(この記事は、2021年6月21日に配信しました第325号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、大人の生徒さんのピアノレッスンの様子です。

お子様は、約1ヵ月後に発表会ですが、大人の生徒さんの発表会は晩秋に開催されるので、まだまだ先になります。現在は、それぞれマイペースにピアノを弾いて、レッスンに通われています。

最近は、やはりコロナのワクチンの話が、話題に上がることが多くなりました。巷では、予約の電話がなかなか繋がらないとか、分かりにくいなど、いろいろと言われていましたが、ピアノ教室に来られる生徒さんのお話を聞く限りでは、そうでもないようです。

予約が大変という話を聞いて、息子さんや娘さんにワクチン接種の予約を取ってもらった方が何人もおられましたが、「息子に頼んだらスムーズに予約ができた」「自分でホームページから予約したけど、意外にわかりやすかった」という感想を聞きました。

先日1回目のワクチン接種を終えて、夜も眠れないほどの激痛を味わってしまった生徒さんは、2回目の接種がレッスンの前日という事もあり、「レッスンに来られないかも」と弱気になっていました。そのレッスン当日に連絡がなく、大丈夫なのか、はたまた電話を掛けられないほどの辛さなのかと心配していましたが、いつもと変わらない様子で教室にいらっしゃいました。

「2回目の接種が昨日でしたよね。体調はいかがですか?」と真っ先に声を掛けました。すると、「そうなんですよ。昨日予防接種をしたんですけれどね。これがね、なんともないんですよ。2回目は熱が出るとかなかなか大変だと聞いていましたから、どうなるのかと思っていたんですがね、あまりに何ともなくて、2回目の接種って本当にやったんだろうか?と思っちゃうくらいでしてね」と、半信半疑のような表情をしながらお話をされていたので、思わず笑ってしまいました。

「そうなんですね。夢か幻か?という感じなんですね。それにしても、何ともなくてよかったですね」と私も安堵しました。

「お孫さんとも早く会いたいから、予防接種を打ちたいわ」と話されていた別の生徒さんは、レッスン室に入るなり「私、今日コロナのワクチンを打ってきたんです」と、にこやかに話し始めました。

「え~っ、そうなんですか。体調は大丈夫ですか?」と前のめりになって声をかけました。すると、「大丈夫です。午前中に大手町に行って打ってきたんです。娘が予約をしてくれましてね。」「あの、大規模接種会場ですよね?出口がわかりにくいとか、行列だとか話を聞きましたけれど。」「そうそう、竹橋の駅からすぐなんですけどね。いろんなところにたくさん案内の人が立っていてね。分かりやすかったわ。すんなり打ってもらって、打ち終わったら30分は経過観察で待たないといけないんだけれど、それを入れても40分くらいで済んじゃったかしら」と詳細を教えてくださいました。

「そうだったんですね。だいぶスムーズでしたね。」「あそこは、自衛隊の方がやってるんでしょ。だから日頃の訓練で慣れているのかしら。ホント、これから打つ人にはお勧めだわ」とも、おっしゃっていました。

この生徒さんは、ご近所に娘さん一家が住んでいるという事もあり、以前はお孫さんなどもよく自宅に遊びに来ていたそうですし、お誕生日会やクリスマスパーティなどもされていたそうです。コロナの影響で、会う事も遠慮されていたそうですが、接種後は安心して会う事ができるかもしれませんね。

コロナの話はこの辺にして、レッスンの話題に移ります。

結構前に、お仕事を早期退職され、時間に余裕があるのでピアノを本格的にやりたいという事で、レッスンに来られている生徒さんがいます。「本格的」という事で、ハノンピアノ教本を一通り練習して、チェルニー30番練習曲も終わらせ、今は同じくチェルニーの40番練習曲に進んでいます。

お子様の生徒さんの場合は、テクニックの教材といわゆる曲集のようなもの、そしてワークなどを使用することが多いと思いますが、大人の生徒さんの場合は、楽しみの要素が大変強く、なかなか練習時間の確保が難しいこともあり、弾いてみたい曲だけを練習することの方が多くなります。ですから、チェルニーの練習曲を弾いている大人の生徒さんは、珍しいと思います。

