(この記事は、2025年2月10日に配信しました第415号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回は、早春のピアノ教室の様子です。
2月に入り、まだまだ寒い日々ではありますが、少しずつ春に近づいているような気配を感じる今日この頃です。ピアノ教室の生徒さんは、それぞれのペースでピアノを楽しく弾けれているように思います。
先日、小学生の生徒さんが、初めてピアノのグレード(ヤマハのピアノコンサートグレード)試験に挑戦しました。これまで、毎年発表会には参加していましたが、ここ2年程は参加できずにいました。人前でピアノを弾くことで、本番に向けてモチベーションを高めたり、いろいろと学べることもありますので、だいぶ前からグレードの受験をお勧めしていました。グレード試験では、課題曲1曲と自由曲を1曲、合計2曲を続けて演奏して、それぞれの曲について評価が付き、合計で合否が付く仕組みになっています。
少し前に仕上がった生徒さんのお気に入りの曲が、偶然にも課題曲に入っているので、そのまま使えますし、もちろん自由曲として使うこともできるので、グレード用には1曲のみ練習すれば受験できるところにも魅力を感じたようでした。
その後、生徒さんのお母様から、「以前から、子供が個人的な楽しみとして練習している曲があるのですが、それを自由曲として使えないでしょうか」というご相談がありました。楽譜を確認しますと、「だいぶ前に買ったCDの特典として付いていた楽譜を使っています」との事でした。実際に楽譜を見せてもらいましたが、思ったよりも難易度が高めで、しかも曲が長いので、一部を省略したりアレンジする必要がありそうでした。
直ぐにグレードの要項を見て確認したところ、楽譜は出版されているものを使用する規定になっており、繰り返しは省略可能ですが、アレンジは基本的に不可ということでした。幸い、まだ全てを譜読みしていませんでしたので、出版されている楽譜の中で、生徒さんが練習している楽譜に近いもので難易度が適切なもの、そしてあまり長くないものを選んで、その楽譜を使って練習してもらいました。
これまで使っていた楽譜とかなり近い楽譜とはいえ、完全に同じではなく、ついこれまでの楽譜通りに弾いてしまうということもありましたが、段々と慣れてくれました。そして、強弱を付けたりペダルを入れてみたり、段々と細かく表情を付けていき、仕上げに向けて暗譜の練習を始めますと、似たような箇所で他と混ざってしまったり、弾き飛ばしてしまうことも出てきました。
譜読みの段階で、似たような個所に番号をつけて区別していましたし、例えば(2)だけ弾くということは出来ていましたが、曲の最初から弾くと、危うさがあるのです。そのため、それぞれの番号の音楽の特徴をお話して、間違えたら弾き直すだけではなく、迷った時点で、もう一度弾き直すという様に、とにかく成功するまで何回も一緒に反復練習をしました。最初の頃は、かなり苦戦していましたが、どうにか成功することができ、それをきっかけに少しずつ成功回数が増えて、最後は安定して弾けるようになりました。
少し前に仕上げた曲は、課題曲として演奏しますので、引き続き練習をしてもらいましたが、そもそも速いテンポの曲なので、指がもつれやすいものです。曲を仕上げた時には、細かい音符のところをゆっくりのテンポやスタッカートで弾く練習をしたりと、かなり気を付けて練習を積んでいました。しかし、一度仕上げて慣れ過ぎてしまったこともあり、段々と速いテンポでの演奏というよりも、勢いばかりで雑な印象の演奏になってしまったので、今一度一緒に楽譜を見て、強弱の確認をしたり、ゆっくり丁寧に弾く練習や片手の練習などをレッスンで行い、普段の練習でも継続するようにお話をしました。
課題曲、自由曲とも仕上がるメドが立ったところで、2曲通して弾く練習をして、実際の演奏時間を計ってみました。すると、グレード試験の規定の演奏時間ギリギリ間に合うくらいでしたので、「練習の時には、ゆっくり丁寧に弾く練習を続けてほしいけれど、本番ではこれ以上は遅く弾かないように」とお話をしました。これまでは、演奏時間を気にすることなく発表会などの本番で弾いてきましたが、制限時間内に弾かなければならないということは、今回が初めてという事もあり、生徒さんにとっては、かなりプレッシャーになってしまったようで、本番前最後のレッスンで弾いてもらいますと、やたらと速いテンポで弾き飛ばし、テンポが速いために弾けていたところも崩れてきて、大暴走した演奏になってしまっていました。
生徒さんのお母様も、さすがにこれではまずいと思ったようで、「もっと丁寧に弾こうね」と生徒さんに言い聞かせたそうですが、それでも「制限時間内に弾かなくちゃいけないから…」と生徒さんが言い返し、やたらと速いテンポで弾いて、思ったように弾けずにストレスが溜まるという悪循環に陥ってしまいました。
生徒さんには、「以前は、制限時間ギリギリとお話をしたけれど、それは昔の話であって、今はむしろ速過ぎるから焦らなくて大丈夫だよ」とお話をして、「もし、本番でちゃんと弾けるか心配だったら、お母様と相談して、本番直前にもう1回レッスンをしてもいいよ」ということもお伝えしました。そして、お母様には、本番直前で日時が合うようでしたら追加でレッスンも可能であることや、録音や録画をしてメールに添付していただけたら、いろいろアドバイスもできること、細かい音などは、実はグランドピアノの方が弾きやすく、できたら本番と同じようにグランドピアノで練習するとコントロールが付きやすく、普段よりも上手に弾けるので自信を取り戻せる可能性があり、本番前のリハーサルにもなる事をアドバイスしました。
翌日には、早速グランドピアノで練習する手配をされたようですし、その時の音源をメールに添付していただいたので、早速聴いて「とてもきれいに弾けるようになっています。この調子で」「ここは、もっと弱く」「直ぐ次のフレーズが弾けるように、部分練習しようね」など、いろいろと楽譜に書き込みをして返信をしました。お母様は、直ぐにプリントアウトして生徒さんに見せて、練習に活かしていただき、いよいよグレード試験本番の日になりました。
本番には足を運べなかったのですが、お母様から「今までで、一番上手に弾けました」というご連絡があり、終わってみれば最高評価が連発での合格になりました。審査をしたアドバイザーの先生方からの講評にも、「軽やかで勢いのある左手の和音」「よく指が動いていて、スピード感がありました」「ガラッと雰囲気が変わり、自分らしさも伝わってきました」などが書かれていて、生徒さんもご家族もとても喜んでいました。
グレード受験後のレッスンでは、本番の演奏の録画を見せていただきましたが、細かい音も丁寧に、でも良いテンポで弾けていて、短期間でよく頑張って立て直したなあと、とても感心しました。生徒さん自身も、「一番うまく弾けた」と話していて大満足だったようですし、なにより自信を取り戻せたことが私も大変嬉しく思いました。
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