(この記事は、第54号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、お子様のピアノ発表会のお話です。
毎年夏に行われる、お子様を対象としたピアノ発表会が先日無事に終わりました。
生徒さんも終わってほっとしていると思いますが、一番ほっとされているのは、親御さんを始めとするご家族の皆様かもしれません。
「なんとか無事に終わってよかったです」と安堵の表情でお話されている、お父様やお母様方が何人もいらっしゃいました。
小さなお子様が、恥ずかしそうに舞台に上がり、お辞儀も忘れてぼーっと立ったままというかわいらしい姿に、会場がふと和やかな雰囲気になった時もありました。
また、中高生が難しい曲を一生懸命弾いている姿に、会場全体が引き込まれ、釘づけになっている時もありました。お子様が舞台の上で、緊張と戦いながら頑張っている姿は、毎年のことながら感動を覚えずにはいられません。
ピアノを指導する立場になって、もう10数年経ちますが、慣れていることがある半面難しさを痛感することも多々あります。その1つを挙げますと、「生徒さん全員が、一番良い状態のときに発表会を迎えること」です。
ピアノに限ったことではないのですが、何かを習得するまでには、「上手にできる、上り調子の時期」と「調子が今一つになる、崩れる時期」がやってきます。
この上り調子の時期に発表会が重なると、当日満足いく演奏ができるものですが、時期を合わせるのがとても難しいのです。
今年も、発表会前の最後のレッスンで、ちょっと崩れ始めた生徒さんがいて、レッスン内で調整をしたのですが、当日ちょっと惜しいミスが出てしまいました。全体的には良かったので、尚更「発表会が数週間早かったら・・・」と思ってしまいました。
逆のパターンもあります。数週間前のレッスンでは、「弾けてはいるけれど、もう一段内容の深い演奏が出来れば・・・」という生徒さんがいましたが、最後のレッスンでは上り調子になってきて「当日、この演奏をもう一回聴きたい」という状態でした。そして、発表会本番では、最後のレッスンと同じく、またそれ以上に深みのある演奏が披露出来たのです。
発表会本番では、普段の演奏にプラスして、臨機応変さも大切です。何かアクシデントが発生した時に、どう対処するかで全体の演奏に影響が出るからです。これは、本番を想定した練習と、ある程度の場馴れで習得できるようになります。
私自身も振り返ってみますと、小さい頃は、ガチガチに緊張していました。
よく「頭が真っ白」になるという例えをしますが、あれは本当に頭が真っ白になるんですよね。本当に驚いたのですが、その時はなんと、気が付いたら曲の終りのほうに進んでいたので、ちゃんと弾いていたようです。記憶がないので、演奏としてはあまり良い出来ではないと思いますが、一応なんとか乗り切りました。
また、ピアノの試験中に停電になったこともあります。弾きながら「あれっ、なんだか暗くなった!」と思ったら停電だったのです。「真っ白」ではなく「真っ黒」ですね。そんなアクシデントがあっても、弾き続けました。もし、停電だからと言って止まったら、おそらく不合格になっていたと思います。本番は、本当に何が起こるか分からないものです。
今回の発表会でも、間違えてしまった生徒さんがいましたが、それでもどんどん先を弾けた生徒さんと、止まってしまって前から弾きなおした生徒さんがいました。当然止まらない方がよいので、全員がこの対処方を身に付けてくれたらと思いながら聴いていました。
最後に、発表会などの本番で絶対にしてはいけないことを一つだけお話いたします。
これは、昨年の「ピアノ教室の出来事」でも書きましたが、ネガティブなことを言わないことです。「(暗譜を)忘れそう」「間違えそう」などと声に出さない事です。
本当にそうなってしまった生徒さんが何人もいます。私自身も、ずいぶん昔に一回そうなってしまったことがありました。
これを覚えておくだけで、本番上手に力が発揮できると思います。
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