新しい練習曲も、1週間後のレッスンまでに、きちんと最後まで弾ける状態に仕上げていますので、とても熱心な生徒さんです。昨年は、ベートーヴェン生誕250年のメモリアルイヤーでしたが、前からベートーヴェンの曲を弾きたかったとの事で、ソナタの「悲愴」「月光」をそれぞれ全楽章弾いていました。

レッスンでは、1楽章から練習して、2楽章、3楽章と進め、1つの楽章が終わると、前の楽章から続けて弾く事もして、3楽章まで弾けるようになったら、全楽章通して弾いてみる事までしていました。

「月光」を全楽章弾けるようになって、曲が仕上がったときに、「次の曲は、どうしましょう?ベートーヴェンでも他の作曲家の曲でもなんでも。「悲愴」「月光」と来ましたから、「熱情」を弾いたらベートーヴェン3大ソナタ制覇になりそうですね」とお話すると、「えっ、あれは。。。大変ですよね」と絶句されていました。

「いえいえ、絶対弾いてくださいとかではないですから。1楽章は長いですから、やるとしたら2楽章から練習をして、3楽章、そして1楽章という順番の方がやりやすいかもしれませんね」とフォローをして、「ご自宅に戻られてから、考えてみてください」と話して、いったん終了しました。

そして1週間後、「いろいろ考えたんですけど、やってみます」とおっしゃりながら開いた楽譜は、ベートーヴェンの「熱情」ソナタで、2楽章からコツコツと練習を進めて、つい先日全楽章を終えることができました。

「いや~、凄いですね。3大ソナタ制覇しちゃいましたね」とお話すると、「熱情の1楽章なんて、どうなっちゃうんだろうと思っていましたけれど、なんとか弾けるようになりました」と、弾いた直後なので疲れ果てている様子でしたが、どこかほっとしたような表情でお答えになっていました。

来週からは、リストの愛の夢 第3番を弾いてみたいとおっしゃるので、「いいですね。ベートーヴェンが続いて、だいぶ重かったですからね(笑)。ガラッと曲想も変わって華やかですし、長さも2ページですから短いですよ。「熱情」を練習した後ですから、楽に感じるかもしれませんね」と話すと、「いいんですか~?」と嬉しそうにおっしゃっていました。張り切っている様子なので、きっと1週間でかなり譜読みを進められるのではと思っています。

別の生徒さんで、初めてブラームスの曲に挑戦されている方は、使用する音域の広さに戸惑っていましたが、最近だいぶ慣れてきました。先日のレッスンでは、なかなか音が繋がらず、「ぷつぷつ音が切れるんです」と困っている様子でしたが、もう少ししたらペダルを使用するので、音が響いて繋がりますから大丈夫ですよと答えますと、ほっと安心されていました。

なかなか正しい音がはまらない箇所もありましたが、急に前の音との幅が狭くなるところで、5番から1番の指を使うのですが、手の平を小さく縮めることが少し足りないことが原因でした。

「5番を使用して弾くと、その直後に、かなり手の平を小さくしておかないと正しい音が弾けないところが難しいのですが、それができた後は、自然に次の音を弾けるところがメリットなんです。4番を使用して弾くと、その直後は、手の平を縮めなくても自然に弾けますが、以前から4番を頻繁に使用して違う音を弾いていますから、紛らわしくなることがデメリットです。5番でも4番でも、どちらの指を使って弾いても良いとは思いますが、どうしましょうか?」と話すと、「きっと、楽譜を書いた人がこの指を使って弾くようにと、練習という意味を込めて書かれていると思うので、書いてある通りの指で弾きます」と、即座にお答えになりました。

「そうですね、いろいろな指を使って弾く事で訓練にもなりますし、クラシック音楽の場合は特に楽譜に忠実であることが大切ですからね」という事で、結局楽譜通りの指を使うことになりました。まだまだ不安定な状態ですが、毎日コツコツと練習をする方なので、きっと今回も克服できるのではないかと思っています。

大人の生徒さん方は、ご自分以外の事でも何かとお忙しくされている方が多く、そんな中で練習時間を確保してピアノを弾いていることに、本当に凄いなあと毎回レッスンのたびに感じています。そんな方々に、少しでもレッスンに来てよかったと思っていただけるように、これからも精進したいと思います。

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