(この記事は、第281号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、大人の生徒さんのピアノ発表会のお話です。

大人の生徒さんを対象とした発表会は、大きく2つに分かれます。主に大人になってからピアノを始められた方を対象としたものと、子供の頃もレッスンに通われていたなど、ピアノのレッスン歴が長い方を対象としたものです。

先日は、レッスン歴の長い方を対象とした発表会が開催されました。

小さい頃からピアノを習い続けている方や、現役の音大生が出演することもありますので、発表会のプログラムには、なかなか難しい曲が並んだりします。ピアノ講師の間でも、「生徒さんのレッスンをする前に、自分が弾けるように練習しなくちゃね」などと冗談交じりで話すこともあるほどです。

今年は、東京駅近くにあるサロンで行われました。

この日は、来年開催される東京オリンピックの選考会を兼ねたマラソン大会が行われ、最寄りの地下鉄の駅では、見学する場所取りのため走っている人の姿を何人も見かけました。案の定、地上に出ると、警察官がいたるところにいて、規制線が張られ、多くの観客が選手を待っている状態でした。

それでも何とかサロンに到着すると、講師演奏する先生がリハーサルをしている最中でした。ヤマハのそれ程大きくはないグランドピアノですが、天井の高いサロンで、よく響いていました。この会場は、以前も何度か仲間たちとコンサートを行ったことがあり、よく知っていますが、それでも響きの多さに改めて驚きました。

他の先生方と最終の打ち合わせを行い、サロンを開場しました。既に到着している生徒さんが何人もいましたが、開演5分前になっても、私の生徒さんが現れないので、少しハラハラしながら待ちました。マラソン大会で交通規制されているため、自由に移動することができず、妊婦さんなので、万が一途中で体調が悪くなっていたら大変です。

しかし、なんとか開演時間前に会場に到着され、ほっとしました。道に迷われてしまったそうで、ご本人も焦ったようです。

主催者挨拶や注意事項の説明の後、予定通りに発表会が行われました。

最前列の隅の席で、司会をしながら、生徒さん方の演奏を聴いていましたが、お子様と違って、ほぼ全員の方が、かなり緊張している様子でした。

お子様の場合、緊張すると普段より口数が減り、若干顔がこわばったり、神妙な面持ちで出番を待っていたりしますが、演奏が始まると、わりと直ぐに普段の調子で弾けるというパターンが多いように思います。

しかし、今回の大人の生徒さんの場合、他の方が見てもわかるくらい手が震えてしまう方が、何人もいらっしゃいました。また、途中で音がわからなくなってしまい、何回弾き直してもまだわからず、先にも進めなくて立ち往生してしまう方がいました。この時は、自力で演奏を続けるのが難しい状況で、レッスンされている先生のフォローが入るかと思いましたが、偶然にもふとした拍子に正しい音が弾けて、続きの音楽を演奏することができました。本当にほっとしました。

開演時間ギリギリに到着された生徒さんは、何事もなかったかのような落ち着きぶりで、舞台に上がりました。

中間部の暗譜に苦戦されていたのですが、大変スムーズに安定して弾けていて、全体的にはかなり良く弾けていたと思います。この生徒さんは、来月ヤマハコンサートグレードの上級を受験するので、今回の良い感触を次に繋げてほしいものです。

全体の発表会の進行は大変スムーズに行うことができ、生徒さん方の演奏の後、講師演奏、集合写真の撮影がありましたが、予定よりも早めに終わりました。直ぐに会場を出る必要もなかったので、出演された生徒さん方と感想などの話しができた事はよかったです。

今回、大きなアクシデントはありませんでしたが、2つほど、今後のために生徒さん方へお伝えすべき注意点というかアドバイスが見つかりました。

1つ目は、コピーした楽譜を見て弾く場合、全てのページに台紙を貼ることをお勧めしたいです。

今回の発表会だけでなく、コピーした楽譜を見て弾く方が少なくありません。空調によって、楽譜がひらひらと動いてしまい見にくくなるだけでなく、ピアノの譜面台から落下するアクシデントを、何回も目撃しています。楽譜の一部だけ台紙を貼っている方も見かけますが、もちろん貼っていない楽譜がひらひらと動いてしまいます。全てのページの楽譜に台紙を張ることがポイントです。

2つ目は、衣装についてです。

発表会用に新調されたドレスなどを着て参加することも多いと思いますが、出番前に必ず鏡などでチェックされた方が良いでしょう。他の方にチェックしていただくと、更に良いと思います。

今回の発表会でも、背中のフックが外れたままとか、背中の編み上げのリボンがほどけたまま、舞台に上がって演奏してしまった方がいました。遠くから見ても、明らかにフックが外れていて、背中の上部がパカっと開いた状態になってしまいました。

直しに入ろうと思ったのですが、座った途端に演奏が始まってしまったため、結局そのまま本番を終えることになってしまいました。着慣れた衣装でも、緊張していますから、何かの拍子に外れたり、取れたりしても気が付かない事がありますので、本番前にはチェックしましょう。

また、ロングでない丈のスカートやドレスを着る場合は、ストッキングにも気を付けましょう。

今回の発表会でも、ワンピースで出演された方が、ひざ丈くらいのストッキングを履いていたため、履き口が丸見えになっていました。椅子に座ると、当然ながら衣装の裾丈が少し上に上がりますので、通常のロングストッキングの方が無難かもしれません。

演奏以外の準備も万全にして、本番に臨みたいですね。

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