(この記事は、2024年5月13日に配信しました第397号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回は、お子様の生徒さんの発表会に向けた準備の様子です。

ゴールデンウィークが終わり、いつもの日常が戻ってきました。お子様の生徒さん方にとっては、毎年恒例の発表会まで残り1ヵ月となります。

お子様の発表会は、例年6月又は7月に開催していますが、年明けくらいから、発表会にどんな曲を弾いてみたいか、ご希望を聞くところから準備が始まります。生徒さんからの「なんとなく、こんな感じの曲」というリクエストと、これまで発表会で弾いてきた曲、普段のレッスンで弾いてきた曲なども踏まえて、2月くらいに4、5曲ほど候補をご紹介し、音源を聴いていただいて曲を決めます。そして、3月から練習を開始して、6、7月に発表会の本番を迎えるという流れです。

そのため、2月になると生徒さん方やご家族は、「いよいよ、発表会に向けて動き始めた」という感じがするのではないでしょうか。3月には、レッスンでも発表会の曲を扱っていきますが、練習途中の曲もありますので、普段のレッスンの曲に加えて、発表会の曲の譜読みを同時に行う方が大半になります。練習途中の曲が仕上がった後は、生徒さんの様子や、発表会の曲の譜読みの進捗状況を見ながら、普段の教材をそのまま使って次の曲の練習を始めるのか、教材は一旦お休みにして、発表会の曲の譜読みを最優先に進めるのかを判断します。

4月に入り、学校の新学期が始まりますと、学校のスケジュールも変わってきますしクラスも変わりますから、生徒さん方は少しバタバタと慌ただしく過ごしているように見えたり、多少お疲れを感じている様子が見えたりします。あまり無理がないように、でも譜読みが着実に進むように、宿題の量を調整したり、1回のレッスンで難しい所やポイントとなる箇所が弾けるように、一緒に練習をしています。レッスン中に自力で弾けるようになれば、あとは慣れるだけなので、レッスンでは今弾けないところを、いかに弾けるようにさせるかが重要になります。

生徒さんのお母様からも、「難しいところは、なかなか譜読みが進まなくて…」とお話を頂くこともありますが、それは当然のことだと思っています。そのため、同じ個所をしつこいくらいに何回も反復練習をするわけですから、なかなか生徒さんも大変かと思いますし、ちょっと酷な事をさせているような気もするのですが、レッスン後にお迎えにいらしたお母様に「弾けるようになった~」「(リズムが)分かった~」とニコニコと嬉しそうに報告をして、お母様も笑顔で「よかったね」と返事をされている姿を見ますと、良かったなあと少しホッとしています。

5月は、1年の中で一番レッスンのペースが速く、内容も濃いかもしれません。曲の構成や内容も踏まえて、どのように弾いたら良いのかを考えて表情を付けて曲を弾いていく事になります。強弱記号ごとに、色分けをしてチェックを入れて練習をしたりと、生徒さん自身で工夫して練習をしている様子も見れるので、なるほどと感心することもあります。

発表会に初めて参加する生徒さんは、選曲の段階から少し変えています。発表会本番で、「発表会で上手にできた!」と思っていただくことが最優先になりますので、基本的に2曲弾いてもらうようにしています。1曲は、これまで弾いた曲の中で一番好きな曲です。これまで弾いた曲なので、急に「今弾いてみて」と話しても、結構弾けることが多いように思います。また、好きな曲ともなりますと、楽しそうに、しかも自信満々で弾きますので、初めての発表会で緊張しても、成功できるかと思います。もう1曲は、新しい曲になりますが、あくまでも普段のレッスンで扱っている曲と同レベルの難易度で、曲の長さもほぼ同じもので、何曲か生徒さんの前で私が弾いて、生徒さんに曲を選んでもらっています。そのため、新しい曲と言っても、あまり構えずに練習できますし、そこまで時間もかからずに弾けるようになります。

曲の順番は、生徒さん自身に決めてもらっていますが、これがまた個性が出て面白いものです。好きな食べ物を最初に食べる派なのか、最後にとっておく派なのかに分かれるのに似ています。「難しい曲(新しい曲)は、最初に弾いちゃいたい」と言っていた生徒さんもいれば、「まずは、一番好きな曲から弾く」と言っている生徒さんもいました。本来は、曲の雰囲気や調性などを考慮して曲の順番を決めるのですが、小さい生徒さんでも、自分で弾く曲を選曲し、演奏順を決めたりして、自ら発表会に参加しているという感覚を持っていただく事も大事にしています。

そして、5月からは、演奏だけでなく、ステージマナーについてもレッスンで扱っています。舞台に上がって、お辞儀をして、2曲弾いて、お辞儀をして舞台袖に戻ってくるという一連の流れを、自分の力だけで全てできるようにしていきます。特別難しいわけではないのですが、本番では結構いろいろとアクシデントが起こるので、何回も練習をしています。

兄弟や姉妹の発表会本番を見ている場合は、舞台で弾くイメージが多少なりとも持っているのが強みになるのですが、意外な盲点もあります。客席から舞台を見ているので、自分が舞台に上がった時の、ステージ上のピアノの位置関係が掴めていないことがあるのです。「今、発表会本番の舞台に上がっていると思ってね、こんな風にピアノが置いてあるでしょ。では、クイズです。お客さんはどこにいるでしょうか?どういう向きで椅子に座っているのかな?」と質問をしますと、完全に逆向きだったという事が何回もあります。

普段のレッスン室に置いてあるいくつかのパイプ椅子の向きや、レッスン室の壁に気を取られたり、惑わされているかもしれませんが、実際にパイプ椅子を動かして、「発表会では、お客さんは、こんな向きで椅子に座っているのよ」と説明をしますと、「へえ~」と驚いているので、私もそのリアクションを見て驚いたりします。そして、お辞儀の仕方や、椅子に座る時の注意点、1曲目の弾き始めるタイミングについてや、弾き終わったときの手の位置、演奏が全て終わって、椅子から降りるときの注意点などなど。お辞儀が浅くても深くても、あまりきれいに見えないですし、小さい生徒さんの場合、椅子に座る時にうっかり鍵盤を触って、じゃ~~んとピアノが鳴ってしまったり、椅子に座るところまで順調だったのに、生徒さんの後ろに立っている私を振り返って、「弾いてもいい?」とうっかりしゃべってしまったり…。つい先日も、2曲とも余裕で弾いていたのですが、弾き終わった後に勢いよく手を膝に戻したために、バンッ!と膝を打った音が鳴ってしまった生徒さんがいました。

生徒さんのお母様も苦笑なさっていました。生徒さんには「バンッ!と膝を打った音が鳴っちゃうとお客さんもビックリするし、本番は録音もしているから、バンッ!という音も入っちゃうから、静かに手をお膝に置いてね」とお話をしたところ、生徒さんもゲラゲラ笑いながら頷いていました。

何しろ、初めてピアノの発表会に参加するので、小さい生徒さんにとっては分からない事だらけだと思いますから、事細かに説明をして練習をしています。演奏もステージマナーも、両方共バッチリできるようになって始めて、「発表会で上手にできた!」という事になると思いますので、残り少ないレッスンで確実に身に付くように、一緒に練習をしていきたいと思います。

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