(この記事は、第88号のメールマガジンに掲載されたものです)

今回の「たのしい音楽小話」は、兄弟全員が芸術家で、しかも国内外の第一線で活躍されている「千住3兄弟」のお話です。

ご夫婦や親子で芸術家/音楽家というのは、それほど珍しくありませんが、3人の兄弟が揃ってとなりますと、今回お話をする千住家以外に、ファッション界で「コシノ3姉妹」(コシノヒロコさん、ジュンコさん、ミチコさん)と呼ばれる小篠家ぐらいではないでしょうか。

長男の千住博さんは、日本を代表する日本画家です。東京芸術大学で学び、大学院を卒業する時の作品を、大学が買い上げたそうです。いかに素晴らしい絵なのかわかりますね。その後、日本だけではなくオーストラリアやニューヨーク、台北、韓国、香港、中国など、世界各国で毎年のように個展を開催しています。

イタリアで開催されたベネツィアビエンナーレで、東洋人として初めて名誉賞を受賞し、紺綬褒章なども受賞されています。また、グランドハイアット東京での壁画制作や、羽田空港の第2旅客ターミナル、新国際線ターミナルのアートプロデュース、APEC(アジア太平洋経済協力会議) JAPAN 2010 の会場構成など、幅広く活躍をされています。

今年の10月には軽井沢に千住美術館も開館し、代表作である「ウォーターフォール」の他、50点ほど展示されているようです。

次男の千住明さんは、幅広いジャンルで活躍されている作曲家です。ドラマや映画などの音楽も数多く作曲していますので、聴いたことのある方も多いのではないでしょうか。慶応義塾大学工学部を中退し東京芸術大学へ進んだ珍しい経歴ですが、大学院の修了作品は、長男の博さんと同じく大学が買い上げたそうです。

日本アカデミー賞優秀音楽賞などを何回も受賞され、現在は、作曲活動やプロデュースをしつつ、東京音楽大学客員教授も務めています。

テレビドラマでは、「砂の器」のテーマ曲であるピアノ協奏曲「宿命」や「高校教師」「家なき子」「夫婦」、NHKの大河ドラマ「風林火山」。映画では、「愛を乞うひと」「黄泉がえり」「ちびまる子ちゃん~わたしの好きな歌」「鉄人28号」など、本当に数々のヒット作を生み出しています。

そして、末っ子の真理子さんは、トップクラスの人気ヴァイオリニストです。2歳でヴァイオリンを始め、第1回「若い芽のコンサート」でN響と共演し、12歳でプロデビューしました。

その後、日本音楽コンクールに最年少の15歳で優勝し、第26回パガニーニ国際コンクールにも最年少で入賞、文化庁「芸術作品賞」や村松賞、モービル音楽賞奨励賞など、素晴らしい受賞歴をお持ちです。

国内外でのコンサート活動の他、NHK教育テレビ「趣味悠々」のヴァイオリンの講師や、日本音響学会の研究員としてステージ音響の研究に参加するなど多方面で活躍されています。

また、2002年に幻の名器と呼ばれるストラディヴァリウス「デュランティ」を入手したことでも大変話題になりました。ご存知の方も多いかもしれませんが、数あるヴァイオリンの中でも最高峰の名器であるストラディバリウスは、数も限られ大変貴重なので、かつては家を売って手に入れたヴァイオリニストもいた程です。ヴァイオリンを弾かれている方にとっては、まさに憧れの楽器だと思います。

真理子さんが入手した「デュランティ」は、なんとローマ法王 クレメント14世が所有していたもので、何百年と大切に保管され、演奏されることはなかったそうです。大変高価だったようですが、ご兄弟が金策に走って援助されたそうです。現在でも、真理子さんの演奏にはこの名器が使われています。

3兄弟がそれぞれ大活躍をされていますので、近年ではコラボした企画も多数あり、羽田空港第2ターミナルに長男の博さんの絵がかけられ、次男の明さんが作曲した「四季」を末っ子の真理子さんが演奏するという夢のような共演もありました。

空港を利用するときには、ぜひ立ち寄ってみたいものですね。

「千住3兄弟」の作品を、いくつかご紹介しておきます。



「砂の器」オリジナル・サウンドトラック
千住明


G線上のアリア
千住真理子


千住兄弟3人の初コラボレーション・アルバム
千住真理子 千住明 千住博

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