(この記事は、2022年5月2日に配信しました第346号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、ゴールデンウィーク前のピアノ教室の様子です。
ぽかぽか陽気の日もあれば、夏日もあり、そうかと思えば急に冷え込んで肌寒い日もあり、目まぐるしく天候が変わる今日この頃です。
数年ぶりの緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置が無いゴールデンウィーク期間を迎え、生徒さん方からもお出かけの予定をちらほら聞くようになりました。そうは言っても、お子様の生徒さん方は、6月に発表会を控えていますので、楽しくお休みを過ごしていただきつつ、ピアノの練習にも精を出していただけたらいいなあと、少し欲張りな気持ちを抱いてしまいます。
発表会で大好きなアニメの曲を弾く生徒さんは、今週もご機嫌な様子でピアノを弾いていました。裏拍に音を弾くところが多いのですが、少し曖昧なタイミングで弾いている所があったり、少し音が飛ぶところで一瞬間が空いてしまっている所がありましたので、その個所を重点的にレッスンを行いました。相変わらず、「難し~い」やら、時には悲鳴のような雄叫びを上げたりもするのですが、受け止めつつも何回も反復練習を行い、正しいリズムを覚えることと、自分の演奏がきちんと出来ているのか否かを判別できるようにしました。
後ろで聴いているお母様が、レッスン後に「いや~、なかなか難しいリズムで、私はよくわからないのですが…大丈夫かしら?」と少し心配そうにお話をされていましたが、「レッスンでも何回も正しいタイミングで自力で弾けていますし、違うときに違うという事も聴き取れて修正できていますので大丈夫です」「ね、何回も成功していたもんね」と生徒さんに話を振りますと、「うんっ!」と力強く頷いていました。どちらかというと、自信満々で弾くタイプではないのですが、着実に完成に向かっていて頼もしいなあと思いました。
一方で、自信満々で弾くタイプの生徒さんは、かなり安定して楽しそうに発表会の曲を弾いていました。少し短めの曲を選んでいたこともあり、かなりまとまってきていましたので、「もう1曲、発表会で弾いてみましょうよ」と聞きますと、生徒さんも同席されているお母様も、パッと嬉しそうな笑顔を見せていました。候補の曲を数曲ご紹介して、それぞれの曲の解説や難易度などをお伝えし、聴き比べていただいたところ、少し面白いタイプの曲を選んでいました。
先日、初レッスンをしたのですが、楽譜を広げたところ、「あっ」というリアクションをしていましたので、「もしかして、思ったよりも長い曲で、選んだことを少し後悔している?」と冗談でお話したところ、少し苦笑されていました。どうやら、図星だったのかもしれません。「確かに、1曲目に比べると長いから、あら~と思うかもしれないけれど、曲の作りを見ていくとどうかなあ? 一緒に見てみましょ」という事で、楽曲分析(アナリーゼ)をしてみました。
場面で区切って番号を振ることを、いつも一番最初に行っています。生徒さんと一緒に考えながら曲を区切っていき、「あれ、これってなんだか聴き覚えがあるよね?」と尋ねると、「あっ、(1)と同じだー」「そうそう、全部同じなんだよね。だから、(1)番が弾けると、ここは練習しなくても弾けちゃうね」「ここは、(1)とほとんど同じなんだけど、高さだけ違うんだよね。1オクターブ高くして弾くだけだから、すぐ弾けそうだね」などと、ワイワイ楽しく分析をしていきました。終わった時には「な~んだ。難しそうだと思ったけれど、簡単じゃん!」と話していて、同席されていたお母様も、苦笑いをされているような様子でした。
早速、左手の伴奏の練習から弾き始めましたが、伴奏もパターンがありますので、それがわかるとかなり弾きやすくなります。生徒さんも、あっという間にわかり、伴奏の軽快な動きにノリながら楽しそうに弾いていきました。その後、生徒さんの左手の伴奏に、私がメロディーを弾いて、全体の音楽の流れや両手で弾いた時のイメージを掴むこともしてみました。
次に、右手のメロディーも少し練習をしてみましたが、変拍子の曲なので、音を伸ばした後の次に弾く音のタイミングが少し難しく、遅かったり速かったりしていましたので、「私が、3と数えたらこの音を弾いてね」とお話をして練習をしてみました。「あれっ? まだ2しか言ってないよ~」というと「あー!間違えたあー」と叫んだりして、なんだかだいぶ盛り上がった雰囲気でレッスンが終わりました。
初めて弾くタイプの曲なのですが、1回目からいろいろと曲が見えてきていますし、曲の特徴的な拍子感を割とすんなり受け入れているようですので、今後も順調に曲の仕上げまで進めそうな感じがして、私も楽しみです。
少し前から通っておられる80代後半の生徒さんは、お好きな曲を毎回熱心に練習をしているのですが、若干スランプ気味というのか、ジレンマを抱えている様子でした。ご自分で弾いていても、曲になっていない気がするそうで、「なかなか指も思うように動かないし、曲が難しいことは承知していたけど、この続きの変奏部分は難し過ぎて到底弾けない気もするし、自分も年だからここまでかと限界もわかっているんだけれど。以前習っていた先生からもらった簡単にアレンジした曲を弾いたら良いのかもしれないけれど、どうもつまらない気がして弾きたくないし。曲も、元々ピアノソロの曲ではないし、プロが演奏しているので、とっても速くてなんだか同じ曲を弾いているように思えない」というようなお話をされていました。
「今弾いている部分の先にある、変奏部分の数曲については、プロでもコンサートなどでは変奏を抜粋して弾く事もありますし、かなり難しくなるので、まずは今弾いている箇所までということにしましょう」というお話をしました。そして、曲には、ある程度適切なテンポ感があり、弾き慣れている最初の部分を少しテンポを速く弾く練習をすることで、曲のイメージに近づけることや、楽しみでピアノを弾いていらっしゃるので、無理に好きではないアレンジの曲を弾く必要は無いと思うという旨のお話もしました。
早速、少し速めのテンポで弾く練習をして、どの箇所に間が空いてしまっているのかをチェックして、正しいテンポで弾くとどのような音楽の流れになるのかも確認をしました。そして、「参考ということで、ちょっと私が弾いてみますね」と言って、弾いてみました。弾き終わりますと、「いや~、自分のとは全然違いますね。でも、これまで何人もピアノの先生にピアノを教えてもらいましたが、先生にピアノを弾いていただいたのは初めてなので。こういう風になるんですね。今日は、本当に良い日になりました」とおっしゃりながら、何回もお辞儀をしていました。「あら~、そうでしたか。なんならジャンジャン今後も弾きますので」とお答えをしますと、笑顔を見せていました。
ご高齢の生徒さんは特に、なかなか思うように指が動かず、ご自身がイメージする演奏とのギャップを感じてしまう事があります。それでも、日々の練習で、以前よりも指のコントロールは付いてきていますし、後は、イメージ通りの演奏にするための最適なアドバイスと、その練習を一緒に進めて行くことが必要となりますが、何よりも、生徒さんが感じている事やお気持ちに寄り添うことが大切なのだと改めて感じました。
生徒さんが、今後も日々の生活の楽しみとしてピアノと関われるよう、そしてずっと続けられるように、私も頑張りたいと思います。
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