(この記事は、2020年11月9日に配信しました第309号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、大人の生徒さんの発表会の様子です。
先日、大人の生徒さんの発表会が開催されました。
コロナの影響でレッスンが休講になり、6月には再開しましたが、感染予防対策を行いながらレッスンをコロナ以前の状態に戻す事が優先事項となり、発表会については未定という状態が続きました。
大人の生徒さんの発表会は、例年秋から冬に開催していますが、寒い時期になるとコロナの感染が再び増加する可能性があることや、ご高齢の生徒さんも多く参加されるため、今年の開催は難しいと思われました。しかし、生徒さん方のご要望がとても多かったこともあり、最終的に縮小した形で開催することになりました。
生徒さん方は、驚かれつつも、どこか嬉しそうなお顔をされていたように思います。
大人の生徒さんは、2、3ヵ月という割と短い期間に、発表会の曲を決めて練習に取り掛かる方がいる一方で、半年や1年くらいかけて、じっくりと練習を積む方もおられます。
1年間ずっと同じ曲の練習だと、飽きるのではないかと思うかもしれませんが、月に2回のレッスンの場合、3ヵ月でもレッスンは6回なので、それほど長く同じ曲をレッスンしてもらっているという感覚にはならないようです。また、大人の生徒さんの場合、「難しい曲だけれどチャレンジしてみたい」というご要望も珍しくないため、おのずと練習期間が長くなります。
今年、発表会に参加された生徒さんの場合、約半分の方は、開催が決まる前から既に練習を始めていました。逆に、開催が決定してから曲を決めた方は、それほど多くの時間があったわけではありませんが、すぐに曲を決めて楽譜の用意もされ、練習を始めましたので、準備はとてもスムーズに進みました。
発表会が間近となり、当日のプログラムをお渡ししますと、いよいよ本番まであと僅かという事を強く意識されるようで、お仕事が忙しくて練習がままならないことに焦っている方や、「来年に向けて頑張ります」と、今年の出来は諦めて来年リベンジするという冗談をおっしゃる生徒さんもいらっしゃいました。
発表会当日は、例年ですと、生徒さんの集合時間を決めて、出欠を確認したり、当日のタイムスケジュールの確認、舞台上での流れの確認、個々の生徒さんの譜面台の有無や集合写真の順番、記念品の配布などの最終チェックを行いますが、今年は、密になることを避けるため、集合時間を設けず、打ち合わせも極力事前にメールで行いました。
そのため、通常ですと、開演前はホールの入口に人が集まり、ガサガサしている感じでしたが、今年は混雑する様子は全く見られず、穏やかに開演前の時間を過ごしました。出演される生徒さん方も、すぐに見つけることができ、開演前に激励の言葉をかけることができました。
ホール内は、隣の席との間隔を空けてソーシャルディスタンスを保ち、司会者の席には透明パネルを設置、スタッフの席には消毒薬とふきんが用意されました。ホールのドアは、直前まで空けて換気も行いました。
発表会は、予定通りに開演し、スムーズに進行しました。
今年初めて参加された70代の生徒さんは、合唱団に所属されているのですが、そこで歌っている曲を発表会の曲に選びました。ピアノ教室に通われて1年程で、大人になって初めてピアノを習い始めた方です。
以前、お仲間同士で集まりがあった際に、ピアノを習い始めたことを話し、ちょうどその場にピアノがあったので練習している曲を弾いたのだそうです。しかし、頭が真っ白になってしまい、かなり間違えてボロボロだったそうです。そのリベンジをしたいというお気持ちが強く、また同時に、発表会に参加することで目標ができて上達すると、とても前向きな考えをお持ちでしたので、コロナで休講の時から、もし発表会が開催されるのであれば参加したいとおっしゃっていましたし、休講中もオンラインレッスンを熱心に受けていました。
演奏した曲は、レッスンでは結構すらすらと調子よく弾けているのですが、前奏部分でミスをしてしまう事が多く、本番前のレッスンでは、集中的にこの部分を練習しました。本番でその部分が近づくと、私も少し緊張気味に聴いていましたが、とても安定感良くきれいに弾いていて、何の苦労も感じさせない演奏で安心しました。その後も、とてもスムーズに弾けていて、最後の方で意外な箇所で音を一つミスしてしまいましたが、全体的にはとてもよかったと思います。
別の生徒さんは、お仕事でなかなか練習する時間が取れず、レッスンをお休みされることもありましたが、小さい頃にピアノを少し習っていた方で、今回は小さい頃に練習したことがある曲を選びました。
よく指が動きますし、譜読みも早いのですが、若干うろ覚えの箇所があり、レッスンでは、なんとなく弾いている部分をきちんと理解して弾くように、また細かいリズムの確認やペダルの有無などについても指摘して練習をしました。
本番では、いつも通りの良い滑り出しでしたが、ちょこちょことミスが続き、少しもったいない演奏になってしまいました。演奏が終わり席に戻ってきた時には、「たくさん間違えちゃった~」と話されていて、悔しそうな表情をされていました。
また別の今回難しい曲にチャレンジされている生徒さんは、本番前のレッスンで「来年に向けて頑張ります」と冗談をおっしゃっていた方です。ドビュッシーの作品ですが、調号や臨時記号が多く、拍子も途中で変わってしまうという、美しい曲ですが、なかなか大変な曲です。レッスンでも、かなり苦労されている様子でしたので、本番どうなるのか少し心配していました。
しかし、演奏が始まりますと、安定したテンポでとても落ち着いて演奏されていましたし、レッスンでは一瞬間が空いてしまっていた難しいところも難なくクリアされていて、とても心地よい流れで演奏することができていました。
また別の生徒さんは、今回初めてブラームスの曲を選びました。この曲は、単音のところが全くなく、終始和音を弾き続けるようなスタイルの作品で、和音の真ん中の音の判別に少し迷いがあり、レッスンでも正しい音を指摘していました。
左手を使用する音域も広いので、低音を弾いた後の次の和音で迷ってしまう事がありましたが、本番ではスムーズな動きで弾いていました。かなり調子よく弾けていたのですが、最後の2小節というところで一瞬迷いが生じたようで、とても惜しい演奏でした。
発表会が終わった後の最初のレッスンでは、みなさんに感想をお聞きし、講評をお話ししましたが、やはり全員の方が、緊張はしましたが、ある種やり切ったという充実感もお持ちのようでした。
今年は、コロナ一色の年になってしまいましたが、その中でも発表会に向けて努力し、達成感を感じて頂けれたことは良かったと思います。
12月には、お子様の発表会も開催されます。みなさんが、今年は大変な年だったけれど、こんなに頑張ったと思えるように、私も頑張りたいと思います。
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