(この記事は、2024年9月2日に配信しました第404号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、晩夏のピアノ教室の様子です。
大型の台風が発生して、思った以上に進路予想が目まぐるしく変わり、また速度もかなり遅く、日々どこに向かうのか今後どうなるのか心配しながら天気予報を見ていた方も多かったのではないでしょうか。レッスンにいらしている生徒さん方とも、そのようなお話をしていたところですが、温帯低気圧に変わり、ちょっとほっとしているところです。
台風が接近している時にレッスンが予定されている場合、生徒さん方の安全を考えて終日または半日の休講にします。台風だけではなく、大きな地震や大雪などの天災全般に共通するものです。生徒さんの中には、「徒歩なので行けます!」と言われる方もおり、そのくらいピアノのレッスンに前向きという事で大変嬉しく思いますが、レッスン中に天気が大荒れになってしまい帰宅できないとか、帰宅途中で何かあっては大変です。そのため「急な休講の場合は、後日補講をしますので、どうぞご心配なさらずに。日時を改めてレッスンしましょう」とお話をしています。
今回の台風でも、レッスンに重なりそうな方が多く、予定通りにレッスンが行えるのか心配していましたが、どうにか休講せずにレッスンを行うことができました。しかし、時間帯によっては、土砂降りの中来られた生徒さんもいて、「本当にすごい雨で…」と話し始め、「ここまで来るのに本当に大変でした」と話が続くのかと思っていたら、「長靴を履いてきてしまったから、私、ちゃんとピアノのペダルが踏めるのかしら?」と、意外な話の展開になり驚きました。
最近、趣味のスポーツをしている最中に足を痛めてしまったそうで、救急車で病院に運ばれてしまうという出来事があり、ピアノのレッスンをお休みされていました。ピアノ教室も夏休みがあり、お休みが続いていましたので、「やっと今日はピアノのレッスンに行ける!と楽しみにしていたんです」ともお話をされました。「長靴ですと、確かに足が動かしにくいですが、このお天気ですと仕方がないですしね。無理なくペダルを使ってみてください」とお伝えしてレッスンをしました。
そして、レッスンが終わるところで、「前に、先生の演奏を録音させていただいたでしょ?あれを何回も聴いているんですけれど、どうも私の弾いている曲と同じように聴こえなくて、全然違う曲に聴こえるんです。こうやって、よ~く何回も聴いているんですけれど…」とお話をされました。「なるほど、同じ楽譜を見て同じピアノで弾いているので、同じ曲なんですがね」とニコっとしながらお返事をしますと、「そうですよね~」と笑っていました。
「まあ、いろいろと理由があるとは思いますが、例えばこの箇所を普通に弾きますと・・・・。(演奏後に)こうですよね。〇〇さんもそのように弾いていらっしゃいますが、それを、私が録音した時には、メロディーはこの箇所なので、そこを少し強く目立つように、(メロディーだけを弾いて)このように弾いていて、他の箇所は伴奏なので、(演奏しながら)このように少し弱く弾いていたんです。それを合体して弾くと…(演奏後に)こうなるわけです」と演奏を交えながら解説をしました。
生徒さんは食い入るように熱心に聴いていて、「あ~」とか「そうそう」とか、いろいろな反応をされていました。「楽譜には、この音はメロディーだからちょっと強めに弾くとか、これはそこまで重要な音ではないので、弱めにとか一切指示が書かれていないので、演奏する方がいろいろと見抜かないといけないんですよね。いろいろな音をよく整理して弾くと、演奏がすっきりとまとまりますし、またこのピアノという楽器は、一度にいろいろな強さで音が出せます。ピアノの誕生以前の楽器では、できなかったので画期的な楽器と言えるかもしれませんね」とも説明をしました。
生徒さんは、「なるほど~」と何回もうなずきながらおっしゃっていました。「なので、またご自宅などで録音を聴くときに、そのような個々の音の強さを変えながら弾いているという視点で聴いてみると、またちょっと聴こえ方が違ってくるかもしれませんね」とお話をしますと、「そうですね。早速自宅でまた聴いてみます」とおっしゃっていました。
