(この記事は、2023年6月26日に配信しました第375号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、梅雨の時期のピアノ教室の様子です。

梅雨に入り、蒸し暑い日々が続きます。お子様の生徒さんは、学校でプールの授業が始まり、くたくたに疲れた様子でレッスンに通われる生徒さんも少なくありません。

「今日、プールがあってね。プールは良いんだけれど、その前に地獄のシャワーに入るの。それが、すごく冷たかった」とお話される小学生の生徒さんがいて、「地獄のシャワー」という言葉に、なんだかすごい呼び方だなあと驚きましたが、この言葉は、他の学校の生徒さんも、ごく普通に使っている言葉だと知って、ますます驚きました。

お子様の生徒さんは、発表会も終わり、もうすっかり元のレッスン風景になりました。発表会で弾いた楽譜には、大きく赤い花丸を書き、記念写真も配り、発表会関連の作業は全て終了したことになります。

発表会当日の演奏を録画したDVDも記念に配りましたが、早速、その日の夕食後にDVD鑑賞会を開いたご家族もいたようです。また、「祖父母の家に行くときに、発表会の様子を見せることができるので、とても嬉しいです。ありがとうございます!」と目を輝かせて喜んでいる生徒さんもいらっしゃいました。その生徒さんのお母様も「学校行事も全てDVDになっているので、一緒に記念として残せるので、とても嬉しいです」とおっしゃっていました。良かったなあと思いつつ、今の時代は学校行事も写真ではなく、DVDにして記念として残す時代なのかと思った次第です。

週末に発表会を開催しますと、ご家族はなんとか時間を調整して駆けつけてくださいますが、お祖父様やお祖母様、ご友人などは、これまでのコロナの影響もあり、遠慮される方がいたり、遠方で会場にいらっしゃることが難しい方も少なくないようです。夏休みに帰省されたりする時に、発表会の時のお話しと共に、DVDを見て楽しいひと時を過ごしていただけたらと思っています。

大人の生徒さん方は、秋に発表会があり、曲目を決めて練習に励まれています。

ピアノ教室に入会されて以来、毎年欠かさず参加されている生徒さんは、有名で聴いたことがあり、とてもきれいなのでという事で、優美なフランスの作品を選ばれました。スキーとコーラスもご趣味としてお持ちで、コーラスは、あれよあれよという間に3つの団体に所属しているそうです。ピアノの発表会の翌日には、地方に移動して前泊し、本番で歌うという忙しいスケジュールになるそうです。「なかなか大変ですね」とお話しますと、「いや~、今、(スキーは)オフシーズンで暇ですから」とニコニコしながらおっしゃっていて、バイタリティ溢れる様子が凄いなあと感心しました。

レッスンでは、譜読みの真っ最中ですが、左手の伴奏の和音が次々と変化するところに、少し手こずっているようです。低音のベースラインの大きな流れを把握することをアドバイスしたところ、以前に比べて音の迷いが減ってきて、段々と流れるように弾けてきているように思います。この生徒さんはテクニックの教材も使用されているのですが、先日のレッスンでは、「どうも曲が掴めない。よくわからない」という趣旨のお話をされていました。左右の手を交互に使用して、短いフレーズを対話しているかのように作られている練習曲なのですが、弾いている様子を見ますと、おおまかな曲の構成自体は理解されているようですが、右手→左手→右手となった場合に、2回目の右手の音に迷いが出てしまい、音楽が止まってしまう状況でした。音自体は読める訳ですが、その読んだ音を覚えることが難しいため、結果として止まってしまうという事のようです。

咄嗟に、次に弾く音が出てこないという経験は、実はかなりの方が味わったことがあるのではないかと思います。お子様でも、調子よく弾いていたのに、急に「あれっ、次、何の音だっけ?」と止まってしまう事は、少なくありません。年代を問わず、ピアノを弾くときの悩みの一つかもしれません。この生徒さんの場合は、右手→左手→右手という場合に、1回目の右手の最後に弾く音と、2回目の右手の最初に弾く音との関連を見つけるという事をしてみました。この2つの音の関連性が発見できると、迷っている音がなぜその音なのかと言う理屈や理由が見つかるので、覚えやすいという訳です。これは、何かを覚えるときに、単に丸暗記ではなく、理由付けやエピソードを作ることで、長期記憶に結び付いて覚えやすく忘れにくいという事と同じかもしれません。もちろん、モーツァルトのように、急に誰もが予測できないような音楽の展開になる事もあるので(これはモーツァルトの音楽の魅力の一つなので、なおさら厄介かもしれませんが)万能とは言えませんが、かなり有効な手段かと思います。

この生徒さんが弾いているテクニックの曲では、かなりこのやり方が有効でしたので、「これは、いわゆる楽譜を読むという事の一つでもあり、ピアノが弾けない時間でもできるので、いいですよ。また、初めて弾く曲や、聴いたことがない曲を弾くときに、最初にこの楽譜を読むという事をすると、最初から結構弾けるようになったり、これまでよりも短い時間で弾けるようになったりもします」とお話しました。そうしますと、生徒さんは楽譜を読めないという事が密かな悩みだったようで、このアドバイスが、目から鱗が落ちるような衝撃だったようです。レッスン後には、とてもすっきりとした清々しい様子で、私の方が驚いてしまったくらいです。

春からこの時期までに、新しい生徒さんも入会されています。5月に入会された保育園生の生徒さんは、段々とレッスンにも慣れてきて、「いつ、私のレッスンの番になるのか」とそわそわしながら、レッスン室の外で待っています。前の時間の生徒さんのレッスンが終わり、ドアを開けると、勢いよくレッスン室に駆け込んでくるので、前の時間の生徒さんと私は、いつも「あら~、張り切っているわ」と微笑み、この保育園生の生徒さんを連れてきているおばあ様は、「すみません」と言わんばかりの表情をされるのが毎週恒例になっています。

幼児版の楽譜とワークが終わり、次の巻の楽譜をお渡しする時には、レッスン室に入る前から、私の顔を見るなり、「今日、新しいのあるんでしょ~。どこにあるの?」と言い、いつものようにレッスン室になだれ込んだかと思えば、すぐさまあちこち探し回っていました。「ほら、ここにあるのよ。新しい楽譜とワークの2冊あるからね。まずは、いつもの楽譜の最後の曲を仕上げてからのお楽しみにしましょうね」と話して、レッスンを開始しました。幼児版の楽譜の時には、4分休符を「ウン!」と元気よく言って笑っていましたが、今回の楽譜では、2分音符という言葉がどうもおかしいらしく、笑いが止まらないようです。何か、言葉の響きが楽しくてたまらないようですが、このような事は初めてなので、私も興味深く様子を見ています。弾けることも楽しいようで、かなり順調に進んでいます。楽しいと感じる気持ちを大切にしながら、これからもレッスンを行っていきたいと思っています。

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