(この記事は、第275号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、お子様の発表会直前の様子と、先日行われた大人の方のコンサートグレードのお話です。
毎年開催されるお子様の発表会まで、あと1週間となりました。レッスンでは、発表会本番を想定したレッスンを行っています。
お名前や曲目などのアナウンスの後に、舞台の中央あたりまで歩いていき、お辞儀をして椅子に座り、演奏して、お辞儀をして戻ってくるという動作を何回も行っています。
これまでに、何回も発表会に参加されているお子様の場合は、「前回と同じね」くらいの話で済むのですが、初めてまたは2回目くらいの場合、小学校入学前後という年齢であることも多く、お話だけではうまくいきません。
実際にやってみますと、お辞儀する所まで歩く際にも、照れてしまったり、焦って駆け出してしまったり、「もっと、ゆっくり歩いてね」と話すと、逆に下を向いてとぼとぼと歩いてしまったりと、なかなか大変です。
お辞儀も、頭をちょこんと下げただけで終わってしまったり、腕を伸ばしたままお辞儀をして前屈運動のようになってしまったり、椅子に座るときにも、うっかり鍵盤を触ってしまい、じゃ~んと音が鳴ってしまうことがあります。これには、レッスンに同席されているお母様も驚いていました。
いずれも、普段のレッスンでは行わないことばかりなので、意外な盲点が浮き彫りになります。
今回初めて発表会に参加される生徒さんの先日のレッスンでは、お辞儀をして座ったとたんに、「えっと、何弾くんだったっけ?」と話していて、ビックリしました。
連弾で弾く場合などは、曲の出だしの合図も、明確に決めておく必要があります。普段の練習では、どうしても曲の途中の速度だったり、強弱だったりに意識が向いてしまうので、なんとなく弾き始め、なんとなく最後の音を切って演奏を終わらせていたりしますが、それだと、本番で揃わないことがあります。
今回、姉妹で連弾する生徒さんに、出だしの合図を聞くと、「家では、せーのって言ってたよね」と言うので、「じゃあ、その合図でやってみて」と話すと、かなり大きな声で「せーのっ!」と掛け声をかけていました。「ちょっと声が大きくて、お客さんがビックリしちゃうかなあ~。お姉さんに聴こえるだけでいいから、もっと小さい声でいいよ」と慌てて修正しました。
もちろん、本来は拍子を数えてから弾くわけですが、本番が迫っていることや、年齢が小さい事を考えますと、今から急に変えてしまうと、混乱してかえって弾けなくなってしまうと大変なので、合図そのものは変えないことにしました。
他にも、初めて参加する生徒さんがいますので、本番前の最後のレッスンで、しっかりと舞台上での動作を確認し、自信を持って堂々と演奏ができるようにしていきたいと思います。
話は変わりますが、今月上旬には、大人の方向けのコンサートグレードが開催され、司会者としてお手伝いをしてきました。
コンサートグレード自体は、子供も大人も同じものになるのですが、大人の部というカテゴリーに分けて、時々開催しています。普段は、ピアノ教室にある小さめのサロンで行っていますが、この日は紀尾井町コンサートサロンという会場で行われました。
建物の中は、大人の女性が好みそうな、ステキな内装が施されていて、サロン自体も明るい雰囲気で、舞台上には、スタインウェイのフルコンサートピアノが置かれていました。ソニー創業者の大賀典雄さんが、ソニーの役員を退任したときに、その退職慰労金で建てた軽井沢大賀ホールで使用していたピアノなのだそうで、ピアノの内部にピアニストのアシュケナージさんのサインが書かれています。
発表会でもそうなのですが、大人の生徒さんは、お子様と異なり、ご自身が本番でピアノを弾くことを、あまり周りの方にお話しされないようで、お一人での参加も多く見られました。ちょっと、もったいない感じもします。
コンサートグレードは、公開形式のグレード試験ですが、演奏前には参加者のコメントも読み上げることになっています。お子様の場合、曲の紹介や「頑張ります」といった意気込みがほとんどなのですが、大人の方の場合、少し違います。
幼い頃に、海外出張したお父様からお土産にもらったオルゴールの曲を、グレードの演奏曲に選んだ話しや、本番は高校生以来で数十年のブランクがある話、中には、大人になってからピアノを始めて、本当に上手になるのか、日々実践と検証を行っているようなお話もありました。みなさん、いろいろな思いを持って参加されているのだと感慨深く思いました。
本番の演奏は、舞台のすぐ横で見ていても手の震えがわかるほどに緊張されている方がほとんどで、止まってしまったり、弾き直しされる方もいましたが、それでも最後には立派に弾ききっていました。
弾き終えて席に戻ると、よほど悔しかったのか、天井を見上げてため息をついている方もいらっしゃいました。その方は、講評前の休憩中にも、レッスン担当の先生と私に悔しい思いを話していましたが、すぐ横で幼稚園生のお子様が「今日は、楽しかった」とニコニコしながら話していて、真逆な様子でした。
他の参加者は、休憩中に舞台のピアノと一緒に記念写真を撮ったり、ピアノの中に書かれているピアニストのサインを眺めていたりしていました。
休憩後は、審査をしたアドバイザーの先生方による全体講評と、写真撮影、評価と講評が書かれた用紙を受け取って解散となりました。
解散後は、アドバイザーの先生方と、順番に貴重なピアノを指弾させていただきました。
「楽器自体がよく鳴るのに、みんな(参加者)ちょっと力を入れ過ぎて、頑張っちゃっていたよね」という話も出ていました。
今回、参加された方々は、それぞれ時間をやりくりして練習とレッスンに通い、本番に臨んだわけです。緊張して、普段通りの演奏ができなかった方もおられると思いますが、ピアノが好きという気持ちはコメントにも演奏にも表れていて、日頃レッスンを担当させていただいている身としては、とても嬉しい気持ちになりました。
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