(この記事は、2020年6月22日に配信しました第300号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、先月放送された「題名のない音楽会」のお話です。
テレビの音楽番組の中でも、かなり長い歴史がある番組ですが、先月は、「夢をかなえた音楽家たちの休日」というタイトルで放送されました。
チェロ奏者の宮田大さん、クラリネット奏者の吉田誠さん、ピアニストの反田恭平さん、クラシックギター奏者の村治佳織さん、サクソフォン奏者の上野耕平さんが出演されていました。
一流のプロが、どんな思いを抱いて音楽を始めたのか、また夢を実現した瞬間は?というテーマでした。
最初に、人前で演奏を始めたときの話です。
チェロの宮田さんは、3歳の時に、習い始めてまだ8ヵ月でお客さんの前で演奏したそうです。番組では、当時の映像が流れていました。パーセル作曲の「リゴードン」を演奏していました。可愛らしい姿と上手に演奏している姿に、スタジオでは、アナウンサーが目を真ん丸にして驚いていました。ちなみに、宮田さんは、今でもこの時の風景を覚えているのだそうです。
クラリネットの吉田さんは、3歳のピアノ発表会が初舞台だったそうです。クレメンティのソナチネを、スタジオで生演奏していました。クラリネット奏者が、ピアノの生演奏をするのは、なかなか珍しいものなので見入ってしまいました。演奏後は、「3歳の時より、今の方が緊張しました」と笑顔で話していました。
吉田さんは、最初ピアノを習っていて、15歳でクラリネットを始めたそうです。ピアノやヴァイオリンは、かなり小さい頃から始めることが多いのですが、その他の楽器については、吉田さんのようにピアノなどを先に習っていて、その後楽器を変更していくという進み方が結構多いものです。中学生になって、部活動で他の楽器を始めるというのも、よくあるパターンです。
ピアノの反田さんは、子供の頃初めて発表会で弾いたギロック作曲の「ガラスのくつ」を演奏していました。シンデレラがガラスの靴を履いて踊る、舞踏会のシーンを描写した曲で、発表会でも人気の曲です。反田さんは、5歳の時に大ホールでこの曲を弾いて、とても感慨深かったそうです。「5歳の時に、既に大きなホールで弾く感動を知ったというのがスゴイですね。」と出演者の古坂大魔王さんが、感心しながら話していました。
クラシックギターの村治さんは、お父様のギター教室の発表会で弾いたのが、初舞台だったそうです。3歳の時の出来事です。初めて両手を使って弾けるようになって、童謡のちょうちょやチューリップなどを何曲か弾いたそうです。
スタジオで演奏もしていましたが、古坂大魔王さんの「何これ。(単なるちょうちょじゃなくて)アゲハチョウですよ」というコメントに、一同大爆笑していました。どんなに簡単な曲でも、プロが演奏すると、やはり素晴らしい音楽になるのですから凄いと思いました。
サクソフォンの上野さんの初舞台は、他の方とはかなり違っていて、なかなかインパクトのあるものでした。小学校2年生の時に、生まれ育った茨城県の東海村で、名産品であるサツマイモの収穫を祝うサツマイモ祭りで弾いたのだそうです。しかも、演奏した曲が、なんと「水戸黄門のテーマ」。スタジオで生演奏をしていましたが、高級感があり、古坂大魔王さんの「黄門様がバーボン飲んでいるみたいですね~。」というコメントが、本当にピッタリな表現だと思いました。
次は、夢をかなえたときの話と演奏です。
クラシックギターの村治さんは、オーケストラと共演したいという長年の夢を実現させたときの曲である、ロドリーゴ作曲の「アランフェス協奏曲」第2楽章を演奏しました。ロドリーゴが、かつて夫人とアランフェスを訪れた際の思い出を元に作曲したギターの名曲です。中学3年生の時に、オーケストラと共演する夢がかなった思い出の曲なのだそうです。「オーケストラの豊かな響きを、初めて背後から感じて感動したので、また味わいたいと思いました。」とコメントも流れていました。
クラリネットの吉田さんは、学生時代、初めて同級生たちと組んで演奏した時、そのトリオの響きや友人との一体感に彷彿としたというベートーベン作曲の「街の歌」を、反田さん、宮田さんと共演していました。27歳のベートーベンが、当時の名クラリネット奏者から依頼を受けて作曲したピアノ三重奏曲の名曲です。クラリネットの吉田さんが、素晴らしいアーティストたちと共演することが夢だった曲なのだそうです。
番組の最後には、サクソフォンの上野さんが夢だった四重奏を初めて演奏したという、サンジュレ─作曲の「サクソフォン四重奏曲」が演奏されました。「初めてサクソフォンが4本重なったときの音と響きに感激して、今でもその時の気持ちは忘れられない」とコメントが流れていました。
サクソフォンの四重奏は、初めて聴きましたが、ソプラノサクソフォン、アルトサクソフォン、テナーサクソフォン、バリトンサクソフォンが、それぞれとても柔らかく温かみのある音を出していて、美しいハーモニーに聴き入ってしまいました。金管楽器という見た目から、きらびやかで輝かしい音をイメージしますが、そのギャップに驚きます。
演奏後、古坂大魔王さんが、「すげーわ、すげーわ」と拍手しながら、ため息交じりに感想を言っているのが、とても印象的でした。
コロナウイルスも、日本では収束してきており、移動も緩和されてきました。演奏家は、コンサートで演奏して生活が成り立つ職業ですから、厳しい時を過ごされてきた方も多いと思います。しかし、だからこそ、じっくりと練習が出来たり、レパートリーなども増えて、ますます演奏に磨きがかかっているかもしれません。
これまで以上の演奏の素晴らしさを楽しみに、また応援の気持ちも込めて、これからもコンサートに足を運びたいと思いました。
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