ピアニストなどのプロの演奏は、すごいとか上手という事はどなたもお分かりになるのですが、では何がすごいのか、どのような工夫をしているのか、どの部分が自分の演奏と異なるのかというところは、わからないこともあります。レッスンで、具体的に演奏をしながら細かく説明をすることで、生徒さん方に理解していただけたり、納得していただけたり、ご自分の演奏にも取り入れてみようと思っていただけたり、また鑑賞するときの楽しみ方の広がりを感じていただけたら嬉しい限りですし、生徒さん方も、ピアノのレッスンに来てよかったと思って下さるのかなあとも思っています。
この生徒さんが、演奏や音楽の鑑賞の仕方が、どのように変化するのか楽しみです。
お子様の生徒さん方は、夏休みをそれぞれ楽しまれているようで、ちょっとうらやましいなあと思ってしまいます。使用している楽譜の最後の曲に取り掛かっている生徒さんは、「今日ね、ピアノが終わったら楽しみなことがあるの」と話していました。「え~、何、なに?」と聞きますと、「今日は、夜更かしして韓流ドラマを見るの!」とニコニコしながら話していて、夜更かしが楽しみというのも、かわいらしいなあと思って聞いていました。
また、別の生徒さんは、もうすぐ学校が始まるねと話しますと、「え~、やだ~。ずっと夏休みがいい」と、これもまたよくある小学生の感想で、こちらもまた気持ちがわかるなあと思いながら聞いていました。
既に、一足早く2学期が始まっている生徒さんは、「今日は始業式の日なのに、授業もあるし給食もあって疲れた」と既にお疲れモードだったり、その他にも、「夏休みは、いろいろな習い事の大会とか合宿とかがあって、すっごい忙しい」と話している生徒さんもいて、「学校が始まった方が、かえって楽かもしれないわね」と話しますと、「ああ、そうかもっ!」と妙に納得していて、むしろ私の方が驚くという事もありました。
大人の生徒さんの中には、1000人以上の収容客席を持つ大ホールで、スタインウェイとベーゼンドルファーのピアノの弾き比べができるという企画に参加された方がいます。難曲や大曲も「譜読みは難しいけれど、楽しいです」とおしゃり、弾きこなす生徒さんなのですが、発表会の参加をお勧めしますと、「小さい頃に発表会とかは出たので、もう人前で弾くのはいいです」と、ご丁寧な口調で毎回お断りされてしまうのです。レッスン室のピアノもグランドピアノとしては小さめですし、レッスン室も狭いですから音の響きもあまりない環境でしか弾いていないので、日頃からもったいないなあと思っていました。
偶然にも、先程の弾き比べの企画を知り、早速この生徒さんにお知らせしたところ、参加されることになりました。非公開のため、後日お話を聞きますと、「今弾いているラフマニノフは、スタインウェイで弾いた方がとても合うなあという感じで、ベートーヴェンの月光は、ベーゼンドルファーで弾いた方が落ち着いた感じが合っていて…、そうそう坂本龍一の曲は、スタインウェイの方がよかったです!」と、饒舌に話をされていました。
「同じ曲を、2台のピアノで弾き比べをして、こんなにもピアノによって違うんだと思って、とっても面白かったです!」と、相当楽しかった様子が伝わってきて、私もとても嬉しくなりました。「そうなんですよね。ご自分で、同じ曲を、一度に異なるメーカーのピアノで、今回のように楽器のサイズも近いもので弾き比べると、一番違いがわかるんですよね。以前にも、ピアノの弾き比べ体験はされていますが、今回は大ホールでの弾き比べですから、音もよく響きますし、なかなか贅沢な企画でよかったですね」とお返事をしました。
生徒さん方の充実ぶりを見ると、私も大いに刺激を受け、頑張ろうというエネルギーもいただいている気がします。今年も残り4カ月ですので、大いに張り切ってレッスンを進めていこうと思います。
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