(この記事は、2023年4月17日に配信しました第370号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、春真っ盛りのピアノ教室の様子です。

4月も半ばとなり、春真っ盛りとなりました。弘前出身の生徒さんは、「そうそう、地元の弘前の城址公園の桜が、今満開なんですよ」と教えてくださいました。「弘前は、確かゴールデンウィークに桜が満開で、たくさんの方が見に行って賑わうイメージでしたけれどね」と話しますと、「そうそう、でも、今年はもう満開でね。地元の友達が動画を送ってくれて」と、動画を見せてくださいました。

見事に満開の桜並木がひたすら映っている映像でしたが、とても美しく、思わず「うわ~、きれいですね。以前、何も咲いていない時に行ったことがありますけど、桜が咲くと、こんなにきれいなんですね」とお話をしました。「えー、ここに行った事あるの。へえー、そうなんだ」と嬉しそうな声を上げていて、いつもながら地元愛に溢れた様子が垣間見えました。

「週末に、弾丸で帰省しちゃおっかな。金曜夜に出発で行けるよね~」と冗談でお話されていましたが、あの様子ですと、この週末に本当に行っているかもしれません。来週のレッスンで、ニコニコしながら「ホントに行ってきちゃった」とおっしゃるのではないかと想像して、思わず笑ってしまいました。

別の大人の生徒さんは、最近ちょっと元気がなく、「家族が心配で、ピアノを弾く気になれない」という旨のご連絡を頂き、どうなさったのかと心配していました。「次回のレッスンも、行かれないかも」との事でしたが、レッスン当日は予定通りに来てくださいました。

そして、レッスン室に入るなり、「先生、ちょっとね」とお話を始めました。ご兄弟が病気になり、看病をしなければならなくなったのだそうです。「まさか、自分が兄弟の看病をするとは思ってもみなかったので…。両親の看病ならあると思いますけどねえ」とショックを隠し切れない様子でお話をされていました。

「私、こう見えて、結構落ち込むタイプなので、とてもピアノを弾く気になれなくて。でも、ここに伺うと音楽療法みたいに、癒されてリフレッシュできますし、ボケ防止にもなるし、私の前の時間にレッスンされている88歳の生徒さんを見ると、私も頑張らなくっちゃって励まされますし」とおっしゃっていました。そして、「主人は、ピアノは止めない方がいいと。でも疲れているんだから、とにかく今は休めと言うんです」と続けてお話されました。「ピアノは、ずっと待っててくれますし。みなさん、いろいろと大変な時には休んで、それからレッスンに復帰されていますから、レッスンの事はご心配されなくて大丈夫です。まずは、ゆっくり休んでください」とお返事をしました。

生徒さんは、ホッと安堵された表情で、「まずは、1ヵ月休んで、それからまたご連絡します」とおっしゃって帰っていきました。これまでにも、生徒さんご自身やご家族が大きな病気にかかってしまったり、亡くなられた方も何人かいらっしゃいました。レッスン室に入るなり、ぽろぽろと涙を流す方もいらっしゃいました。時を経て、またピアノのレッスンに復帰され、辛い状況を乗り越えていく姿を見ますと、ピアノや音楽の力を感じずにはいられません。この生徒さんも、なんとか今の状況を乗り越えて、また笑顔でレッスンに復帰出来ることを祈っています。

お子様の生徒さん方は、新学年を迎えて、少したくましくなったように見受けられます。高校生の生徒さんは、オーストラリアへ語学研修に行き、帰国後初のレッスンでした。語学研修に行く事を聞いた時に、「楽しみでしょ~?」と聞きますと、ニコニコしつつも「いや、不安でしかないです」という予想外の言葉に少し驚きました。「えっ、そうなの?あなたのご家族は皆さん語学がよくできるから、心配ないでしょ」と聞きますと「あらかじめ、お題をもらっていると、準備ができるので言葉は大丈夫なんですが、急に振られると準備ができないから…」とかなり心配そうな様子でした。それでも、期待に胸を膨らませている感じが見て取れましたので、おそらく大丈夫だろうと思っていました。

「どうだった海外は?」と聞きますと、即答で「すっごく楽しかったです!思った以上に言葉ができて通じました!!」と満面の笑みで答えていました。「カンガルーやコアラが、その辺にたくさん普通にいました。コアラって、一日の殆どを寝て過ごすっていうじゃないですか。でも、向こうのコアラは、すっごいアクティブで木から木へ飛び移っていました」と興奮気味に話していて、とても充実した語学研修だったのだろうと思いました。「それで、ベジマイトっていう食べ物があって、ホントにおいしくって」という話が出たので、「うわ~、あれ好きなの?凄いわね~。私は無理なんだけどね。でも、オーストラリアの方は、国民食みたいによく食べるものらしいわよね」と話しますと、「そうなんです。好き過ぎてお土産に買って帰ってきたんですけれど、家族の誰も食べなくて、私一人で食べてます」と、苦笑いしながら話していました。オーストラリアに留学したいという旨のお話まで飛び出しましたので、よほど楽しかったのだろうと思い、私もなんだか嬉しくなりました。

お友達が弾いていた曲を、自分も発表会で弾きたいと話していた生徒さんは、レッスンの時に、「前回のレッスンから、どう?調子は?」と聞きますと、「前のページは、結構弾けるようになって。次のページも、まあまあなんとかなるんですが、最後のページが…。絶対に違うという自信があります」と言うのです。あまりにビックリし過ぎて絶句した後に、私は大笑いしながら「そうなのね。初めて聞いた言葉だわ」と言い「でもね、なにか違う気がするという感覚は大事だからね。良い感覚を持っているね」と続けました。レッスンに同席していた生徒さんのお母様も、「私も練習を聞いていて、変だなあと思っていたのですが、余計な事を言わないようにして、先生に聞きましょうと言っていたんです」とお話しされていました。

「なるほど」と思いながら、生徒さんにとりあえず最初から弾いてもらいましたが、その問題の部分の最初の音を弾いた瞬間に、生徒さん自身が、「あれっ?あれっ?」と言いつつ楽譜を見ながら、「ああ、そうか…」と言い、自力で修正して正しくきれいに弾いていました。弾き終わってから、「そうそう、例の絶対に違うという自信がある部分なんだけどね、今ので大正解。よく全部自分の力だけで直せたわね。一応整理すると、調号を付けて弾く音と、これから弾く音を勘違いして弾いていたから、奇妙な音になっていたんだと思うわ。でも、今弾いてくれた音だと、正しい音だから、きれいな音楽になっているわよね」と説明しました。この生徒さんは、まだ半年ほどのレッスン期間ですが着実に力をつけていて、今後の成長がますます楽しみになりました。

他のお子様の生徒さんも、発表会に向けて、いつにも増して熱心に取り組まれています。発表会本番に向けて、私も頑張りたいと思います。

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