(この記事は、第52号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「ピアノ教室の出来事」は、兄弟・姉妹でレッスンに通われているお子様のお話です。
兄弟や姉妹で一緒にピアノの教室に通うことは、よくある光景です。しかし始めから一緒に習い始めるのではなく、上のお子様が先に習い始めていて、あとから下のお子様が始めるというパターンがほとんどです。
上のお子様がレッスンに通うときに、一緒に来て終わるまで待っていたり、また送り迎えの時に下のお子様も一緒に来ていて、段々とピアノのレッスンが身近に感じるようで、「僕も(私も)、ピアノをやりたい」と言い出すのだそうです。
親御さんは、上のお子様だけをピアノ教室に通わせようとは思っていないようで、いずれは下の子も習わせようと思っていることがほとんどです。
では、「下のお子様をいつから習わせるのか?」ということですが、お子様本人が、「ピアノをやってみたい」と言い出した時ではなく、ある特定の時期に集中しているように思います。
それは、幼稚園/保育園の入園時、または小学校の入学時です。
例えば、お姉さんのレッスンのお迎えに来ている弟さんが、毎週必ず「僕もピアノやりたい~」と言って、半分ぐずってしまう程でしたが、幼稚園の入園と共に習い始めました。
またお兄さんがピアノを習っていて、お迎えの時にいつも幼稚園生の弟さんが来ているケースもありました。同じように「ピアノやりたい」と言っていましたが、いつもお母様が「小学校に入ったらね」となだめていて、小学校の入学と共にピアノを始められました。
こうして、兄弟・姉妹が揃ってピアノの教室に通うことになるわけですが、レッスンに関しては2つに分かれることになります。
同じ時間に同時に習えるように、別々の先生に習うケースと、続きの時間に同じ先生に習うケースです。中学生のように大きくなりますと、兄弟や姉妹でも生活のペースが異なりますので、バラバラの曜日や時間になることがほとんどですが、小学生のうちは、なるべく送り迎えが同時に済むようにと親御さんは考えているようです。
送り迎えが無くなっても、いくら近所とはいえ、お子様が一人で通うのは、なにかと心配も多くなります。兄弟が一緒に通えば、少しは安心という事もあるようです。
私がこれまでに見させていただいた生徒さんの場合、兄弟・姉妹を揃って見させていただくことが殆どでした。
兄弟が揃ってレッスンに通うのですが、いざレッスンを始めてみますと、下のお子様の進むペースが速い事がよく起こります。
随分スラスラとよく弾けるので、「ピアノをやりたい」とずっと思っていて、熱意が強いから頑張って練習をしているのかと思っていました。もちろんそれもあるのですが、それ以外の要因もあるのです。
それは、上のお子様の練習をずっと聴いてきたので、自然と耳で曲を覚えているのです。
よく「耳コピ」などとも言います「耳で曲を覚えて弾く」ことは、ピアノや音楽を楽しむ一つの方法ですが、賛否両論があることも事実です。
特にクラシック音楽を演奏する場合には、「楽譜に書かれている事を忠実に守る」ことが重要で、耳で覚えた場合、曖昧な点があったり、聴き間違えたまま覚えてしまう事もあるからです。
モーツァルトを始め、いろいろな音楽家の天才ぶりにまつわる話に「一度聴いた音楽を完璧に覚えて楽譜に書いた」とか「一度聴いた音楽は、すぐに何でもピアノで弾けた」というものがありますし、辻井伸行さんを始めとする盲目の演奏家の方々の活躍ぶりを考えますと、個人的には音楽の一つの立派な能力だと思います。
それに加えて、楽譜から色々なことを読み取って演奏できれば、更に演奏の力も付きますし、演奏できる曲の幅も広がり、より音楽を楽しむことに繋がっていくのではないかと思います。
このように、下のお子様が次々と進むことに、上のお子様はあまり良い顔をしない事もありますので、そこはきちっとしたフォローが必要です。
兄弟や姉妹が、それぞれのペースで、またお互いに良い刺激を受けながら、楽しくピアノを弾き続けられるといいなぁと思っています。
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