(この記事は、第77号のメールマガジンに掲載されたものです)
今回の「たのしい音楽小話」は、「音楽とグルメの切っても切れない関係」の第2弾です。第1弾を読んでいない方は、以下のブログで読むことができます。
今回登場する作曲家は、モーツァルトです。
クラシック音楽史には、天才と呼ばれる作曲家が何人もいて、私達から見ますと全員が天才と思うのですが、その天才の中の天才と言われているのがモーツァルトです。
音楽を専門に勉強する人にとっては、必須の作曲家です。音楽大学の入試では出てきませんが、それは、既に勉強している事を前提にしているからではないかとさえ思えます。
私が音大に通っていた頃、珍しく学校内の試験曲にモーツァルトの作品が出された事がありました。
単に弾くだけであれば、テクニック的には大して難しくないのですが、シンプルな音楽だからこそ、解釈や素晴らしさを表現する事がとても難しかったことを今でも鮮明に覚えています。
また、卒業試験でモーツァルトの作品を弾こうかと先生に相談した友人は、すぐに却下されたそうです。それだけ、モーツァルトの音楽を素敵に演奏することが難しいという事なのです。
そんなモーツァルトは、ご存じの方も多いと思いますが、短い生涯の約3分の1を演奏旅行に費やしました。7歳の時から、海外で活動をしていたのです。
当時は飛行機や特急電車もありませんから、何カ月もかけて馬車で旅をしていたのです。
現在のドイツやイタリア、イギリスなどに出かけていたのですが、演奏旅行へ行く時には、主にお父さんが同行していました。今で言う、「ステージ・パパ」ですね。
単にモーツァルトを貴族の前で演奏させて、次に繋がる仕事を貰うという役目だけではなく、モーツァルトの健康面にもとても気を配っていました。
そのため、アイドルのあらゆる面をサポートする「マネージャー」と言った方がピッタリかもしれません。
たくさん演奏旅行をしていたので出費も多く、倹約に努めていたので、食生活はわりと質素だったようです。それでも、国王や貴族の館で演奏を披露していましたので、晩餐会にも呼ばれ、当時のとても豪華な食事も堪能していました。
庶民の味と、国王の味を知っていたという事ですね。
モーツァルトの父レオポルトは、薬膳料理の本をとても参考にしていて、色々な病気の症状が出た時に食事療法を取り入れていたそうです。
家庭では、スープをよく食べていたそうで、薬草を入れたものや牛肉を使ったものなどを食べていました。形こそ変化していると思いますが、牛肉のスープは現在でもオーストリアではよく食べられているそうです。
モーツァルトの好物は、カフェで食べるいちごのシャーベットやチョコレート、ローストビーフ、チキン、レバーの肉団子、ワインやシャンパン、ビールなどで、晩年借金に苦しんでいた時には、友人にビールをねだる手紙を書いていた程です。
また、当時高価だったココアやコーヒー、それまで飲んだことのなかった炭酸水や、パンチというインドの温かい飲み物、スイカ、キジ料理、牡蠣なども食していました。
海外でそれまで見たことも無かった料理を色々と食べていたのですから、なかなかのグルメかもしれません。
しかし、一人で食事をすることがとても苦手だったようで、必ず誰かを誘ったりしていたそうです。ちょっと意外な一面という気もします。
ロッシーニのように、モーツァルトが料理をテーマにした音楽を作曲していたら、どんな楽しい音楽になっていたのだろうと、想像すると楽しくなりますね。
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