、「やっぱり子供にピアノを習わせたいと思った」など様々です。その中で、一番多かったのが、「やっぱり生演奏っていいよね」という言葉でした。
今回は電子ピアノでの演奏でしたが、それでもライブの良さを、多くの方々に感じていただけたようです。
少しでも謝恩会の成功に貢献できたようで、安心したと同時に、音楽の素晴らしさを改めて感じました。
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