(この記事は、第51号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、前回お話をした「ショパン国際ピアノコンクール」の続編です。

一般には、ショパンコンクールと呼んでいますが、このコンクールは他のコンクールと違い、「いかにショパンの音楽の真髄を深く理解して表現するのか」という点を競うコンクールです。これだけを競うコンクールと言ってもいいかもしれません。

普通のコンクールは、ショパンを始め、ベートーヴェン、モーツァルト等々「あらゆる音楽家の作品を、どれだけ素晴らしく演奏するのか」という点を競います。

それは、ピアニストにとって、いろいろな作品を演奏できる事が重要だからです。「○○の音楽しか弾けません」ということでは、ピアニストとしては成り立たないのです。

そのためコンクールでは、当然いろいろな時代の、いろいろな音楽家の作品が課題曲として指定されますし、そのコンクール用に新しく作曲された現代音楽が課題曲になることもあります。

新しく作曲された曲は、当然その時点ではまだ誰も演奏したことが無く、CDなどで聴くことも出来ません。限られた準備期間の中で、そのような曲の練習もするのですから、コンクールを受けるだけでも大変なことなのです。

そのようなことを考えますと、ショパンコンクールはちょっと特殊なコンクールなのかもしれません。

ショパンコンクールは、ショパンの音楽だけを素晴らしく演奏した人を選ぶわけですから、当然課題曲も全てショパンの作品になります。

予備選考では、前回ご紹介した作品を弾くのですが、予備選考をめでたく合格しますと、いよいよ予選となります。10月3日から行われる第1次予選では、ノクターンとエチュード(練習曲)を2曲の他に、舟歌、バラード、幻想曲から選んで弾きます。

ノクターンは、中級者の方がよく好んで弾く「ノクターンOP9-2」などが有名です。エチュードは、「革命」「黒鍵」「別れの曲」「木枯らし」「蝶々」などが代表的で音楽大学のピアノ科の課題曲にも指定される事が多い作品です。

前回のショパンコンクールは、2000年に行われたのですが、その時は98人の参加者が演奏し、第1次予選を通過したのは38人という結果でした。半分以上の方が敗退した事になりますので、なかなか厳しいですね。

第1次予選が終わりますと、すぐに第2次予選が始まります。

ここでは、ポロネーズ、スケルツォ、ワルツの他に、プレリュード(前奏曲)、子守唄、タランテラ、ロンド、即興曲などから選んで弾きます。

この第2次予選から、いよいよショパンの音楽の特徴である「ポーランドの音楽を織り交ぜた作品」を弾くことになります。

クラシック音楽に自国の民族音楽を取り入れて、それを芸術の域にまで高めた作曲家は、ショパンが初めてと言っても過言ではないと思います。当時は、本当に斬新なアイディアで大変珍しかったのではないかと思われます。田舎のお祭りなどで踊ったりするときの音楽を、クラシック音楽に取り入れたという感じですね。

小さい頃からそのような環境で親しんでいると、とても上手に演奏出来そうなので、やはりポーランド人が有利なのではないかと思ってしまいますが、実際には、どうもそうでないようです。

日本でもそうですが、田舎そのものに接する機会が少なくなってきていますので、もはやどこの国の人でも難しさは同じであると、以前 審査員をされていたピアニストの中村紘子さんがインタビューでお話をしていました。

ポロネーズは、ショパンのピアノ曲全体の中でも有名な「英雄ポロネーズ」の他、「軍隊ポロネーズ」などもあります。

ワルツは、小・中学生から大人の方まで幅広く弾かれる曲で「子犬のワルツ」や「ワルツ第7番」「子猫のワルツ」「別れのワルツ」「華麗なる大円舞曲」などが有名です。プレリュードは、「太田胃酸」のCMでお馴染みの曲も入っています。

この第2次予選では、前回は38人から12人が通過しました。3分の2は敗退したということになります。勝ち進むと、どんどん厳しくなり、狭き門になっていきます。

(次回へ続く・・・)

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