(この記事は、2022年6月13日に配信しました第349号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、お子様の発表会のお話です。
6月に入り、梅雨の季節となりました。暑い日もあれば翌日はだいぶ涼しかったり、体調管理が少々難しい日々ですので、生徒さん方と「何を着てよいやら悩ましいですね」などと話しています。
毎年6、7月に開催しているお子様の発表会が、先日行われました。想定していたより1ヵ月程早い日程になりましたので、直前までバタバタしていました。
だいぶコロナは落ち着いてきましたが、まだ安心とまでは言えない状況なので、人数制限をして、集合写真や講師演奏は無しの短時間でコンパクトな発表会となりました。密を避けるために、集合時間をきっちりとは決めず、おおよその目安の時間をお伝えしましたので、早めにいらした方もいれば、あえてゆっくり目にいらした方もいました。生徒さんやご家族の方も、配慮していただいたようで、ありがたく思っています。
事前に、一緒に発表会を行う先生方と打ち合わせを行い、欠席者の確認、連弾の配置、アナウンスの担当や内容、生徒さんの名前の呼び方の確認、録音や休憩時間の確認などを行いました。
ホールに到着された生徒に、マスク着用の有無やおじぎの位置をお伝えし、最後の激励をして回りましたが、もう何度も発表会などに出演されていることもあり、緊張し過ぎて青ざめているような生徒さんはおらず、むしろ楽しみという様子さえ感じられました。
小さいご兄弟のいる生徒さんのお父様からは、下の子が演奏の妨げにならないようにというご配慮からか、「お兄ちゃんの演奏が始まる直前でホールに入り、終わったら直ぐホールを出ますので…」というお申し出があり、もちろん快くお返事をしました。いつもレッスンに一緒に来ていますし、時には拍手をすることもあるので、出演するお兄ちゃんにとっても心強いのではないかと思いました。
全員が揃ったところで、予定通り開演しました。最初に登場した生徒さんは、入会してまだ間もないそうで、先生との連弾で演奏しました。小学生ではありますが初めてという事もあり、舞台の登場やお辞儀などで少々戸惑っていましたが、一緒に連弾をする先生に促され、なんとか無事に進めていました。
小学2年生の生徒さんは、初めてベートーヴェンの曲を弾く事になりました。いつも元気のよい生徒さんですし、まだ低学年という事もあり、どちらかというとウキウキと楽しい軽快な曲を選ぶのかと思っていましたが、蓋を開けてみたら、緩やかなテンポの少し大人っぽい作品を選んだのでビックリしました。当初1楽章のみと思っていましたが、ご本人の希望もあり全楽章弾く事になりました。普段からコツを掴むことに長けている事や、古典派の作品という事もあって、フレーズの作り方などを見ていきながら練習を始めますと、あっという間に弾けるようになりました。当日は、特に緊張することもなかったのか、普段と何ら変わりなく堂々と弾いていて、「凄いなぁ」とすっかり感心してしまいました。
いつもニコニコしている小学3年生の生徒さんは、生徒さんの雰囲気にもピッタリな可愛らしい曲を選びました。少し速めのテンポ感の曲なのですが、後半あたりから音楽の速さに乗り過ぎてしまうのか、段々と早くなってしまうところが少し心配な点でした。しかし、本番まで残り数回というレッスンでは、段々とテンポに安定感が出てきて、「この曲は、もう大丈夫だね。もう1曲弾いてみない?」という事で、急遽1曲追加することになり、左手の伴奏、右手のメロディー、曲のアナリーゼなど、次々と練習をこなしていました。そして、気が付けば暗譜で一気に弾けるようになりました。発表会本番でも、急遽追加した曲も以前から練習していた曲と同じように、落ち着いた安定感のある演奏をしていて、びっくりしました。
小さい弟さんが応援に駆けつけてくれた生徒さんは、大好きなアニメの曲を演奏しました。いろいろと楽譜を探しましたが、どれも前奏がないアレンジになっていて、少々気落ちしていたのですが、私が原曲を聴いて、楽譜のアレンジの難易度に合わせた前奏を楽譜に書き、お渡ししたところ、とても気に入ってくれたようで、ますます張り切って練習をしていました。歌の曲なので、ご自宅の練習でも歌いながらご機嫌な様子でピアノを弾いていたそうです。本番では、さすがに歌いながらとはいきませんが、音楽の良い流れで弾いていました。弟さんも、きっとお兄ちゃんの晴れ姿にくぎ付けだったのではないかと思います。
生徒さんに曲をご紹介する時から、「きっとこの曲を選ぶだろうなあ」と思っていたら、案の定その曲を選んだという生徒さんは、本当に曲が気に入ったようで、練習を始めた当初からとても楽しそうに笑顔で弾いていました。レッスンでは、左右の手で交互に華やかに弾いていくところで、ついテンポが速くなってしまい、「あああ~」と言いながら弾いていましたが、本番ではいつもの速さできちんと弾けていました。いよいよ最後の大きな場面に入るところで、違う場面を弾きかけてしまい、かなり心配しましたが、あっと小さくつぶやいて、何事もなかったかのようにスッと続きのフレーズを弾き始めたので、ホッとしましたし、むしろ冷静な対応ぶりにすっかり感心しました。少し間違えやすいところなのですが、レッスンでは1回もそのような間違いをしていませんでした。時々、このように「練習では1回も間違えなかったのに~」というミスが起こることがあり、本番の怖さでもあるのですが、今後の糧にしていきたいものです。
全ての演奏が終わり、発表会が無事に終わってから、生徒さんに「今日まで本当によく頑張ったね~」とねぎらいの言葉をかけて回りました。普段とあまり変わらない様子の生徒さんもいれば、ある種の達成感を持っている生徒さん、ちょっと悔しい様子の生徒さんもいて、いろいろな感想があるようでしたが、生徒さん方のご家族の皆様は一様にほっとされているご様子でした。
思ったよりも準備期間が短かった今年の発表会ではありましたが、全力で本番に臨み力を出し切った生徒さん方に、心から拍手を送りたいと思います。
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